9 いや私の思ってる異世界と違い過ぎる!

「……どした? さっきから黙り込んでるけど」


「私の思ってた異世界と違う」


 暫くバイクで走ると都市部に出た。

 いやーうん。本当に都市部感が凄いんだ。


 ダンジョン周辺はバイクと駐車場以外の存在は概ね異世界だったよ。

 すっごく異世界異世界してたよ。


 だけど徐々に。段々おかしくなっていって。

 都市部に入りこんだ今じゃもう完全におかしい。


 普通にビルとかありますやん。道もアスファルトですやん。

 文字とかは読めないけど、これなんだろう……以前家族旅行で東京に来た時と同じような感覚がするよ!?


「お前一体どんな異世界想像してたんだよ」


「なんかこう……もっとファンタジーファンタジーした感じの奴! これじゃ私の世界と変わらないよ!?」


「なら良かったじゃねえか。元の世界に戻れるかどうかはまだ分かんねえんだし、それなら少しでも近い方が気もち楽だろ」


「楽だけど!」


「あ、そういや一本事務所に連絡入れといた方がいいな。ちょっとコンビニ寄るぞ」


「あ、うん」


 コンビニまであったよーぅ。

 って連絡って事はまさか。


「……っと面倒だな。運転しながらでも事故んねえよ別に」


 コンビニの駐車場にバイクを止めてルイン君が取りだしたのは……ああくそ、やっぱりスマホだよ!

 しかもチラっと画面見えたけど、なんか画質凄く無かった? 私のより凄く無かった!?


「じゃあちょっと連絡済ませるし待っててくれ。あとついでに飲み物買ってくる。楓はお茶? ジュース?」


「……ジュースで」


「了解。あーもしもし」


 そう言って電話しながらルイン君はコンビニに入っていく。

 そんな様子を見て流石にもうこんな声が出ちゃうよ。


「えぇ……」


 マジでなんなのこの世界。


『楓は不満なのかの、この世界のあり方は』


 木刀から声が聞こえてくる。ミツキさんだ。


「いや、不満って訳じゃないよ。だけどね、異世界っていえばこうって先入観が強くて……あまりにも変わらなくてびっくりしてる」


『変わっておるじゃろう』


「そうかな?」


『少なくとも楓の世界には、あんな化物はいなかったのだろう?』


「うん。でもそれだけだよ……ダンジョンなんてのもなかった。なんだかね、あの空間だけが異世界だったんじゃないかって思う位に、この世界私の世界と変わらない」


『まあ小僧の言う通り、元の世界と同じならば馴染みやすくて良いだろう。儂なんかほら、見る物全てが何これって感じじゃの。本当に別世界という感じじゃ』


 ……ん? という事は。


「……という事はミツキさんも別の世界から来たの?」


『そういう事になるかの。楓の言葉を借りればブラックホールの様な物に飲み込まれてという訳じゃな』


「しかも話聞く感じだと、私の居た世界とも違う世界だよね」


『おそらく。少なくともこんなゴチャゴチャした文化の発展などしとらんかったわ』


「へぇ……」


 なんだろう、なんかすっごい親近感沸いたよ。


「じゃあ私とミツキさんは異世界転移仲間だね」


『うむ。どうやらそのようじゃの』


 いえーい仲間ができた。

 同じ境遇の誰かがいるってだけで色々と気が楽になるや。


「よし、じゃあ一緒に元の世界に戻る方法を探そうよ。私もいつまでもこの世界にいる訳にはいかないし。絶対皆心配するから」


『……』


「というかそもそもあのブラックホールみたいなのってなんなのかな。ルイン君もブラックホールの事知ってそうだから聞いたら分かるかな……ってどうしたの黙り込んで」


『……楓。主はあの現象について何も知らんのか?』


「ん? 知らないけど。もしかしてミツキさん何か知ってる?」


『……』


 ミツキさんは何か意味ありげに黙り込んだ後、静かに言う。


『……何も』


「……」


 なんだか凄く意味がありそうな気がして、思わず聞いてしまいそうになったけど、そんなタイミングでコンビニの扉が開いて。


「あ、出てきた」


 レジ袋を持ったルイン君が帰ってきた。

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