8 イメージしてた異世界と違うんだけど……
……そして。
次の瞬間、日差しを感じられた。
「……外」
日差しだけでも自分が外に出たんだって事は理解できたけど、実際目を開いて空を見る事が出来たら、心から自分がダンジョンから脱出で来たんだって事が理解できた。
「よし、なんとか無事に出られたな」
そしてルイン君も隣りにいる。
……無事に二人で脱出できたんだ。
「……まああんまり無事って感じじゃ無さそうだけどね」
「まあ普通に重症だわ」
「ごめん」
「いやだからお前が謝るなって……まあとりあえず重症だけど一応は大丈夫だ。お前とミツキが戦ってる間に軽く応急処置はしたからな」
確かに動ける様な状態じゃ無かったルイン君が動いて助けてくれたって事は、そういう事なんだよね。
「ちなみに何をどうやったのじゃ?」
「回復魔術。これでも結構得意分野でな。応急処置位だったら短時間でもやれる」
だから、とルイン君は言う。
「とりあえずお前を職場の事務所に連れていく位ならできる。で、その後病院行ってくるわ」
「あれ? 回復魔術で完治まで持っていけないの?」
「魔術はそこまで万能じゃねえんだよ。だから医者その他、色んな産業が成り立ってる」
「へぇ……」
なんか良く分かんないけど、とにかくお医者さんってすげえって思っておけばいいのかな。魔術よりも凄いって事は。
「まあとにかく行くぞ、着いてこいよ。案内する」
「う、うん」
ルイン君が歩きだし、私も後に続く。
「儂はひとまず木刀の中に入っていようかの。何かあった時の為に少しでも力を回復させておかねばならん」
そう言ってミツキさんは木刀の中に入っていく。
……そういえばミツキさん、こうして木刀ごと私が持ってきちゃったけど、これからも力を貸してくれるつもりなのかな?
……まあこれからって。
私が戦ったりなんて展開はもうないと思うけど。
……ないと思うけど。
……思うけど。
……ってなんで素直に受け入れられないんだろう。
……なんでちょっと名残惜しさを感じてるんだろ。
自分の事なのによく分からない。
まあそれはそれとして。
「ルイン君。ルイン君」
「どした?」
「その職場って遠いの?」
「遠い。結構遠い」
「……まさか歩くの?」
正直少し歩いただけでも分かるよ。
足場が悪い。
というかアレだよ。今の現在地、よくRPGで見る様なダンジョン前っていうのかな。
岩とか木々がわんさかある感じの。少なくとも日本とはかけ離れた感じの奴。
そんな空間な訳で、運動神経0な上に体力もない私にはキツい道のりだ。
学校のマラソン大会位嫌だ。
「いや、歩かねえよ。てかこの怪我で長距離歩けとか拷問でしかねえ」
「じゃあアレかな……馬とか。もしくは馬車?」
ファンタジーの定番だよね。というか分かるよ。歩かないって事はつまりそういう事だよね。
「いや、ちげえけど」
「え、違うの?」
……じゃあ一体なんなんだろう。
「まあ今に分かるって。駐車場すぐ先だし」
「ふーん……って駐車場?」
凄い馴染みの深い言葉が聞こえた気がするよ!
「そ、駐車場。って何だよその反応。まさかお前の居た世界駐車場ねえのか?」
「いやあるけど! でも異世界にあるってのがビックリなんだよ!」
だって……駐車場だよ!? 車を止める場所と書いて駐車場……あ、いや、ちょっと待って。これじゃ駐車場にならない。車止場ってなんだよ知らないよそんな場所。
でもまあとにかく……えぇ、なにこの世界車あるの? めちゃくちゃ文明しっかりしてるじゃん。ツッコみ所満載な低文明してたり、なんならマヨネーズ作っただけで称賛されるのが異世界じゃないの?
「さてコイツだ。コイツに乗って行く」
「……バイクだ」
これ完全に私異世界に偏見持ってた。異世界にバイクあったよ。異世界すげー。
「っと、ほら、ヘルメット。ちゃんと被れよ。被ってねえと憲兵に見つかったら罰金と減点くらうから。俺今ゴールド免許なんだよ」
うわー法整備までちゃんとされてるよ。
……ちょっと待って、ここ本当に異世界なの? なんかあまりにイメージと現実が剥離しすぎて訳わかんなくなってきたよ?
「ほら、後ろ乗れ後ろ」
「う、うん」
そうやって困惑する私を後ろに乗せて、ルイン君はバイクのエンジンを掛ける。
「じゃあ行くぞ。安全運転心がけるけど落ちねえようにちゃんと捕まってろよ」
「う、うん」
冷静に考えれば今この状況って、カッコいい男の子と二人乗りしてる様な、ちょっと良い感じの状況
な気がするんだけど、そんな事より色々とツッコみたい事が一杯でそれ所じゃ無かったよ。
……なんだこの世界。
だけどまだそれは序の口だった。
序の序だった。
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