第3話 恋人の作り方

次の話にいこう。

クリスマスの乗り越え方、それは恋人を作ってしまうことだ。

郷に行っては郷に従え、ということわざがある。

恋人がいない、という状態が悪とするならば、作ってしまえばいい。

これにて、全て解決だ。


ーーとは、いかないから、こういう状況にあるのだと思う。

皆まで言うな。

言わずともわかる。


だが、こちらにも言いたいことがある。

男も女も、同じような状況にある、と。

つまりは、君が好きな相手も同じような状況にある可能性が高いのだ。

恋人が欲しい、と思っているのは君だけじゃあない。

故に、

つまり、

逆に、

今日という日が一番恋人を作りやすいタイミング、ということだ。

クリスマス、という悪しき習慣を、利用するのだ。


もし、そんな卑劣極まりない、相手の気持ちをないがしろにした手段を使いたくない。

そう思うならば、別の方法もある。

恋人を実際に『作って』しまうのだ。

想像し、創造する、ということだ。

今の世界は文明が非常に発展している。

3Dモデリングで自由に好きなキャラクターを作ることが可能だ。

その技術がなければ、単純に理想の恋人を妄想すればいい。

考えることは限りなく自由だ。

それが卑猥であれ、低俗であれ、夢の中は君の自由のままだ。

想像に浸っている間は、誰も邪魔されない。

無敵の空間だ。

そうやって、クリスマスが終わるまで甘い夢に溺れるといい。

1日くらい、夢の世界に浸り続けることを、きっと神さまは許してくれるだろう。

少なくとも、私はそうーー


ごとん、


おや?

何か物音が。


ごとん、ごとん。

扉を叩く音。

このまま無視するもやぶさかであった。

故に、興味の向くまま気の向くままに扉を開けた。


「やあ」


そこには、あの男がいた。

恰幅の良い巨躯、

赤を基調にしたド派手な衣装、

もっさりと白い口髭を蓄え、

だいたいつけてる丸眼鏡。

何が詰まっているか分からない、謎の袋も傍にあった。


「あ、あなたは」


私は思わず口を開く。

眼前の男に、問わずともいい質問をする。


「サンタ……クロース?」


その問いに、彼はにんまりと頬を緩ませる。


そして一言。


「イエス」


と答えた。

だが、問題はその回答ではなかった。


「クリスマスを貶める悪い子に、プレゼントを届けにきたよ」


プレゼントが出てくるべき袋から、殺意と敵意しか汲み取れない、光物。

ぶぉぉん、

ぶぉおおおん、

と唸りを上げる、文明の利器。


私は、今日という日を乗り越えることができるのだろうか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る