いけー(たくさん)

 奈津崎弁の「いけー」は「たくさん」という意味で使われているが、これは語源不詳ということにしてある。

 そもそも全く架空の方言であるという設定なので、別にランダムに発音を決めて作ってしまっても構わない。だが、それだと出来上がった単語の発音がどうも私としては「しっくりこない」場合がある。

 そういうわけで、現実にある方言の発音を参考に、「ありそうでない発音」の単語をでっち上げるわけだ。


 「いけー」は二つの語源の異なる語の中間点を割り出す形で作られている。

 一つは関西方言などで広く見られる「ようけ(余計)」である。もともとの意味は字の通り「余計よけい」であるので、「いけー」というふうに発音が変化してもそこまでおかしくはない。

 そしてもう一つは静岡県などで使われる「いかい(大きい)」。こちらも「アイ」が連母音融合を起こして「エー」になることは十分に考えられ、「いけー」になりうる。

 という感じで、どちらが語源か分からないし、明確にする必要もない。

 現実の方言もそうだが、我々は特定の語の歴史を辿ろうとしたとき、現代語の発音(それか記録が残っている限りで遡れる範囲まで)しか情報を与えられていないので、それが本当にそういう語源なのか、というのは結局分からないことも多い。

 

 そういう視点で見ると、こうした手法で単語を生成するのはある意味「リアル」とも言える。

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