落書き帳（言語に関する覚書）

単語だけなら架空の方言を作るのは簡単だという話 「にゃんにゃん（兄）」を例に」

　小学館「日本方言辞典」には「兄」を表す単語だけで３００個弱（私が数えた限りでは２８７個）収録されている（の中には幼児語や尊敬語、武家言葉なども含まれる）。佐賀県神埼郡では「兄」のことを「ばーさん」、「おばーさん」というそうだ。

　兄を「にー」という所：千葉県市原郡　東京都三宅島　福井県大野郡（卑語）　長野県諏訪　岐阜県　静岡県　愛知県（幼児語）　三重県　京都府　島根県石見（下流の語）　山口県防府市　香川県木田郡・小豆島　愛媛県（卑語とする所と敬語とする所がある）　大分県大分郡

「にーにー」　島根県石見　山口県阿武郡　大分県

　私の出身の浜松では「にーに（幼児語）」というのだが、これについては記載がない。

　沖縄・香川・神奈川では「二番目の兄」を表す語が見られる。

　なかっせー（神奈川県津久井郡）

　なかつのあに（香川県小豆島）

　なくや（沖縄県小浜島）

　なかっちゃ（沖縄県石垣島）

　なはしぇー（沖縄県黒島）

　がっちゃー（沖縄県西表島）

　こまーちゃん（岡山県苫田郡）　年下の兄

　こまいあーちゃん（岡山県真庭郡）　年下の兄

　こんまいあんにゃん（香川県高見島）　年下の兄

　こんまいにーやん（高知県）　次兄

「あ」、「あん」、「にー」など「兄（あに）」似た発音のもの；

　あー、あーさ、あーざ、あーさん、あーちゃん

　あにーさん、あにーま、

　あんちゃ、あんにゃん、あんやー、あんやん

　にーさ、にーこ、にーまー、にーや、にーやー、にーやん

「せな」を兄の意味で使う所

　岩手県和賀郡　秋田県　福島県　栃木県　群馬県佐波郡・多野郡　埼玉県　千葉県君津郡・市原郡　東京都南多摩郡・八王子　神奈川県　新潟県東蒲原郡　山梨県東部

→古語の「せな」由来らしい

　せ‐な【▽夫な／▽兄な】 の解説

《「な」は接尾語》女性が、夫・恋人または兄弟など親しい男性をいう語。

●その他

　おやかた　青森県　岩手県　など

　そーりょー　大分県直入郡

　たーい・だい・たいたい　福島県

　そざ・そじゃ　沖縄県宮古島

　いなっきー、やっきー　鹿児島県喜界島

　むいー　鹿児島県奄美大島

　いんな　東京都八丈島

　えたどり　鳥取県

　この辺適当に組み合わせると架空の方言の単語を作るのは割と簡単かもしれない。

　あんさん、あんかん、あんこ、あんにゃ、あんちゃ、あんち、あんちや、あんやー

　あんな、あんよ、あんにょ、あんにょー、あんにゃま

　あにゅ、あにょ

　ここに書いてあるものは全部実在する。

　この辺の近い発音を組みあわせて例えば「あんやん」とか作ると、

　あんやん

　千葉県山武郡　新潟県佐渡　福島県大飯郡　山梨県　長野県長野市・上水内郡　三重県阿山郡　和歌山県　鳥取県　島根県　広島県　愛媛県　豊前　長崎県対馬　熊本県　大分県（やや下品）　宮崎県

　なんと実在した（笑）

　他にも、さすがにアリエナイだろうと思って「あんあん」とか「にゃんにゃん」とかも作ってみたが、「にゃんにゃん」に関しては兵庫県（幼児語）の記載があり実在が確認できた。