落書き帳（言語に関する覚書）

レモン味のラムネ 奈津崎弁台詞全訳（第十一話～最終話）

　§第１１話　トマトに砂糖？

　●夢の中

　秋実「何言うちゅんざ、きっちゃん。地球はドゥーナツ型ざ」

　訳：何言ってんの、君。地球はドーナッツ型だよ

　●朝食時

　秋実父「……なぜフ（・）ラ（・）イ（・）デ（・）グ（・）に醤油（しゃーゆ）かける？」

　訳：……なんで目玉焼きに醤油をかける？

　秋実祖父「まあ、普通はくれざな」

　訳：まあ、普通はこれだな

　秋実「……家ん後（うら）ん畑で取（つ）れてんざ」

　訳：家の後ろ（反対側）の畑で取れたんだ

　秋実「うん……、良せ」

　訳：うん……、いいよ

　秋実「昨日（きんぬ）からやかまっせな。『普通』て、普通ぜぁらんがは、きっちゃんざい」

　訳：昨日からやかましいな。普通って、普通じゃないのは、君だよ

　●木中家玄関

　秋実「うわぁ、準備万端ね。づけ行くんざ？」

　訳：うわぁ、準備万端だね。どこ行くの？

　秋実「……何ね、出かけるんぜぁらんけ？」

　訳：……何よ、出かけるんじゃないの？

　秋実「なら車出すげん、停車場まで行かー」

　訳：なら車出すから、駅まで行こう。

　秋実「ちっくし待ってな、今からクヅステイションに行くげん」

　訳：ちょっと待ってね。今からゴミ捨て場に行くから。

　秋実「何ね、別に謝らんで良せて！　何（なぁ）ん支障（ししゃー）なせ」

　訳：何よ、別に謝らなくていいよ！　大丈夫。

　秋実「で、実際づけ行くんざ？」

　訳：で、どこに行くの？

　秋実「さっきはたまげっけ。いきなし出て行かーてすて、何ざて思（うむ）うて心配すっけ」

　訳：さっきはびっくりした。いきなり出ていこうとして、何だと思って心配したよ。

　秋実「違違（ちがちが）、別ん用」

　訳：違う違う、別の用。

　§第十二話　レモン味のラムネ

　●車に乗る前

　秋実「海ん方」

　訳：海の方

　●行きの車中

　秋実「まーすぐ着くげん」

　訳：もうすぐ着くから

　秋実「何か憑（つ）いちゅんざ、たぶん」

　訳：何か憑いてるんだよ、たぶん

　●波（なん）が浜（はま）にて

　秋実「波（なん）が浜（はま）。最近ぜぁ観光地になっちゅる」

　訳：「波が浜。最近じゃ観光地になってる」

　秋実「見てみ、可愛（かうぇー）せっぱ？」

　訳：見てみて、可愛いでしょ？

　秋実「きっちゃんむパプシクル食うけ？」

　訳：君もアイスキャンディー食べる？

　秋実「『アイス』は氷（くうり）ん意味ざっぱ？」

　訳：アイスは氷の意味でしょ？

「まぁ、後（あつ）で金払うし良せっぱ」

　訳：まぁ、後で金払うし良いでしょ。

　秋実「金くれるげん、早ぁ選び」

　訳：お金あげるから、早く選びな

　●「レモン味のラムネ」を飲みながら

　秋実「支障無（ししゃーな）せ」

　訳：大丈夫。

　秋実「『レモン味んラムネ』て……。何言（ゆ）うちゅんざ、きっちゃん」

　訳：レモン味のラムネって……。何言ってんの、君

　秋実「さーぜぁらん。ラムネはレムン味に決まっちゅるっぱ？」

　訳：そうじゃない。ラムネはレモン味に決まってるでしょ？

　秋実「ラムネは英語ん『ラムネイヅ』ん略ざっぱ？　ラムネがレムン味なんて当然（たーぜん）ざ」

　訳：ラムネは英語の「ラムネード」の略でしょ？　ラムネがレモン味なんて当たり前だよ。

　秋実「さーざ。レムン使ぁちゅらんラムネイヅなんて可笑（うか）しなせ？」

　訳：そうだよ。レモン使ってないラムネードなんておかしくない？

　秋実「きっちゃん、本（ふん）に変な発音ざね」

　訳：君、本当に変な発音だね。

　●ラストシーン

　秋実「あれ見（み）、外国行く船ざ」

　訳：あれ見て、外国行く船だよ

　秋実「あれで本（ふん）に駆け落（う）ちする？」

　訳：あれで本当に駆け落ちする？

　秋実「ざれてだけざて！」

　訳：冗談だって！

　秋実「いやっ、山明（やまあけ）さんにゃ毎年行っちゅる！　幡宮にゃ、高校時代ん友達が居（う）るげん、あん日む友達つ会ぁちゅってんざ！」

　訳：いやっ、山明さんには毎年行ってる！　幡宮には、高校時代の友達がいるから、あん日も友達と会ってたんだ！

　秋実「すりゃ……、まぁ……」

　訳：そりゃ……、まぁ……。

　秋実「あ？　いや、別に信ずちゅらん」

　訳：え？　いや、別に信じてない

　秋実「いや、何ちゅうけ……」

　訳：いや、なんていうか……

　秋実「さすがにすりゃありえんぱ？」

　訳：さすがにそりゃありえないでしょ？

　秋実「い……、いきなし何が話ざ、きっちゃん」

　訳：い……、いきなり何の話よ、君。

　秋実「……さーけ」

　訳：……そっか

　秋実「俺（うれ）む、また会えて良さっけ」

　訳：私も、また会えてよかった。