第三コマ 祝日開講とGWの課題提示
「隠井です。
みなさん、祝日であるにもかかわらず、今日は出席してくれてありがとう」
この日、四月二十九日は〈昭和の日〉であるにもかかわらず、隠井が勤める大学は祝日開講していたのだ。
一息ついた後で、突然、隠井は口調を砕けさせた。
「まったく、世間では、いわゆるゴールデン・ウィークが始まっていて、二十七日の土曜日から五月六日の祝日の月曜まで十一連休って社会人もいるっていうのに、うちとこの学校は、平日が、オセロで白が黒にひっくり返るみたいに、休日になったりしないんだよね。
てか、それどころか、今日、二十九日が祝日開講日って一体何!?って感じだよね。たしかに六日は休みになっているけどさ。
そもそもの話、ここの大学の講義の開始日って四月十二日の金曜日だったじゃない。
まったく、その週の月曜から春学期の講義を始めていれば、平日をオセロにしても、祝日を文字通りに休みにしても、春学期の講義数も普通に確保できて、教員も学生もウィンウゥンなのにな。
十五回の時代には、今よりも一週早く講義は始まっていたし、十二日の週の頭からのスタートって、できない話じゃないと思うんよ。
こんな事、大学に入りたてのピカピカの一年生にだって思い付く事で、十四回講義にして一週分の余裕を儲けた意味は何って、つい思っちゃうよ。
まあ、教員である僕は雇われの身の上なんで、やれって言われたら義務なんでやるしかない分けだけど、学生である君らは講義受講の有権利者な分けだから、参加するしないは個人の自由であるはずなのに、祝日の今日来てくれて、『マジで感謝』です。正直、参加者ゼロを覚悟していたもん」
ここで、隠井は、飲料水を口に含んだ。
「愚痴はこの辺にしときましょう。
七月末の学期の最後には、最終的に八千字のゼミ小論を提出してもらいたいのですが、それだけの字数は、ワン・アイデアと勢いだけでなんとかなってしまう分量を越えているので、段階を踏んで、ゼミの中で、君たちの思考を徐々に成長させてゆきたい、と考えています」
「先生、『思考の成長』って、どういった事ですか?」
「最終的なゼミ論の字数は八千以上なのですが、これはあくまでも最終目標で、それ以前に二回、教場で、書いてきたものに基づいた口頭発表をしてもらいます。
つまり、五月から六月にかけて二千字、六月から七月にかけて四千といった具合に、段階を踏んで分量を増やしてゆく分けです。
「なるほど」
「で、最終的な八千の論考の叩き台となる、千字程度の概論を、GWの休み明けに提出してもらいます。来週の六日は祝日休校なので、その間に、ゼミ小論のベースとなる千字の文章を、ラフなもので構わないので考えてきてくださいね」
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