オリエンテーション
第一コマ 二つのアプリの事前登録:オリエンテーションその一
約一年ぶりに教卓の前に立った隠井は、一呼吸おいてから、こう切り出した。
「初めまして。
この〈複合文化論〉のゼミを担当する隠井迅です。
前方のスクリーン上に見えている『Classroom』のウィンドウの上部に『講義名』が出ています。自分が登録した受講科目と合っているかどうか、教室に間違いがないかどうか確認し、違っていたら、速やかに別の教室に移動してください」
すると、二、三人の学生が教室から出て行った。
「やっぱ、間違った方が少しはいたみたいね。
さて、残った皆さんは、情報端末を出してください。
画面の中央に、アルファベットと数字が入り混じったパスワード、いわゆる『クラスコード』が見えていると思います。
皆さんは、いったんクラスルームの『ホーム』に戻って、右上角の『+』をクリックしてください。それから、『クラスに参加』という文字を押した後に出てくる『教師にクラスコードを聞いてこちらに入力してください』という文言下の枠に、そのコードを入れれば、それで登録完了です。
実に、簡単でしょ?
今後、連絡や、ゼミ論の提出など、講義関連の事柄は、このクラスルーム内に提示する予定なので、このゼミの『クラスルーム』への登録こそが、受講の第一歩目になります」
この時、受講生の一人が手を挙げた。
「先生、どうやってもクラスルームにアクセスできません」
「あっ、そっか。
クラスルームって、大学が契約している教育アプリなので、大学付与のアカウントからしかアクセスできないのですよ。
他のグーグルのアカウントでログイン状態にある事が原因だと思うので、いったん、ログアウトしてから、大学のアカウントでログインしなおしてください」
その手間取っていた学生も、なんとか登録できたようであった。
「もう一つ、皆さんにやっておいてもらいたい事があります。
令和二年、二〇二〇年に、感染症のパンデミックが勃発してから早四年、なるほど確かに、コロナはおさまってきた感があります。
ただ、この先、何が起こるか分かりません。
このゼミは、原則、教室での〈対面〉講義なのですが、オンラインでリアルタイム配信を行う事になる可能性も考慮して、ミーティング・アプリ、いわゆる『Zoom』の登録もしておきましょう。
その登録URLは、クラスルームの『ストリーム』にリンク先を貼っておきました。これは、一度、登録しておけば、どの回の講義も同じURLからアクセスできるので、ブックマークしておいてください。
それでは、設定したミーティングがきちんと機能しているかどうかを確認したいので、試しに、スケジュライズされたミーティングを開いてみましょう。
わたくしが開催するミーティングでは、参加者は、いわゆる〈ルーム〉に直接アクセスできない設定にしてあります。
いったん『待合室』という場所で〈待機〉状態になって、わたくしが〈入室〉の許可を出してようやく、講義に参加できる、という手順です。
面倒なように思えるかもしれませんが、全然関係の無い第三者の不正アクセスを防ぐための処置なので、仕方ないと思ってください。
そして、一点だけお願いがあるのですが、『Zoom』へのアクセスの際に、音声の方は消音状態にしておいてください。
というのも、物理的に同一の空間で、同じ『Zoom』にアクセスすると、電波が干渉し合うのか、ハウって超音波のような音が……」
隠井がみなまで言う前に、教室の各所から、脳を震わせ、眩暈を引き起こすような音が一斉に鳴りだした。
「は、早く、音声をオフにして」
四秒後、ようやく超音波が鳴り止んだ。
「こ、こんな風になっちゃうんで、音声を先にオフにしてもらいたかった分け。
とまれ、これで、『Classroom』と『Zoom』、講義に先んじてやっておいてもらいたかった二つのアプリの登録が終わった次第です」
〈参考資料〉
〈登録アプリ〉
「Classroom」、『Google』
『Zoom』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます