短編百合小説

デニム

　今日はスキニーかロングスカートか迷って結局ショートパンツにした事を今更後悔している。

　コーデがイマイチだったわけじゃないよ？Tシャツがオーバーサイズだし、読めないけど元気そうな『！』が入った英語が書かれているし、元気なイメージのショートパンツが正解。いつも思うけどあたしのセンス最高だと思うんだ。

　かといって寒いとかじゃないよ？あたし暑がりだもん。今日は異例の暑さだし、日焼けは気になるけど数時間おきに日焼け止め塗ってる。乙女のたしなみってやつ。

　ムダ毛？ちゃんと処理してるってば。知ってる？全身脱毛って十八万するらしいよ。そんなの大学生のバイト代じゃ指先で限界だって。

　とにかくあたしは美容と健康に関しては完璧なの。コーデもメイクも日焼けもムダ毛もバッチリだし、いくらLINEが来ても夜十一時には寝るし、こうみえてちゃんとしてるんだから。

　だからさ、こんなの予想出来ないじゃん？今の状況を教えろ？OKスネーク聞いてくれよ。

　SNSで知り合ったオタク友達がいるの。

　学校じゃリア充振舞って見た目通りのギャルだけどあたしゲームとか好きなんだよね。

　かといって大学でゲーム好きなんだって言うとさ、チャラッチャラした男どもが『俺もゲーム好きなんだ。じゃあ家言っていい？』とか言って来たがるわけよね。

　そりゃ一年の頃はピュアッピュアな乙女だったからワクワクして呼んでみたけど結局そういう男ってゲームは下手くそだし、ただヤりたいだけだった。

　それでこまめにアイテム拾わない男は前戯が下手クソって分かったの。

　けどね、一人でゲームしててもつまんないからSNSで裏アカ作ってボイチェン使ってゲーム配信してたんだ。女だってわかると変なのも来るから。そういうのいいんだよね。

　そこで知り合ったのがBJさん。ブラックジャックかと思うじゃん？

　ツイートを見てたり話しているうちにその子は家が近いって判明して、なんなら大学も近くてじゃあ飲みに行きませんかってことでリアルでも合ってみたの。でも　本人は顔に傷もなければ白髪もない同年代の女の子。小柄で地味だけど磨けば光る系？とにかく可愛かったのね。

　私が女だってことはバレてたみたい。話し方とか、ツイートの内容とかが女性っぽいって。隠しきれない女子力が溢れ出ちゃってたね。

　話しているうちに盛り上がってさ、二人とも飲みすぎたよね。大学生なんてお酒の限度の分からないアホなんだよ。

　それで今現在に至るって感じ？はしょりすぎ？もっと細かく話すって。

　飲みすぎて、三軒ぐらいはしごしたかな？家でゲームしながら飲みなおそうって誘ったらBちゃんノリノリでさ、あたしもノリノリだったけど。

「このキャラ美しすぎるよな…」

「とてもわかる。パンツ見たら嫌がるの知ってる？」

「知ってる！作った人は変態だよ…ジャパニーズヘンタイ」

　とかアホな会話をしながらゲームしてたの。

　楽しいよ？酔ってるし。同じぐらいの腕前の人とゲームするのって初めてだったし。

　でもそのうちゲームも疲れちゃってさ、眠いしね。シャワー浴びなよってBちゃんに言ったら急に膝の上に乗ってきたんだよね。いや、あたしが乗せたんだったっけ？とにかく酔っ払っちゃっててもうお互いに何を言ってるのかもわかんないわけ。

　とにかく覚えているのは感覚だけ。地味なBちゃんのデニムのジーンズが太ももに擦れて背筋がゾクゾクした。今まで知らない感覚だったからここで後悔したの。

　『あぁ今日はスキニーかロングスカートにすればよかったな』って。だって変態みたいじゃん。今だってBちゃんが体勢を変える度に…あぁもういいでしょ。

　小柄なBちゃんは大女の私の膝にちょこんと乗っかって真っ赤な顔でニコニコしてるし、私はゾクゾクしてるし、あぁほらどんどん顔が近くなっていってる。

「ね、女の子同士でシたことある？」

　なんて聞いてくるもんだから。追い込まれた狐はジャッカルより凶暴だ！ってセリフ知ってる？そんな感じ。

　でも多分大丈夫。あたしアイテムこまめに拾うタイプだし。