姫
ほんの少し昔々。ある学校に二人のお姫様がいました。
一人は学級委員長として皆の意見を聞き、いつも平和的解決案を思いつく聡明で優しく美しい姫。
一人は周りにワガママばかりを言いつけては忙しい委員長姫を自分の付き人のようにどこに行くにも連れている可愛い姫。
学年では真の姫は委員長姫だという派閥と、いいやワガママ姫こそが姫に相応しいという派閥に分かれていました。ファンクラブともいうでしょう。
二人はそんな周りなんて意に介さず、どこへ行くにも二人仲良く学校内を御拾いされていました。
ワガママ姫は今日も委員長姫に無茶を押し付けます。
放課後は全クラスの委員長が集まる会議があるにも関わらず一緒にクレープを食べに行こう、カラオケに行こうなど数々の無理難題を言い渡します。
委員長姫はニコニコと『今日は委員会があるから無理よ』と言います。
ワガママ姫は『じゃあ待ってるから』と言います。
委員長姫は困ったように『じゃあ十六時までに戻れたらね』と言いました。
ワガママ姫は『分かった!教室で待ってるね!』と途端に上機嫌になりました。
その日の放課後、私は見てしまったのです。
…突然出てきた私が誰ですって?そうですね、村人Aとでもしておきましょうか。
村人Aは部活が終わって、汗拭きシートを教室に忘れた事を思い出しました。
授業中に暑いからといって汗拭きシートをこっそりブラに挟んで満足し、そのまま本体を机に入れてしまったのです。
汗っかきな村人Aは汗だくのまま制服に着替えるのは嫌で教室に取りに戻りました。
教室の扉に手をかける直前に教室から話し声がして誰かがいることに気がついたのです。
すぐに入らなかったのは村人Aが人と会うのに憚れる格好をしていたからです。女子校だといっても、人がいると分かったら途端にキャミソール一枚でいる自分が恥ずかしく感じたのです。
我慢しきれず歩きながら脱いだTシャツを再び着ている最中に変な声が聞こえました。
放課後、二人だけの教室。
…この言葉だけでも怪しい雰囲気を漂わせる事が出来るのは先人達のおかげですね。
扉を少しだけ開けて覗くと二人は向き合っていました。
一人は椅子に掛けて、一人は跪き上体を屈めて居ます。
なんということでしょう。片方が片方の脚にキスをしているではありませんか。
椅子に座っているのは委員長姫。
そして、跪き委員長姫の脚にキスをするワガママ姫。
委員長姫は満足げでもあり冷酷な視線をワガママ姫に送り、ワガママ姫は恍惚な表情で徐々にキスをする位置が上がってきています。
村人Aはこれ以上は見てはいけないと判断し、汗だくで制服を着ると心を決めました。
この後二人がどうなったのかは村人Aは知りませんが十年後の同窓会に一緒に来たということはめでたしめでたしなのでしょう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます