第294話

 スキルを切り替えないですむのは助かるな…。…ん?

 巨神は朽ちた腕を切り離して、新たな腕を再生した。そして、切り離した腕だった物をこん棒のように振り下ろした。

「やっ、やばい…!」

 ガードに切り替えようと焦っていると、シオンさんが巨神の腕を凍らせ、エリックが雷魔法で怯ませた。

「アル、今だ!」

「…おっけ〜……!」

 僕はニヤッと笑いながら、凍った腕ごと破壊して巨神を怯ませた。様子を見ると、破壊した腕はコアを起点に再生していくようだったが、連続した回復は難しいようだった。

「…ノスク、あの青いコアの破壊を!」

「…了解だにゃ!」

「……アルッ、ここ!」

「…了解!」

 僕はシャルの声を聞き、足のコアがあった箇所に剣を突き刺してMPドレインを発動した。すると、巨神の足は崩れ落ちていった。

「ナッ、ナニガッオキテッ…。コノ…ウジムシドモガアアア!」

「聞いてるようだな…。次は私が引きつける…。アルは中央を!」

「シオンさん、りょっ…! リッ、リアヌス…!?」

 リアヌスは僕を抱きかかえながら上空に向かっていると、竜の姿へ変貌していた。

「…久しぶりだな……。この姿は…」

「…リアヌス…よかったのか?」

「今日ぐらいは許してもらおう…」

「わかった…。俺が頭上のコアを叩いている内にリアヌスは右手の赤いコアを…!」

「了解した!」

 リアヌスは巨大なブレスを巨神に目がけてぶつけた後に、巨神の首元に喰らいついた。僕は即座に駆け上がり頭上の風のコアの破壊を目指したが、堅い魔力のガードが行く手を阻んだ。

 

「…っ!」

 …硬いな! これはチャージしないと…。

「……危ないニャ!」

 辺りから小さな機械兵が無限に湧き出てきていたが、僕は目の前のガードを破壊する事に夢中で何も気づかなかった。

「ノスク、助かったよ!」

「アルは下に移動して! このガードはウィンディーネが解いてくれるから!」

 ノスクはウィンディーネの力を借りてなぎ倒し、ウィンディーネはガードに触れて詠唱を唱えていた。

「…頼んだぞ!」

 僕はドゥラスロールを発動し、下に影を発生させて僕と入れ替えた。

「これで…二つ目!」

「アル、こっちもだ!」

 僕はシオンさんの声に反応し、巨神の腕から体に飛び移り小さな機械兵を切り裂きながら中央の三つ目のコアを破壊した。

 

「…ん? 今度はデカい奴が現れたな……」

「大将、そいつは俺に任せておけ!」

 エリックはハンマーで機械兵を叩き割ると、散らばった破片が機械兵へと変わっていった。僕とエリックは取り囲われて、背中合わせになった。

「下のコアは破壊した…。後はどこが残ってる…」

「頭上はノスク達が…。右手は…。右手は今…終わったみたいだな…」

「あいつ…強すぎだろ…」

 リアヌスを見ると人間の姿に戻っていたが、斬り裂いた痕は先程の竜の姿の爪痕の比ではなく巨大なものだった。

「俺はコアが再生しないようにしてくる…。こいつら…頼んでもいいか…?」

「任せとけって…!」

「…頼んだっ!」

 僕は四つ目のコアと五つ目のコアを破壊すると、巨神の朽ちた体が更に崩壊していき下に落ちていった。僕は皆と警戒しながら下に降りると、巨神は僕達を睨みつけて不気味に佇んでいた。

 

「そろそろ終わりが見えてきたみたいだな…」

 僕は剣先を向けて、巨神を挑発した。これは別に油断しているわけじゃない…。こいつはシミュレーション結果では挑発すればするほど攻撃が単調になり、全体攻撃ではなく一点に攻撃をするからだ。

「…観念するんだニャ!」

「私にかかればこんなもんね! ザ〜コ〜! 悔しかったら動いてみなさいよ!」

「おっ、おい、二人共…不用意に近づく…!」

〈…グッ、グッ、グッ…グキャアアアア!〉

 奴は突然、閃光と共に鼓膜が割れそうな程のデカい声を上げた。僕はつい目を閉じてしまったが、目を開けるとやつの姿はなかった。

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