第293話
そこは始まりと終わりが交錯する場所…。その場所で僕は生まれた。
……無事についたみたいだな…。
周囲を見ると、見えるはずもないほど漆黒の闇が広がるその中に二つの剣が見えた。ここには存在していないはずの神様とルアの剣が僕の周りをクルクルとまわっていたのだ。
〈……きたか…〉
ああ…。なんとかな…。
〈…願いは見つかったのか?〉
見つかったよ…。でも…叶えなくていい…。
〈…もう…後悔はしないのか?〉
……それは…わからない…。
「でもな……失敗しても…後悔しても…進まなくちゃダメなんだ…。俺は…過去も今も…全部抱きかかえて未来に向かう…!」
〈そうか…。では…私は見届けよう…。貴様達の結末を……!〉
「…結末にはならないさ……。見せてやるよ…。俺達の始まりをっ…! ……はぁああああああ!」
僕の声と共に外から鎖を引きちぎるような音が聞こえ、二つの剣が目の前で交差するように見えた。でも、僕の手にあったのは見たこともない大剣だった。
なんだ…この剣……。もう…予測と外れてきたな…。
「…アッ、アルなの!?」
「…ああ…わるい…。…皆…待たせたな……。…って、前が見えねえ……。よっと…。…ふぅ…スッキリした……」
僕は伸びすぎた前髪を風魔法で少し目が覗くくらいに切り刻むと、皆の驚いた顔が見えた。
「アルッ!」
「生きてたのか!?」
「大将…!」
「いっ、生きてたにゃ!」
僕は皆の前に移動して奴らとの間に入っていると、レーザーが僕に襲いかかった。僕は大剣で防ぐと、ウルは明らかに動揺していた。
「…皆…後ろに下がってくれ……」
「どうやって……」
「後悔させてやる…。…そういっただろ?」
「…バカな……。間違いなく儀式は成功したはず……」
「……怖いのか?」
「…怖い? …君を? くっくくく…。ははははっ……。思い上がるなぁあああ…! 君は何も変わってない……! 変わって……。…何も変わってないだと……。まさか…中和して……」
「でも…この力に気付くってことは…。…少なくとも、今の時点ではお前の方が強いみたいだな……。そいつより…」
「何の話だ…?」
「お前に言ってんじゃねえよ…。…聞こえてんだろ?」
僕を睨みつけながら、巨神は今にもその大きな拳攻撃を振り下ろそうとしていた。
「キサマガ…ナゼ、ソノチカラヲ……!」
「懐かしいな…。お前を見ると、手に汗握って…何度も戦ったラスボスを思い出すよ……。本来なら敵なのに…親友のようにも思える…。妙な気持ちだ…」
「コタエロォオオオ!」
「…簡単だ……。まっ…残骸にすらなれなかったお前にはわからねえだろうがな…! …こいよ……!」
僕は地面に剣を突き刺して左手で挑発した。巨神は激情した様子で僕に拳を振り下ろし、僕もオーラをためて右手で応戦した。……なんて…するわけがない…。
「グッ、グゥアアアアアア…!」
「痛そうだな…」
僕は巨神と僕の拳の間にヴェズルフェルニルを発動した。巨神の右手のキラキラと光るコアにヒビが入っていた。
「……未来が一つも見えない…だと…。なぜだ……!?」
「頼りすぎたな…。その力に……。…まずはお前からっ!」
「…ジャマダアアアア!」
巨神は右腕を振り下ろして辺りを薙ぎ払った。そして、その攻撃は予想通りウルを目掛けて襲いかかった。
「ぐっ…! なっ、何をする…」
「……ニエトナレ…」
「やっ、やめろっ!」
「…っ!」
こいつ…喰いやがった……。
「アル、どうする気だ!」
「ああ…待ってくれ…。一回目を使う…」
僕は左目だけあの世界に置いてきた。その理由は二つ…。高性能な予測機能を使う為…。そして…もう一つは完全な未来を予知する全知全能に対抗する為だ…。あのスキルは一番高確率の未来を見せる…。であれば…僕の中に存在している奴が気付けなかった箇所…。神の空間から未来を高確率に変える可能性があるならば…どうなるか…? 答えは機能しないだ…! 使える回数はあと二回…。…と言っても、実質はあと一回ってところだが……。
〈どうするの…? …もう精霊達はだすの?〉
……ああ…。予定通り…バイパスに切り替えて精霊達を開放してくれ…! …あっちの方はいけそうか!?
〈ステータスか上手くやってくれてる…! ……いくよ!〉
「……よし…。…みんな…受け取ってくれ!」
僕が右手を高く上げると、精霊達は僕の腕から解き放たれて皆の元に帰った。皆の姿は精霊のような姿に変化し、同時に僕も全身からオーラが噴出し、オレンジ色に輝き出した。
「…ノーム!? あれ…私の姿…」
「なるほど…そういう事か…」
「ヴォルトォオオー会いたかったぜっ!」
「…これでお礼ができるな……!」
「…百億倍返しだニャ!」
「みんな…奴の弱点は六つのコアだ…! 破壊したら教えてくれ。俺がコアを再生できないようにする。…いくぞ!」
僕は風の牢獄を発動させた後に巨神の腕を切り裂きながら上がっていった。こうすれば奴もここから空間移動して逃げることができないからだ。
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