第292話

 あれから…どれくらい経ったんだろう…。体感時間では数ヶ月に感じる反面、昨日のようにも思えてしまう…。ここは…本当に不思議な空間だ…。寝る事も食べる事もできるのかもしれないが、そんな欲も大してわかない。…なんか…本当に社畜になったような気分になる…。

「残りライフ五十二か…。こっからが問題だな…。はぁ…わからん……」

「わかったんじゃなかったの?」

「あれはな…。一難去って…また一難ってやつだ…」

 実験して色々とわかったことがある…。まず一つ目にエディターモードに魔法やスキルのコードをコピーして貼り付ければプレイモードで使えるようだった。これは僕の持っている悪魔のスキルも例外ではない。

「…どうすればいいんだ……」

「…ステータスに聞いてみれば?」

「そういう答えは一切教えてくれないんだよ…。技術的な答えは教えてくれるんだけど…」

「そっか…。…じゃあ、ステータス借りていい? ……あっちで練習したいから……」

「ああ…いいよ…」

「じゃあ…」

「アリス…悪い……」

「…気にしないで……。少しでも力になれるならなんでもやるわ…」

 ………俺は俺で…もう一回考えるか…。

「……」

 ……まず…前提として…このプレイモードは…今の現状を正しく反映するとする…。であれば…現状、僕は死んでいる…。だから…プレイモードでは操作もできないし…登録しなければ悪魔のスキルも…簡単な魔法でさえも使えない…。そして、エディターモード…こいつは例外ではないものを例外にしてしまう…。つまり…今の俺にできない事……いや、今の俺になら出来る可能性がある事も反映する事ができる…。

「だとすると…」

 奴らが力を隠していれば、これに反映されないってことか…。…本当はリアルタイムで反映してくれればいいんだけどな……。

「…まてよ……」

 …そういうやり方もあるか……。だとしたら……。いや…今はいいか……。…脱線したから、考えをもとに戻そう……。

「まあ…とりあえずは…俺がどうにかして生き返ればいいってことだ……」

 かなり強引だが、ここはクリアした。僕自身もできると思っていなかったが、裏ワザみたいな事をすればできるようだった。

「ここはいい…。ここはいいけど…問題は…」

 どうやっても奴らを倒す事ができない…。何十回…戦ってもだ…。

「なんなんだ…。くそっ…どうやって……。はぁ…」

 僕は気分転換に立ち上がって、辺りを散歩しようとすると鎖が足に引っかかりぶっ転げた。僕は黒いポットから頬を離すと目を見開いた自身が映っていたが、その更に奥に巨大な何かと僕が戦っている映像が浮かんだ。

「いててっ……。なんだ…今の……」

 …なにか…忘れてる? なんだ……?

「……ダメだな…。思い出せない…。……でも…やっぱり…お前なのか? ウィンディーネ…」

 僕は精霊達のコードを解析した時にウィンディーネだけ、読み解けない部分が多いことに気付いた。恐らく…僕がヘイズルーンの力を発動してないからだ。

「…かといって………」

 僕はステータスに忠告されている。ウィンディーネのコードを深く見てはいけないと…。なぜなら、ヘイズルーン…。このスキルの効果は一つしか選択することができない…。精霊達のコードは階層型のコード…。いくつもの力が分岐してゴールに辿り着く…。でも、僕の力では一つに辿り着くのが限界…というよりも容量が少なくて扱えないのだろう…。

「…なら…どうすればいい……」

 ステータスに読み解くというその行為…そのものが、その力をその力として決定づけてしまう可能性がある事を僕は教わった。ノスクやゼロの力を想像すれば…この中身の予想はできる…。勝ち筋も……。だけど、あくまで予想…。間違えた解釈をして深く解読してしまえば、もう後には戻れない。

「…直接…聞いてみるか?」

 …いや、まだ…早いか……。装置もどこまでもつかわからない…。下手にそんなことして、この空間が不安定になったらまずい…。

「ステー……。そういえば…今…練習してるんだったよな…。うーん…。そうだ…。バッグの中にメモってたコードがあったよな……。分岐前の…。あれっ…どこにいった? 確かこの辺に…。……ん?」

 カランと音がする方をみると、地面にコーラの瓶が落ちていた。どうやら、メモ用紙に引っかかって出てきたようだった。僕はそれを取ると、無意識に蓋を開け飲みながらメモを横目にみた。

「ぷはっ…。うまい……。さてっ…どうにかして…まずはこれを……。…っ! …わかるぞ……。……そうか…。思い出した……。これが…アイリスのプレゼントか……。って、こんなことしてる場合じゃない……。…スッ、ステータス!」

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る