第280話

「…って、ことみたい……」

「えっと…つまり…アリスも悪魔の魂を持ってたってことか?」

「…たぶん……」

「……なるほどな…」

 それだと…辻褄も……。

「……いえ…違います…」

 僕はステータス画面の反応にガクッとなってアリスの方を見た。アリスは申し訳無さそうに頭に手を当てて答えた。

「…アリス……」

「…ごめん……。話が難しくって……」

「……補足しましょうか?」

「うーん…。…頼む……」

 僕はガクッとなったまま、ステータスの説明を聞いた。

「まず…先程の説明通り…この空間は貴方の魂…。その核となる部分です…」

「だよな…。だから、アリスがそれに引き寄せられてきたって…」

「引き寄せられたのは正解です…。ですが、この空間を維持している神の魂に引き寄せられたのです…」

「おい…説明がおかしくないか?」

「いえ…おかしくはありません…」

「うーん……。まぁ…いいか……。…なら…アリスもこの世界の神の魂を持っていたってことか?」

「いえ…そうではありません…」

「………あ~もうわかんねえ……。じゃあ、一体…誰の……。いや…そうか…。まさか………」

 ……そういうこと…なのか……?

「……そうです…。貴方の世界にいた神の魂を持っていたのです…」

「……そうなのか?」

「…わっ、私に聞かれても……」

 アリスは手を振りながら困った表情をしていたが、僕の中で答えはでていた。僕は自身の右腕に巻かれていた黒色の鎖をみた。

「…つまり、力の制御って事か……」

「はい…」

「…力の制御…? ねぇ…どういうことなの?」

「……」

 そうか……この空間自体が……。なるほど…。でも…奴らによくバレなかったな……。まぁ…奴のスキルの特性って事も考えられるけど…。こんな事するなんてそもそも考えつかないか…。本人達はもう死んでるし…。でも…力自体はあるわけだよな……。そうか…。それであいつを…囮にして…。

「…ねぇ、どういうことなの!?」

「…ん? ああ……」

 いや…まてよ……。じゃあ、ここまで仕組んだって事か…。いや、いや…それにしては運任せっていうか…。でも、偶然にしては出来すぎてる気はするし…。

「…ねぇ、教えてってばっ!」

「…ん? ああ……。わっ、わかったから、揺らすなって!」

「…早く〜!」

 こっ、こいつ…本当に死んでるんだよな……。

 アリスは服を引っ張ってガクガクと僕を揺らしたが、説明を始めるとピタッと動きを止めた。

「つまり…犯人は…」

「…犯人は……」

「………俺だ…!」

「……バカにしてる?」

「しっ、してない…! 本当に俺なんだ…。まあ…正確に言えば…前世の俺達が魂を改造したんだよ…。力を発動させない為に…。…そうだろ…ステータス?」

「はい…。その通りです…」

「…どういうこと?」

「つまり……」

 つまりはこういう事だ…。この世界を改変したのは勇者だ…。なら、僕の世界を魔法の使えない世界に変えたのは誰だ…? そいつがこの世界の勇者でないとしたら………。

 

「えっと……。…つまり…アルのご先祖様ってこと?」

「…ちっ、ちがうっ! ……はっ、話…聞いてたか?」

「聞いてたわよ!」

「ご先祖様じゃなくって…俺達の前世だ…!」

「…どっちでもいいじゃない……」

「……」

 ……まっ…まあ…いいか…。

「でも…なんでそんな事したの? なんのメリットもないのに…。危ないだけじゃない…」

「僕の世界を魔法の使えないようにした正確な理由はわからない…。でも…僕の魂を改造したメリットならある…。デメリットがメリットなんだ……」

「余計…訳わかんないだけど…」

「ええっとだな…。だから……」

 

 それは…世界の理を変えてしまったからだ…。僕の世界は魔法が使えなくなってしまった…。でも…例外がいる…例外になりうるものがいる…。それは…僕の世界を改変した魂の持ち主だ…。ここからは予想だが…魂の持ち主が転生してしまえば、将来…大きな災いをもたらすかもしれない…そう考えたはずだ…。だから…力を封じた…。前世の僕達が神の魂と悪魔の魂を部分的に入れ替えて、この空間を作りだし…その力をお互いに無効化する為に行ったって事だ…。


「むっ、難しい…。…でも…やっとわかったわ〜。だから、奴らにアルの事もこの空間のこともバレなかったのね…」

「……いや…バレてたさ…。少なくともこの空間のことは……」

「…えっ? そっ、そんなはずないでしょ…。だったらそのままにしておく…。そっ、そっかー…! …わかってても手出しできなかったのね!」

「半分正解…ってとこかな…」

「…半分?」

「……アリスは魔法のない世界って信じる?」

「アルの世界の事…?」

「…まあ…そうだな……」

「うーん…。見た事はないけど…アルがいうなら信じるよ…。ドワーフの国の事もあるし…」

「…本当にそうかな?」

 僕は車の模型と小さな板を魔法で作り、アリスに手渡した。

「…なにに見える? まあ…偽物なんだけど……」

「なにって…。こっちは馬車かな…。こっちはただの板みたい…」

「例えば…こいつが勝手に走り出したらどう思う?」

「魔法でしょ……」

「なら…この板みたいなのが…世界中の皆と繋がってるとしたら…?」

「魔法でしょ……?」

「違う…。魔法じゃない…」

「なっ、なんでよ! 絶対に魔法じゃない!」

「なら…これはどうだ…?」

 僕は僕の世界についてアリスに少しだけ説明をした。アリスの頭から!マークと?マークが湧き上がっていた。


 

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