第281話
「…絶対に魔法よ!」
「だっ、だから…魔法じゃないんだって…」
「なっ、なら…こういう事ね…! 魔法って言葉をなくしただけで…実際にはあったのよ…」
「……それになんの意味があるんだ?」
「…そんなの知らないわよ! …もういいわ……。…で…魔法だけど…。…ん? 魔法じゃないけど…魔法みたいだから、奴等は気づかなかったってことが言いたいのね」
「いや…そうじゃなくって…」
「…そうじゃない?」
「そもそも今までの話は…まっ…まあ…おまけみたいな話で…。意味のない話というか…」
アリスは車の模型を僕の頬に押し付けながら、文句を言ってきた。
「おっ、おまけみたいな意味のない話をこんな長々と説明したの!?」
「アッ、アリスが聞くからだろ! やっ、やめ…! 痛いから離せって…。続き…話すから…」
「もう…!」
「えっと…だからな…」
恐らく奴は僕の記憶を覗いて…若しくは洗脳して僕の世界の事を知った。もしかしたら、魔法が使えない世界だと知ったのかもしれない…。でも、それを想像する事ができない…。アリスと同じだ…。魔法としか思えない…。ドワーフの国を想像してしまう…。魔法が使えない魔法が使える世界を…。
…っとまあ…色々と深く考えてみたけど…ほぼここまでは無駄な予想だろう……。なぜなら…そこは奴等にとっても…僕にとってもどうでもいい…。問題は…そこじゃない…。僕の魂の構造を知り、悪魔を復活させることが可能かどうかだからだ…。
「…それで…さっきの半分正解ってどういう意味なの?」
「ああ…。わかっていても、結果としては手出しできていなかった…が正解かな…」
「…なにかされたってこと?」
「ああ…。やられたさ…。でも…それはハズレだった…」
「…ハズレ?」
「それはな…奴等が間違った二つの答えにいきついたからだ…」
「…間違った答え?」
一つ目の答えは勇者やポンコツ女神がもってる神の力……。これで僕の事を細工したと思ったんだろう…。まあ…普通はそう考える…。ただ…弱すぎた…。警戒に値しない力というべきだろう…。そう…思ってしまった…。だから…ここまで放置された。でも…そうじゃなかった…。警戒に値する力だと思われてしまった。二つ目の答えは……。
「ヘイムダル…。あいつを囮にして奴等に勘違いさせたってことか…。…お前が仕掛けたのか、ステータス?」
「はい…。私は…力を最低限まで低下させて…その時を待っていました……」
これでなんとなくはわかってきた…。でも…不思議だな…。…アリスがなんで俺達の世界の神様の魂を持ってたんだ? …ポンコツ女神が間違えた? まあ…可能性は十分にあるか…。それよりも…。
「ステータス…。…もし…アリスがここにこなかったら…どうするつもりだった?」
「……」
「…こう聞いた方がいいか? アリスをここに呼ぶ為に奴等に攻撃をさせたんじゃないのかって……」
「……」
「ステータス…。そうだとしたら…俺はお前を許さない…!」
「……想像以上に貴方の力は恐ろしいものでした。一度低下させた力を元に戻す為に、アリスさんに影響を与えてしまったのかも知れません…。アリスさんの中にあった反転する力を手に入れる為に…」
「……」
「ですが、私には後悔はありません…。もし…自体が更に悪化した場合…躊躇なくアリスさんを取り込んでいたでしょう…」
「お前っ!」
僕が飛びかかろうとしたら、アリスにガッチリと腕を掴まれてしまった。
「アル…ストップ!」
「邪魔するなっ!」
「振り出しに戻さないでよ!」
「…わかったよ」
「アル…聞いて…。もう…大体…事情はわかったよね…。だから…アルは元の世界に帰って…。これが本当に最後のチャンスなんだよ…」
「アリス…ステータスに操られてるんじゃ…」
「私は操られてなんかない! この世界を救える方法が本当にあるなら知りたいよ…。でも…ないんだよ…。そんな方法…。……ステータス…あの剣を出して…」
アリスがステータスに頼むと空から白い輝きを放ちながら、神様から貰った剣が降りてきた。
「これは…」
「これで…アルは元の世界に戻って…。私達の事を忘れて…普通の生活に戻れるんだよ…」
「なっ、なにいってるんだよ…。俺は…皆を…」
「ステータスが言ってたの…。もし…アルがこの世界で死んだら…力のバランスが崩れて…アルの世界が消えちゃうかもしれないって…」
「……」
「…それに…アルが帰る最後のチャンスだって聞いたら…もう何も言えないよ…。アルにはいなかったの…。大事な人…」
「……」
「…時間はあるから……。…もう一回だけ考えてみて……」
アリスは白い段差に座り下を向いた。僕は気まずくて何も言えずに精霊達の入ったポットの前に移動して一人で座って考えてみた。家族…友達…彼女…はいなかった気がするけど…、勝ち目のない戦いに本当に行くべきか…。そして…もう一つ考えた。勝ち目のない戦いを勝ち目のある戦いに帰る方法を…。
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