第279話

「……えっ、えっと…そんなに気にしなくてもいいと思うよ…。なっ、なんか…ごめんね…。…私のせいで……」

「…バカ言うな……。…全部…俺が悪いんだ……。お前のせいなんかじゃ…」

「それは違うよ…。…言ったでしょ? アルは悪くないって……」

「…なんで…それを……。…アッ、アリス…なのか? 今…ステータスだって……」

「…うーん……。…なんていうか…その…複雑な状況というか……」

「ほっ、本当にアリスなんだな…!?」

「…たっ、多分……。…ちょっ、ちょっと!?」

「なんで…あんな無茶したんだよ…」

「その…体が勝手に……」

「…ごめん……。本当に…ごめんな……」

 僕はアリスを抱き寄せ涙を流しながら、ひたすら謝り続けた。本当は怒っていたのかもしれない…。恨んでいたのかもしれない…。でも、その時の僕はアリスの顔を何度見ようとしても、涙が邪魔をして見えなかった。


「アル…もういいって…」

「でも…」

「…もういいの! 私がいいって言うんだから、この話は終わり…!」

「でも…」

「アル…しつこいよ…」

「そうじゃなくって……。…さっきのはどういうことだったんだ?」

「さっきの…?」

「…アリスがステータスだって言ってただろ…? あれは一体……」

「それは…」

 僕がアリスの返事を待っていると、青い光が目に入り隣を見た。そこには、いつも見ていた青色の画面が現れた。

「…終わったようですね……。…話を進めたいのですが…そろそろ宜しいですか?」

「ステータス…。…どういうことなんだ……。説明しろ……」

「私はアリスさんと話せないとは言っていませんが…」

「そっ、そうじゃなくって…!」

「そうでしたか…。泣くほど怒っていたのかと思いましたが、そういうわけではなかったようですね…。では…説明に入ります…」

「泣くほどって…。…もういい……。早く説明してくれ…!」

「まず、貴方の体の状態についてです…」

「…俺の体? そうじゃなくって…」

「現在、貴方の体は仮死状態となり、魂との分離が進み始めています…」

 なぜかステータスは関係のない話を始めたので、僕はすぐに話を遮りアリスの話にもどそうとしたが、あまりにも気にやる事を言い出したので止めるに止めれなくなってしまった。

「おい…そんな話がききたいわけじゃ…! ……何の話だ?」

「…貴方の話です……。このままなにもしなければ、貴方の体は消滅してしまうでしょう…。そして、移し終わってしまえば最後…、貴方の魂…精神…全てを飲み込み復活を遂げます…。貴方ではない…存在として…」

「……」

「ですが、心配はありません…。貴方が直前で発動したラタトスクのお陰で体感時間は限りなく無限に近い状態になりました…。これで十分な時間を確保できます…。かなり危険な賭けでしたが、待っていて正解だったようですね…。アリスさんのお陰でもありますが…」

「…アリスのお陰?」

「……はい…」

 僕はステータスの言っていることを整理しながら話を聞いていたが、ステータスは肝心な所を言わなかった。

「……ステータス…」

「…はい……」

「…はぐらかしてるわけじゃないよな?」

「…アリスさんのことでしょうか?」

「ああ…」

「…問題はありません……。貴方には影響がないようにする事は可能です…」

「…ステータス……。二度も言わすな…」

「そうですね…。単刀直入に言いましょう…。…アリスさんを分離した後、貴方には元の世界に戻ってもらいます」

「…なに!?」

「……」

 僕はなぜ急にそんな事を言い出したのかわからなかったが、それ以上にここまで協力してくれたステータスがそんな事を言ってきたので驚いた。

「…ステータス、説明しろ! 分離って…引き離すって意味だろ…。…帰れって…どういうことなんだ!?」

「まっ、まって…!」

「…アリス、離せ!」

「ステータスは悪くないの…。私がお願いしたの…」

「……アリスが…?」

「…そう……」

 僕はステータスに思いっきり文句を言って、殴れるなら殴ろうとした。だけど…そんな顔で言われたら、僕は拳を降ろさずにはいられなかった。僕は現状を整理する為、段差に座って考えることにした。

「……」

「…アル……」

「…………」

「…あの……」

「………アリス……」

「…ごめん……」

 アリスは下を向いて元気をなくしていた。

「別に怒ってるわけじゃない…。混乱してるだけだ…。…少し説明してくれないか? 今のこの現状を…」

「…私が? ステータスに聞いたほうが……」

「…あいつは回りくどい言い方をするから、アリスに聞いてからでいい……。…まず…なんでここにいるんだ?」

「それは…」

 アリスは説明をする度に僕はさらに混乱していき、こんがらがって解けない糸のようなむず痒さを感じていた。


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