第277話
〈ディナイアルグローリー…。これは存在するもの全てを夢へと返す…。破滅の力…〉
……これが…………。
〈そうだ…。お前達は本来生まれるはずはなかった…。私の力が神の力と融合し…生まれただけの存在…。想像と偶然の産物なのだ…〉
………そういうことなのか……。僕達は………。
天地創造する力により悪魔は封じられ、天地創生する力により神を封じた。引き分けではない…。この時点で神の勝利は確定していた。神には再生する力があったのだ…。あとはゆっくりでいい…。十分に回復した後に封印を解き、トドメを刺すだけとなった。そう…これで、神と悪魔との長い戦いは終わったかに見えた…。
だが、終わりではなかった…。こいつはその封印を壊そうとしたのだ。全てを破壊する力で…。しかし、神もバカではない。その可能性の高い未来を予知し、対策を施していた。神の力は二重にかかっていたのだ。物理的に封じただけでなく、破壊できないよう…力すら発動させないように……。
それが悲劇を生んだ…。僕達を生んでしまったのだ…。破壊と再生…。創造と創生…。反転する力…。
僕達は本来…この星を破壊するように発動された力だった…。僕達は偶然にも書き換えられた…。意思を持つ、創造された生物として創生されてしまったのだ…。
だから…俺達に元いた場所に戻れってことか…。ふざけやがって…! …お前も奴と同じってことか!
〈…何を言っている? 私はお前の願いを叶えようとしているだけだ…〉
…俺の願い? …違う……! 俺はそんな力なんていらない…。俺は皆を救いたいだけなんだ…。
〈救いたい……? …お前に救えるのか?〉
それは……。…わかってるっ……!
〈いや…わかってない…。…力を破棄し、生き返ることぐらいはできるだろう…。ただ、それで終わりだ…。お前にはなにもできない…。全てを救うことなど不可能だ…〉
くっ…! そんなのわかってるって言ってるだろ…! 現時点で対抗できるのはディナイアルグローリーだけだ…。それが…こんなスキルだって思わなかった…。それでも…それでも…それを制御できないと意味がないってことくらいはわかってる…。奴らを倒して…残りの皆だけでも…助けないといけないんだ…!
〈ならば………。……ん? ………いや…そうか……。そういうことか……。なるほど……。どうやら…勘違いをしていたようだ………。だとすれば…他のプランを考えなければならんな…〉
……おい………。……ちょっと…まて………。
〈……どうした?〉
流してしまいそうだったが、僕はその勘違いって言葉に引っかかった。少しだけ冷静になって考えてみると、こいつになにかされたってわけじゃない…。話している限り、今の所は悪意を感じない…。だとしたら……じゃあ…なんで世界を滅ぼそうとするようなことを言ったんだ? 僕は皆を救いたいと思っているのに…。……いや…そうか………。僕はさっき…皆が生きてる幸せな世界を願った…。救いたいのではなく、どんな形でも幸せに生きているという形をこいつは叶えようとしたのか…。なら、全部…僕の中に取り込めばそれに近いことができるってことなのか……。
〈……それにするのか?〉
いや…そんなことは願わない…。その前に一つ聞きたい…。……お前の目的はなんなんだ?
〈さっきから言っているだろう…。お前の願いを叶えようとしているだけだと…〉
…つまり…なにかヒントをくれるってことか? 奴らを倒して世界を救う方法の…?
〈…そうだ……〉
僕はこいつの行動に疑問を持った。本当に信じていいものなのかと…。
…お前は…俺を恨んでるんじゃないのか? 俺達人間を…。少なくともこっちの世界じゃ…俺達はお前を裏切って神に協力したんだ…。お前が助ける必要もないだろ…?
〈…そうかもしれんな……〉
なら…なんで…。
〈……我らは完全な生命体だった…。少なくともお前たちよりは………〉
……。
〈だが、そんな我らが不完全なはずのお前達に負けてしまった…。二度もな…。…なぜかわかるか?〉
いや……。
〈お前達は不完全だからだ…。不完全だからこそ我らを倒しえたのだ…。…そして、我らは完全な死から解き放たれ、不完全な生を手に入れた……。ならば…それを見届ける必要がある…。我らの進化の行く先を…〉
………わかったよ…。
僕はなんの根拠もないが、こいつが本心から言っているのが分かった。僕は、ほんの少しだけこいつを信用してみることにした。
でも、本当に助言をする為にさっきから話しているんだとしたら…。こいつ…さっき…何を言おうとしたんだ?
〈ああ…。大したことではない…。お前の話からすると取り込んだ者まで救いたいのかと思っていた…〉
……すっ、救えるのか!?
〈いや、無理だ……〉
…そうか……。
〈だが、それに準ずる形はある…〉
……どういう意味だ?
〈それは……〉
〈…聞く必要はありません……!〉
アリスからもらったペンダントから、どこかで聞いたことのある声が聞こえてきた。真っ白にそれは輝き、僕を包み込みだした。
「…えっ!? なっ、なんだ…!?」
…急に体が動かせるようになった…。それに声もだせたぞ…。なにが起きてるんだ…?
〈……うるさいやつだ…〉
〈…貴方には渡しません……〉
〈はははははっ…。……お前が使う気か?〉
〈…そんなことはしません! 彼には…生きてもらいたいのです…。少なくとも…貴方に叶える願いはありません! …消えなさい!〉
〈いいだろう…。だが…忘れるな…。最後に選ぶのはこいつだと言う事を……〉
「おっ、おい! 一体、なにが……!?」
僕は訳のわからないまま、白い輝きに完全に包まれた。そして、僕は邂逅する事になる…。彼女と……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます