第262話
「通らない…。…やった…やったぞ! …ノス…ク?」
「不思議だ…水の気持ちがわかる…」
ノスクは青く輝く剣と共に水の中に倒れた。僕はラタトスクを解除し、駆け寄ってリカバリーをすぐにかけた。
「大丈夫か!?」
「うん…。大丈夫…。それよりなにかいってる…。僕達をみろって…」
「…ん? どういう意味…。…っ! 眩しい…!」
ノスクの剣が青く光っているのかと思っていると、そうではなかった。横を向くと一箇所だけ水の色が青く光り輝いていた。
「ラタトスクの目が光ってる…」
「あそこに勇者の祭壇があるって…」
「あそこに!?」
僕はノスクを背負い青い剣を持って移動すると、そこはただ光っているだけで特にそれ以外はなにもなかった。
「でも、ここじゃないって…いってる…。それしか言えないみたいだけど…」
「…どういうことだ?」
「ヒントしか言えないみたいなんだけど…こう言ってる……。試練を超えし者、揺るがぬ心で真実をみよ…。二つの剣が重なりし時、道は開かれん…。頭を垂れ、剣を捨てよ…。さすれば、青き眼に歩むことが許される。…僕にはわからないや……」
「よし…。ノスクが頑張ってくれたんだ…。…あとは俺に任せろ!」
「うん…」
でも…揺るがぬ心…揺るがぬ心ってなんだ…。揺るがぬ心…。動じない…。動じないということは動くな…?
僕は動きを止めて辺りをみたが特に変化はなく、僕の顔から水面に雫が落ちて波紋ができて広がった。僕は水面に映った歪んだ顔を見て一つ目の謎が解けた。
「…そうか……。ここじゃない…」
僕は水の中からいったん出て、静かに入口側から水面をみた。すると、水面の波紋は消えていき世界地図が水面に映った。
「…わかったの?」
「もう少しだ…」
あとは二つの剣が交わりし時…。二つの青い剣をもってこいとかだったら詰みだけど…。これはそういう意味じゃないと思う…。だとしたら…これは剣を水中に映すのか? いやいや…そうじゃない…。なるほど…。それじゃあ、三つになるってことか…。
僕は振り向いて入口に描かれていたネコの持っている剣をみながら移動した。
「…この絵がどうかしたの?」
「こいつだ…。この剣がもう一つの剣なんだ…」
「どういうこと?」
「この絵は躍動感のある絵に見えたけどそうじゃない…。こいつは見る場所によって見え方が違うんだ…」
「ほっ、ほんとだ…」
「この剣と同じように見える箇所…。縦と横の比率…傘の角度………。ここだ…。この場所が剣が交わりし時…。これで…道は開かれたけど…まだ、歩むことは許されてない…。頭を垂れ、剣を捨てよ…」
「僕がお辞儀すればいいの?」
「いや…多分…地面になにか…」
僕は自分が立っている床をみると、小さな穴が空いていた。ひと目見ただけではただのかけた床にしか見えないが、よく見ると床に等間隔でその穴は空いていた。
「…なにかあった…?」
「多分…これだ……」
僕はそこに青い剣を突き刺して手を離した。だが、待っていても特に装置が動くような音はしなかった。
「…なにも起きないね……」
…間違ってる? いや…。
「…青き眼に歩むことが許される……。これを解かないといけないんだ……」
「…どういうことなんだろう……。青き眼を持つ者って…」
「ノスク、間違えてる…。眼を持つ者じゃない…。青き眼に許されるんだ」
「…同じじゃない?」
「いや、そうでもない…。つまり、俺でも見れるってことだ…。つまり…第三者…。いや、者ではないな…」
「…えっ?」
「水面に映った地図から祭壇への位置を読み取るとしたら、考えられることは…あと高さだけなんだ…」
「…もしかして、そこなの? 柄についてる青い宝石のところ…」
「うん…。…ノスク、多分…正解だ! えっと…ここは…」
僕は剣の柄についた宝石からラタトスクの瞳を覗き込んだ。そこには信じられない場所が映し出されていた。
あれ…ここは…。
「僕にもみせて…!」
「ああ…」
「なるほど…ここか…。…あれ? ねぇ…ここって…」
そう…。そこは…さっきまで僕らがいた場所…魔王城だった。
「魔王城…?」
そんなバカな…? あんなところに……。
「…正解だって……。なんか…拍手してる…気がする…。名探偵みたいだって…」
「…ああっー!!!」
まっ、まさか…あの地下の…。
「…どっ、どうかしたの!?」
「名探偵じゃない…。あんなわかりやすいヒントがあったのに気が付かなかった…。俺がもっと早く気づいてれば、ノスクが傷つく必要なんかなかったのに…。ごめん…」
「いいよ…謝らなくて…。アルの役に立ってよかったよ…」
「うーん…」
「僕もなんかパワーアップした気がするんだ。結構、疲れちゃったけど…。……魔王城にいくんだよね?」
「そうだな…」
とりあえず、一回帰って皆に報告しないと…。…ん?
「じゃあ…いくね…」
「ノスク…! ちがっ…」
僕の足元に青く光る水たまりができて、ズブズブと入っていった。僕とノスクは再び魔王城に空間移動したのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます