第244話

「みんな、無事でよかったよ…」

「アルも無事みたいね!」

「なんとかな…」

 皆と合流して話を聞くと、ノスクが大活躍してゾンビモンスターをバッタバッタと倒していったらしい。流石、剣に選ばれしものというところなのだろう。

 

「すごいじゃないか、ノスク」

「これで、僕もパラディンに一歩近づいたにゃ!」

「よくやったって、ルナにも俺から伝えとくよ」

「しっかり伝えといてよ…。これで僕の補助金が…。…って、冗談いってる場合じゃないか…。でも、不思議だにゃ…。魔法が使えるなんて…」

「…ん? …エリックが解いたんじゃないのか?」

 当たり前のように使えるから、エリックがなにかしたのかと思っていたんだけど…。

「いや、おれはなにもしてない…。なら、あいつが…」

「いや、そういうわけでもなさそうだ…」

 シオンさんは飛空艇から降りてきた。少し疲れた様子だった。

「どういう意味?」

「ドワーフ達の無事を確認しにいったんだが…」

「おっ、おい! みんなは無事なのか!?」

「大丈夫だ…。みんな無事だったよ…。ドワーフ達は異常が起きたことに気付くと、すぐにシェルターに隠れたらしい。前回の教訓だそうだ…。流石、転んでもタタでは起きないな…」

「そうか…。よかった…」

「シオンさん、さっきの意味は?」

「ドワーフもエリックの剣を監視できるようにしていたそうなんだが、特に異常はなかったそうだ…。私も一つだけ近くのやつを確認しにいったんだが、この目で見る限り間違いなくMPドレインは発動していた…」

「…ってことは、どういう意味?」

「私達は通常の発動形式と違う方法で魔法を使っているのかもしれない…」

「なるほどな…。そういうことなら、合点がいくな…」

 エリックは納得していたようだが、僕はシオンさんのいっている意味がよくわからなかった。

「シオンさん、結局どういうことなの?」

「つまりさ、君の魔石からMPをもらってるってことになる…。もしかすると、私達はそのペンダントを通じてつながってるのかもしれない…」

「なっ、なるほど…」

 なんとなくはわかった…気がする…。

「まあ、話は船の中でしよう…。時間もないようだしな…」

「そうだね…」

 僕達が飛空艇にのろうとすると、急に後ろのハッチが開いた。

 …ん? …なんで、勝手に開いたんだ? …あれ? …誰かいる?

「うっ…」

 ハッチが開くと、驚くべき人物が目の前に現れた。僕はすぐさま駆け寄り抱きかかえた。

「リアヌス!?」

「なぜ…君がここに…。いや、ここはどこだ…。うっ…。夢でも見ているのか…」

 ヨロヨロとなりリアヌスは倒れた。僕は大きな傷跡が胸に刻まれているのがみえた。

「おっ、おい!? 気を失ったみたいだ…。…って、エリック、なにしてるんだ!」

 エリックはハンマーを手に取り、シオンさんに向けていた。

「仲間を疑いたくはないけどな…。どっちかが偽物って可能性もあるだろ? まあ、本物って可能性も…」

「エリック!」

「……悪い」

 シオンさんは鞘に入れたまま剣を地面に置いた。

「エリックが疑いたくなるのも充分わかる…。だが、私はやってない…」

「エリック…。まず、リアヌスはリカバリーをかける限り本物だ…」

 僕はリアヌスにリカバリーをかけた。内部がかなり、傷ついているようだった。

「なら…」

「でも、リアヌスもエリックみたいに連れてこられたんだ…。シオンさんは犯人じゃない…」

「…なぜそういえる?」

「リアヌスの傷をみてくれ…」

「…傷?」

「まるで、火傷みたいな跡があるだろ? これは、きっと火の魔法だ…。シオンさんは火の魔法は使えない…」

「あのな…補助魔法器具を使えばそんなこと…」

「そんな補助魔法器具で、リアヌスにはダメージは与えられないよ…。リアヌスは火の精霊の力を持ってるんだ…」

「…リアヌスよりも強いってことか?」

「ああ…。この大きな傷…。見覚えがあるんだ…。剣による傷じゃない…。これは爪跡だよ…。あいつの…」

「…あいつ?」

 そう…やつだ…。

「……」

「おっ、おい…」

「とりあえず、応急処置は終わったから、リアヌスを飛空艇に運んでくれ…。ノスク、シャル、アリス、リアヌスを飛空艇の中に…。あと、エリックも手伝ってあげてくれ…。重たいから気をつけて…」

「うん…」

「りょうかい…」

「わかったにゃ…」

「仕方ねえ…。大将を信じるか…。起きればわかる事だしな…」

 シオンさんと僕を残して、みんなは船の中に入っていった。

「シオンさん、悪いけど…」

「ああ…。リカバリーをかけてくれ」

「ごめん…」

「謝ることじゃないさ…。アルがいて助かったよ…」

 シオンさんにリカバリーをかけたが、やはり本物だった。僕達は船長室に行くと、エリックが操縦席に座っていた。

 

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