第228話
「……」
なにを優先すればいい…。皆を助けにいけばいいのか? それとも、奴を倒しにいけばいいのか?
「アル、どうしたの!? 助けにいくんじゃないの!?」
「ちょっ、ちょっと待ってくれ…。少し整理したいんだ…」
僕はヒビの入った鎖を眺めた。僕はそれをみて次の行動に悩んでいた。
そもそも奴は倒せるのか? 不死身の化物なのに…。この鎖を解いたら勝てるのか?
僕は先程の戦いで悪魔のスキルは使わなかった。それは鎖の存在を思い出していなかったとか、そういう理由ではない。僕は前のサーティスの戦いでわかったことがある。全身を回復させる青いオーラとリカバリーを発動しながら悪魔のスキルを発動すると、記憶が消えていなかったのだ。
「猫ちゃん…。ちょっと、待ってあげよう…」
僕は奴との戦いでも同じようにオーラを混ぜ合わせて発動しようとしたが、うまく発動できなかった…。それでも、そんな事を気にせずに鎖を外していたら結果が違っていたのかもしれない…。でも、嫌な予感がした…。もし、あのままスキルを使っていたら皆の存在を忘れてしまう…。そんな気がしたのだ…。
「猫ちゃんじゃなくて、ノスクだよ! ったく、もう…。…大丈夫だよ、アル! この姿、みてよ。強そうでしょ? …って、あれっ!? 元に戻った!?」
「みたいだな…」
ノスクとシオンさんは急に元の姿に戻った。
もしかすると、他の皆も元の姿に戻ってるかもしれない…。なんとなくだけど二人の力が弱まった気がする…。くそっ…。この選択を恐らく間違えれば全て終わる。なにもかも…。でも…これしかないか。
「ああっ、ごめん…。…そうだなっ! 助けにいこう!」
悩んでる場合じゃない…。これでいい…。これでいいはずだ…!
「よし、いくにゃ!」
「…アル?」
「…ん?」
「…本当にそれでいいんだな?」
シオンさんは僕の目をじっと見た。
「……ああっ!」
「わかった…。…なら、少し話がある。君が話を聞いたあとに決めてくれ…。私は勇者にとあるスキルをもらったんだ…」
「勇者に!?」
僕はシオンさんの言葉に驚いた。
「スキル…サンゲタル…。効果はわからないが…。勇者は真実を見つけろと言っていた。…この話、信じるかい?」
「ああ…」
「もしかしたら、私は敵の気配を感じとってるのかもしれない…。見えない世界の中で色のついた気配の強いとこと弱いとこがあるんだが…。…どちらから行くべきだと思う? まあ、君の行きたいとこに行くというのもありだ…」
うーん…。わからないな…。ゲームだと強いとこにいくと、強いやつがいる気がするけど…。いや、もう一つあったな…。
「シオンさん…。俺は勇者を信じるよ…。それが崩壊しない未来へ行くヒントなんだと思う…。…ちなみに段々とその気配って大きくなってる?」
「ああ…」
なるほど…。時間差で強くなっていってるのか…。
「なら、気配の大きなところからいこう。どうせ全部倒さないといけないし…。なるべく弱いうちに倒したい」
「わかった。…なら、エルフの王国だ」
僕達はノスクの空間を飛び越える魔法で、エルフの王国に向かった。
「…あれ? …こっちも問題ないのか?」
「…みたいだね。…でも、とりあえずよかったにゃ!」
「だな…。…って、どうしたの!? シオンさん?」
僕はエルフの王国につくと、なにも起きてないことに一安心した。しかし、シオンさんはただ事ではないような顔をして空を見ていた。僕達には見えない何かを見ているようだった。
「なっ、なんだ、これは…!? 巨大な…鎖が見える…」
「…鎖?」
「…見えないのか? 空の方に続いてるこの緑色の鎖が…。…ん? あれは、アリス姫!?」
「どっ、どこに、アリスが!?」
「あそこだ!」
シオンさんが指差す方を見ると、なにか二つの人間らしきものが空中で戦っているようだった。
「…ん? …あそこか! …シオンさん! 先にいってるから!」
「おっ、おい!」
…フレースヴェルグ発動!
僕は青いオーラとリカバリーを発動して空中へ飛び立った。一応、発動はできたようだったが、青いオーラとリカバリーの同時発動…。心無しか混ざりあった緑色のオーラは薄くなっているように感じた。やはり、前より効果は落ちているかもしれない。
「…アリス、助けにきたぞ!」
僕は剣に風の魔法をチャージして、敵の攻撃を吹き飛ばした。僕は疲れきったアリスの目の前に立った。
「…アル!? たっ、助かったわ…。あっ、あいつに気をつけて…」
「…お前は!?」
「久しぶりね…」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます