第229話
そこには僕が倒したはずの女の魔人がいた。
「まさか、貴方が私を倒したなんてね…。まんまと騙されたわ…」
「…なんで、お前が生きてる?」
「魔王様に復活してもらったの…。でも、貴方には感謝してるわ…。こんなに素晴らしい力をもらったんだから…」
「……」
なるほどな…。
僕はスッと手を降ろして剣を握り、風の魔法をチャージした。
「…風の魔法かしら?」
「…っ!」
バレてるか…。まあいい…。防げなければ同じだ。
「ふっ…。正解みたいね…。いい事教えてあげるわ…。私に風の魔法は効かない…。貴方だけじゃないのよ…。使えるのは…」
「…なんの話だ?」
「…フレースヴェルグ…発動!」
「なにっ!?」
彼女の周りに風が集まり、僕と同じように風の羽が生えた。
「最高ね…。この悪魔の力…。…さぁ、今度は貴方が死ぬ番よ! 私を精一杯楽しませなさい! くっくく…。はははははっ…」
「…アリス、逃げるぞ!」
僕は即座に剣を振り抜いた。嵐のような風の鋭い刃は女の魔人へ当たると、何事もなかったようにスッと消えた。僕はそれを見て顔面蒼白になり、アリスの手を握り空高く逃げた。
まずい、まずい、まずい…。なんで、あいつが使えるんだ!
「アル、追ってくる…!」
「くっ…!」
僕は風の拘束魔法を発動すると、女の魔人も同時に拘束魔法を発動した。どうやら奴の魔法のほうが強いようで、僕の拘束魔法を吸収して更に大きくなった。
「アッ、アル! もっと早く!」
「もうダメだ! これ以上は…。くそっ…!」
…まずい! 捕まる!
僕はできるかわからないが、魔法で迎撃することにした。すると、魔法を発動していないのに目の前が青く輝きシオンさんとノスクが現れた。
「ふぅ…。やっとついた…にゃああああ!?」
「捕まったか…。まあ、こっちでいいか…」
「ノスク! シオンさん!」
二人はなんとか逃げようとしているようだったが、風の拘束魔法からは逃げられないようだった。
「…あら? 変なのが引っ掛かったわね…。貴方達は…。まぁいい…。…死になさい!」
「…ノスク! もう一回、空間移動だ!」
「そっ、そうだにゃ!」
ノスクとシオンさんは風の拘束魔法から空間移動して、拘束魔法から抜け出した。そして、シオンさん達を捕まえていた風の拘束魔法は弾け飛んだ。数秒遅かったら、死んでいたかもしれない。
「なるほど…。厄介な奴を連れてきたわね…」
「アル、私達が拘束魔法を引き受ける。その間に奴を倒せ!」
ノスクは驚いた声をだして、目を丸くしていた。
「ええっ!? いっ、今の…? …またやるの?」
「すぐに逃げれば大丈夫さ…。…とりあえずは何度も使えるんだろ?」
「うっ、うん…。さっきから、魔力が全然減らないんだ…。よっ、よし…。わかったよ…。…僕、頑張る!」
「二人共…。…頼む!」
本当は止めたかったが、奴の拘束魔法を止める方法がない。僕は二人に任せることにした。
「…アル! …倒そう!」
「ああ…!」
「それで私を倒せると…。はははははっ…。なめてるわ…。少し後悔させてあげないとね…。武器を頂戴…。奴らをギタギタに切り裂けるものがいいわ…。ええ…。そう…。じゃあ、それでいい…。モデル…ダガー発動!」
「なにっ!?」
そんなことまでできるのか!?
僕は剣を持ったまま、風の両手剣を発動した。女の魔人はニタっと笑ったあと、高速で接近し攻撃してきた。僕はその風のダガーをなんとか必死にガードした。
「なかなかいいわね…」
「っ…!」
風のダガーなのに本当に実体を持っているような重さがあった。
「アルになにすんのよ!」
アリスは女の魔人の背後から短剣で刺そうとしたが、僕が体勢を崩された後に蹴り飛ばされた。
「うわっ…!」
「…あんたは邪魔よ!」
「きゃあ!」
「…アリス!」
僕は目の前にいる敵の目線をみた。女の魔人はダガーをみて不可思議な顔をしていた。
「なるほど…。でも、少し使い方が違うみたいね…。…こうかしらっ!」
女の魔人は突撃してきた。僕はもう一度ガードしたが、今度は女の魔人が持っているダガーが風を纏いだして体を斬り裂き始めた。
「っ…!」
「私の力は風の力を吸収して刃を作り出す…。この意味…わかるかしら?」
「くそっ…。…ならこれでどうだ!」
僕は少し離れダイヤの槍魔法をいくつも打ち込んだ。
「ふっ…。無駄なことを…」
見えない壁にそれがあたると、槍は粉々にされた。ダイヤの槍がだ。僕は冷や汗をかいた。
「……」
どうする…。これ…。
僕は一度だけ説得することにした。
「お前…魔王が…。いや、ウルが何をする気かわかってるのか? 世界を滅ぼすつもりなんだぞ!?」
「ええっ…。知ってるわ…」
「なら、なんで!」
「でも、私は別…。もう一つの世界に連れて行ってくれるから…」
「なんだと!? お前、まさか俺の世界に…!」
こいつは絶対に倒さないといけない…!
「…アル!」
アリスは隣に立った。
「まずい相手だな…」
「そうね…。じゃあ、二手に別れましょう…」
「…なにか考えがあるのか?」
「ないわよ…。でも、一撃を入れないと始まらないわ…。それに…」
「…それに?」
「もしかして、私達…。風の魔法が効きづらいんじゃないかしら?」
「…なに?」
女の魔人は笑っていた。
「正解よ…。だからといって、この私に勝てるとでも?」
「勝てるわよ! いくよ、アル!」
アリスは距離をとり、高速で飛び始めた。どうやら、動きで撹乱するようだ。
「あいつ…。いや…」
以外にいい作戦かもしれない。僕のスキルはスピードがのればのるほど攻撃力があがる。僕も距離をとり、高速で飛ぶことにした。そして、飛びながらステータスに話しかけた。
ステータス! 聞こえるか!
「はい…。聞こえます…」
風属性の弱点はなんだ? …ゲームみたいな弱点はないのか?
「わかりません…。ですが、風の発生源を封じれば勝機があるかもしれません…」
奴自身をってことね…。なら…あれか…。
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