第215話

「なっ、なぜ、お前がここにいる!?」

 なんだ…。サーティスの声が聞こえる…。戦わないと…。…ん? いや、俺…倒したよな…。

「サーティス、ご苦労様…」

 だれだ…こいつ…。

 聞いたことのない声が聞こえてきた気がした。

「おっ、お前は…私が…」

 なぜかサーティスは怯えているようだった。

「そう…。半分はね…。君にとあるとこに封印させた…」

「封印させた…だと…」

「でも、おかげで全てわかったよ。君は予定通り動いてくれる本当にいい人形だった…。心から礼を言う…。ありがとう…」

「ぎさまぁあああああ!」

 なんだ…これ…。

「僕も正直…わからないことばかりだったんだ…。君に七人集めさせたのも予知にしたがっただけで、まったく意味がわからなかった…。まさか、全員が精霊の所持者だったなんてね…」

「こっ、この体は私のものだぁああ!」

「君の体? 違う…。これは僕のものだ…。それに君ごときではこの器は扱えないよ…」

「ぎぃやぁああ! やめろぉお! 私に何をする!」

 サーティスらしき人物は悲鳴をあげたような気がした。

「サーティス…君の役目は終わったんだよ…。君はこの子を成長させる為に生まれてきたんだ…。あと一つで彼は僕と同じ完璧になれる…」

「…いやだぁああ!」

「……リカバリー」

 僕はベッドからパッと起き上がった。まだ、真夜中だった。

「はぁ…はぁ…」

 ひどい夢だったな…。くそっ…。もう一回、ねよ…。次こそはいい夢をみれますように…。

 

「ふぁあああ〜…。なかなかいい夢だった」

 僕は夢の中で皆と世界を旅して様々な冒険をしていた。なかなかいい夢だった。

「あれ…」

 そういえば、変な夢をみたようなきがするけど…。

 悪い夢だったのは覚えているが、なにを見たのかは思いだせなかった。まぁ、そんなことは思いださないほうがいいだろう。

「まっ、いいか…。下に降りよう…。っと、神様!?」

 神様は天井にプカプカと浮いていた。

「おはようございます。皆さん、起きて朝食を食べていますよ」

「そうか…。…ところで、その手に持っているのはなんだ?」

 神様はキレイな水色のヒモを持っていた。

「昨日はアリスさんと盛り上がりました。なんの話をしたか、気になっているみたいですね。それは、荷造りの時に使える縛り方講座のせつ…」

「神様は…朝食いらないんだよな…」

「め…。ごっほん…。じょっ、冗談ですよ! ホントは髪の縛り方講座です! 神様の髪の縛り方講座…。なんちゃって…」

「嘘だったら…。神様の分は食べて、なにも乗ってない皿を持ってくるからな」

「うっ、嘘ではないですから…」

「まっ…。アリスにあえばわかるか…。神様、着替えるから…。ちょっとあっちを向いててくれ」

 

 僕は起き上がりサッと服を着替えて、部屋をでようとした。

「あっ、あのっ…。肉と野菜のハーモニー定食でお願いします…。もしくは、黄金魚の遊泳定食で…。もしくはカラッとカラカラ定食を…」

 こいつ…メニュー名まで調べてきて…。ガッツリ食べる気だな…。

「…神様、やっぱ持ってくるの面倒くさいから一緒にいかないか?」

「いっ、いえっ…それでは…」

「もしかしたら…間違ってメニューを頼んじゃうかもしれないし…」

 神様はパッと地面に降りて僕の服を引っ張ってきた。

「まっ、間違ってしまうなら仕方ありませんね! もったいないですし!」

「間違わない可能性もあることを忘れるなよ…」

「だっ、大丈夫ですよ…。今回は本当になにもしてませんし…」

 

 部屋からでるとアリスがちょうどドアをノックしようとしていた。

「おっ、おはよう…」

「アリスか…。朝食、食べてるんじゃなかったのか?」

「私もさっきその子に起こされたのよ…。今、着替え終わったから食べにいこうと思ったんだけど…。寝ぼけてたからメニュー名を忘れちゃって…。聞きにきたの…」

 神様は知らんぷりをしていた。

「はっ、はて? なんのことでしょうか?」

 こいつ…保険をかけてやがったな…。

 僕はアリスと神様と共に一階に降りると、貴賓室に案内された。そこには大量の更に囲まれたシオンさんと、満足そうな顔をしたシャルが座っていた。

 

「シオンさん、おはよう…。…朝からすごいね」

「そっ、そんなことは…」

「…あれ? ノスクはきてないの?」

 まだ、起きてないのかな…。

「彼はウィンディーネに早朝、猫の国に強制送還されたよ…。君に伝言だ…。もう特訓はイヤだ。早く助けにきて…。だそうだが…」

「そっ、そう…。時間がある時にいってみようかな…」

 シオンさんとシャルは立ち上がり、僕の方に歩いてきた。

「じゃあ、私達は散歩にでも行ってくるよ。飛空艇の状態をみておきたいし…。そうだ、アル…。後でいいから氷の精霊を具現化してくれないか? さっきから君に頼んでくれって、耳元でうるさいんだ…」

「あっー!!」

 シオンさんがそういうと、なぜかアリスが大きな声をあげた。

「どっ、どうしたの?」

「ごっ、ごめん。なんでもない。ちょっと、忘れてたことがあって…」

 アリスは頭をかいて笑っていた。

「そっ、そっか…」

「じゃあ、そういうことで…」

 シオンさんとシャルは部屋をでていった。僕達は朝食を食べて貴賓室でくつろいでいた。

 

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