第199話

「…引き受けてくれるかな?」

「…引き受けましょう。ただし、条件があります。…私のお願いを聞いてもらえないでしょうか?」

「報酬か…。…いってみなさい」

「…いえ、やはり無事に脱出でてからにしましょう。今はそんな話をしている場合ではないですから…」

「…そうだな。では、指揮権は君に任せる…。頼んだぞ」

 私はウィンディーネと共に船の下に降りた。どうやら、私が進んだ後をついてくるらしい。

 

「…ねぇ、よかったの? あんな口約束で?」

「まぁ、信じるさ…。進もう…」

「信じるね…。でも、あんた…悪い事考えてるでしょ?」

「…どうしてそう思う?」

「ちょっと悪そうな顔してるもの…」

 ウィンディーネは私の方をみて少し笑っていた。

「ふっ…。まぁ、少しだけな…」

 私はそういった後、奥に進んでいった。奥には確かに手強い敵がいたが、私とウィンディーネの敵ではなかった。私達は順調に進んでいき、一週間が過ぎていた。

 

「はぁ…はぁ…。…ウィンディーネ、あとどれくらいだ?」

「あと、半分くらいね…」

「…予定より早くないか?」

「あんたが早すぎるのよ! 歩いて数カ月っていったでしょ! 後ろみてみなさいよ…。…全然追いついてないでしょ!? 全く、寝もしないで…。少し、休憩しなさい!」

 確かに少しつかれたな…。

「今の外での経過時間はどのくらいなんだ」

「うーん…。一日くらいかしら…。…あれ? なんか、急に時の流れが一瞬早くなったわ…。まぁ、それでも十分遅いんだけど…。…なんでだろう?」

「…そんなことがあるのか?」

 私は歩きながら尋ねると、ウィンディーネは腕を組んだ。かなり悩んでいるようだった。

「うーん…。うーん…。う〜ん…。考えられるとしたら…。もしかするとヘルにも時を遅くするの力があるかもしれないわね…」

「ここからでようとしてるってことか…」

「たぶんね…」 

 だとしたらまずいな…。

「急ごう…」

「ちょっ、ちょっと!?」

 …ん? なんだこの黒い床は…。嫌な予感がするな…。

 ランプで床を照らすと一面に黒い墨のようなものが広がっていた。あたりには敵はいないが、それはそれで妙な感じもしたので一旦進むことをやめることにした。

「ウィンディーネ…。静かに…後ろに戻るぞ…」

「えっ、ええ…」

 私は一度戦艦の中に戻ることにした。戦艦の中には少年が眠そうにアクビをしながら立っていた。

「シオンさん強すぎ…。俺の出番全然ないよ…」

「寝ていろっていっただろ? まったく…。少し…」

「シッ、シオンさん、どうしたの!?」

「ぐっ…」

 私はそこで意識を失い視界が真っ暗になってしまった。

 

「…ん? ここは…」

 私はベットから起き上がって周りをみると、そこは妙に可愛いものが飾ってある部屋だった。なんというか、とても私好みの部屋だった。

「こんにちは…。君がシオンだね?」

「…ルア君、どうしたんだ? 変な喋り方して…」

「……」

 …というか、ここはどこなんだ? …船の中か? こんなかわいい…。いや、戦いに不必要なものばかりおいた部屋があるなんておかしくないか? 

 私は立ち上がりあたりを歩くと信じられないものがあった。

「なっ、なんで、これがここに!?」

 それは撮ったことのない家族写真だった。

「ここは君の心の部屋だ…。それはあって、ないものだよ…」

 …心の部屋?

「ルア君、どうしたんだ? さっきから様子が…」

 少年は私を見透かすように見ていた。まるで、別人のようだ。

「私は勇者だ…」

「ゆっ、勇者って…」

「ただし、質問は受けつけない…。受けつけることができないというべきか…。なぜならあるものによって、すでに私は死んでいるだろうから…」

「おっ、おいっ…。…なんの話なんだ?」

「恐らく君は困惑しているだろう…。だが、アルという青年の言葉を思い出してほしい…」

「……」

 そういえば、アルは勇者にあったって言ってたな…。まさか、本当に…。

「ここからもう少し先で、最後のゲームが始まる…。その前に君にプレゼントをあげよう…。…どれがいい?」

「どっ、どれって…」

 少年は両手を広げたが、そこにはなにもなかった。私が困惑していると勇者となのる少年は話しだした。

「…と、こんなふうに本来なら選んでもらうつもりだったが、やはり難しいみたいだったのでね。私が選んでおいた…。受け取りなさい…」

 輝く何かを受け取ると体中が輝きだし、私の体は徐々に透けていった。

「おっ、おい! これは!?」

「スキル…サンゲタル…。これで真実をみつけなさい…」


 目が覚めるとそこは船室だった。どうやら、私はベットに寝かされていたようだ。

「…っ!」

 妙な夢だな…。さっきのは一体…。

「おっ、おい! 大丈夫か?」

「…君は?」

 声のする方をみると、そこには見知らぬ男が立っていた。

「俺だよ。隊長だ!」

「…隊長?」

 目をこすると先程の男は消え、ドワーフの隊長がそこには立っていた。

「……」

 …なんだ? …気のせいか?

「…あんた、倒れてたんだよ」

「…ん? …そういえば、ウィンディーネとルア君は?」

「それが…」

 

 

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