第198話

「わかった…。少し皆と話してくる…」

 ドワーフ達は各船の代表と話し合いをするとのことだった。ドワーフは私達を残して全員どこかに行ってしまった。

「でも、まぁ…大した時間稼ぎにはならないわよ…。術者が他の出口からだせばいいんだから…」

 確かに…。アルのことだからなにか考えているとは思うが…。

「ルア君…そのへんはなにかいってたかな?」

「うーん…。それならそれでいいっていってた」

「それでいいって…。…どういう意味だ? かなりのリスクがあったと思うんだが…」

「うん…。蛇が自由にだせるかどうか、どうしても知りたかったんだって…。それと…」

「…それと?」

 私が質問すると少年は腕を組んだ。

「なんだったかな…。なんかとんでもないこといってたんだけど…。忘れちゃった…」

「そっ、そうか…」

 まぁ、私は私のできることをするか…。

「なぁ、ウィンディーネ…」

「なに?」

「なんでこんなところに氷の精霊がいるんだ?」

 ウィンディーネは少年の上に座ってコーラを飲んでいた。

「ああ…。えっと…。確か…。昔にね…。そうそう…。思い出してきたわ…。神族の国の近くでこの蛇が大暴れしてたのよ。でも、なかなか強くってね…。どうしようかって、なったときに…」

「…ときに?」

「その時の魔王が勇者と手を組んで、これを内部から凍結しようってなったの…。まぁ、内部に入ったのは魔王だけどね…」

「まっ、魔王が!?」

 私はその言葉に驚いていた。まさか、勇者と魔族に関わりがあるなんて想像もしていなかったからだ。

「そうよ。氷の精霊の力をあれだけ引き出せるのは魔王だけだったからね…。あれは凄い魔法だったわ…。なにせ異空間ごと氷漬けにしていくんだからね…」

「……」

 そんな歴史があったのか…。だが、皮肉だな…。その千年後に今度は魔王に滅ぼされるんだから…。

「ってことで、私達は偶然にも似たようなことになってるわ…。…意図的じゃないけどねっ!」

「すっ、すまない…」

「まぁ、どっちにしろ来る事になってたからいいわよ」

「ちなみに魔王はその後どうなったんだ? …死んだのか?」

「さあ…。どうなのかしらね…。私はその後、勇者のバカに閉じ込められたから知らないけど…。案外、生きてたりして…。なーんてね〜」

「生きてたりか…。…ん? ドワーフ達が帰っきたな…」

 私達が話していると先程ドワーフがやってきた。話によると探索の時に、微妙に時計がずれていくという不可解な現象が発生していたらしい。やはり時の流れがずれているというのは本当のようだ。

 

「…ということだ。君達の話を全面的に信じる。君達についていってもいいだろうか?」

 さて、どうするかな…。

「ついてきてもいいが、どうするつもりだ? 戦艦の数から考えると、ざっと見積もっても二万人はいるだろう…。どうやって移動するつもりだ?」

「実は壊れた船を修理するついでに水陸可動式に変更しているんだ。って、いっても、先頭の戦艦以外は車輪がついているだけなんだけどな」

「なるほど…」

 さすが、ドワーフといったところか…。

「そうだ! 戦艦にいってくれないか? 元帥様が、あんた達と話したいそうなんだが…」

「了解した」

「…なぁ? 一個聞きたいんだけど、もしかして、あんた元帥にあったことあるのか?」

「いや…ないと思うが…。急にどうしたんだ?」

「うーん…」

「…なにかあったのか?」

 ドワーフはなにか悩んでいるよう様子だったが、急に辺りをキョロキョロみたあとに小声で話し始めた。

「俺から聞いたってのは秘密にしといてくれ…。さっきは全面的に信じるっていったけど…。実は反対意見もでたんだ…」

「まぁ、そうだろうな…」

「だけど、あんたの身なりと名前をだした途端に元帥が速攻で決めてな…。なにかあるのかと思っていたんだが…」

 …元帥が?

「…あってみないとわからんな。案内してくれ」

「だよな…。それじゃついてきてくれ…」


 私は船から降りて先頭にある戦艦に乗り込んだ。奥の部屋に進むと小柄だが、なかなか雰囲気のある老ドワーフがいた。

「元帥、おつれいたしました!」

「わかった…。さがっておれ…」

「はい!」

 返事をすると隊長らしきドワーフは部屋からでていった。

「久しぶりだな…」

「あなたは…」

「孫が世話になった…。おかげで元気にしておる…」

「いえ…」

 以前、珍しい事にドワーフの国から差出人不明の依頼があった。手紙をみると、エルフの国でも手に入れ辛い程の薬草を山のように持ってきてくれとのことだった。私はイタズラかと思ったが、情報収集や珍しい補助魔法器具、人脈を手に入れる為には、ちょうどいい依頼だと思いついでに軽く引き受けたが、なかなか骨の折れる内容だった。まさか、依頼者が元帥だとは思わなかったが…。

「さて、話をしよう。二つ目の依頼をしたい…」

「…今度はなんでしょうか?」

 話を進めていくと、ドワーフ達が探索をする限りは一本道のようだった。奥に進めば進むほどモンスターが強くなっていくようで、それらを倒してほしいということだった。

 

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