第191話

 全員が信じられないというような顔をしていた。僕は淡々と地図や先程作った筒を使いながら話を続け、魔物達に質問を行った。

「そんなこと無理だ! それに俺達はお前達の事を完全に信用しているわけじゃない…。俺達がお前達に操られているって可能性も…」

 案の定、魔物達から批判が起きた。

「まぁ、そうだろうな…。ただ、放っておいたら竜族がお前達の国をドワーフと組んで焦土にする気だぞ?」

「なんだと! どこにそんな証拠が…」

 僕は立ち上がり、壁にかけていたランプを手に取った。

「…こいっ! イフリート!」

 ランプの火が暴れだして巨大な火になったかと思うと、そこには小さなトカゲとリアヌスが立っていた。

「…それで、これはどういうことなんだ?」

「…まずは、後ろから抱きつくのをやめてくれ」

「こっ、こいつは、竜族の王子!?」

 魔物達は立ち上がり、臨戦態勢をとった。

「…ここは、まさか魔王城か? …なぜ、君がここに?」

「リアヌス…。悪いんだけど、時間がない…。俺が魔王になるって話を聞いてくれないか?」

 横から顔を覗いていた男はニヤッと笑った後で椅子に座った。

「ふっ…。君ってやつは面白いな…。聞こう…」

 

 僕はみんなの驚きを無視して淡々と話した。

「ってことで、魔王国中に張り巡らせているドワーフが作った補助魔法器具を証拠隠滅して、尚かつ幻影の得意なサーティスを倒すには魔王国を一旦焦土にするしかない。…違うか、リアヌス?」

 まぁ、完全な予想だが…。空間移動なんて難しいものをポンポン簡単に作れるわけない…。

「……」

「沈黙は正解と受け取るぞ?」

「おっ、おい…。君ってやつは…。それで、なんなんだ? まさかやめてくれとでもいうのか?」

 タジタジになっているリアヌスに僕は妥協案を提案した。

「まぁ、条件付きでね…。まずは少し延ばしてくれないか? 確か、あと四日ぐらいだったよな?」

「…延ばす?」

「船を四日後に集めて一斉に出国してくれ…。最短で魔王国につくのは一週間ぐらいにはなるのか?」

「まぁ…」

「その間に僕らは…」

 ストーリーはこう…。旧魔王は実は偽物で最後の旧体制のサーティスを打ち取る為、本当の魔王である僕が魔族達を率いて内乱を起こすというものだ。

「なるほど…。つまり、君が歴史を書き換えるということか?」

「ああ…。だから、俺が解決したら攻撃をやめてほしい…。それと魔物達は俺に任せてくれ…」

 リアヌスは少し沈黙した後に答えた。

「……当然、私の出番はあるのだろ?」

「当たり前だ…。サーティスと戦うときは必ず呼ぶ…」

「いいだろう…」

「よし…。…これでどうだ? もう時間がない。これでダメなら焦土にして俺はリアヌスと戦う」

 僕が脅し気味にいうと、魔物達は慌てながら賛同してくれた。まぁ、まともにやりあっても勝ち目はないと魔物達もわかっていたのだろう。僕はリアヌスを帰したあとに作戦会議を解散して、外へでてコーラを空けた。

 

「…いでよ、ウィンディーネ!」

 そこにはなにもでなかった。失敗したようだ。

 はぁ…。やっぱ、拒否権があるのか…。 これでシオンさんを呼べれば簡単だったのに…。まあ、いい…。次だ…。

 僕はステータスに船の通信機へつないでもらった。以外に簡単にできたみたいだ。

「シャル、アリス、どっちかいるか?」

「…アル!? どこにいるの!?」

 それはアリスの声だった。

「悪いんだけど、それはいえない…」

「いえないって…」

「まあ、なんとかやってるからさ…。アリス、真面目な話をするから聞いてくれ…」

「うっ、うん…」

「実は…」

 僕はアリスとの話が終わると、城の中に入り魔物に部屋を案内してもらった。僕はベッドに寝っ転がり右手を天井に向けて伸ばした。

 

「さて…」

 割といい作戦だとは思う…。だけど、大きな問題が三つある…。特にこれだ…。

 僕は右腕の鎖をみた。僕は先程の静止した時間で他の悪魔のスキルの発動方法について聞いてみた。すると、とんでもない事を言いだした。

 

 …ぼっ、暴走させろ!?

『はい。現在は制御化に置かれている為、力の出力は弱くなっています。しかし、新しいスキルを正常に発動するには制御を部分的に外して、より深いところにある力を手に入れる必要があります』

 …暴走させろっていうか…。暴走してしまうってことか…。まいったな…。

『しかし、問題は他にもあります…。まず、どのようなスキルが使用可能になるのかが分かりません』

 裏スキルの習得みたいだな…。

『そして、この力を手に入れた時…貴方はなにかを失っているかもしれません』

 なにかって…。

『それはわかりません。例えば視力を失うのか、聴力を失うのか、記憶を失っていくのか…。もしくは、別のなにかが…』

 ……。

『そして、問題はもう一つあります…』

 まっ、まだあるの!?

『それは…』



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