第192話

「どうするかな…」

 僕はさっきの事を思い出す度に何かが引っかかっていた。何に引っかかっているかというと、これというものはないが違和感があった。

「うーん…。ステータス?」

「はい」

「実はこの世界が…。というより、僕が幻覚を見せられてるって、可能性ある?」

 ゲームでは割とある設定だしな…。

「リカバリーの発動時のデータから判断するとないと思われます」

「……」

 まあ、攻撃を受けて違和感を感じ始めたってわけじゃないんだから、とりあえず幻覚の線はおいとくか…。

「よっと…」

 僕がそんな違和感を感じたのは、そう…。ラタトスクを発動した時だった。

「そもそも、都合がよすぎる…」

 相手を痛みで動きを停止する。これはわかる…。でも、自分の認識を高速化して時間を停止するなんて、かなりのチートスキルだ。

「うーん…」

 いや、そこじゃないか…。ステータスも認識を遅くして行動するには数倍程度が限界だろうっていってたし…。それ以上やれば体中が…。やめよう、想像するのは…。

「よっと…」

 僕はベッドから起き上がった。

 まあ、それでも十分強いけど…。なんていうか、一番…違和感を感じたのは…。あの、ユキって子が僕の目の前に現れて僕がラタトスクを発動した…。いや、発動させられたってことか…。

「……」

 まぁ、別にあの子がきた理由に不自然な点はない…。隔離しているこの島に入るにはそれしかないからな…。

「でも…」

 もし、この悪魔のスキルに能力の選択性がある程度あるのだとしたら…。まるで、サーティスはこれで撃破できる…。そう誰かにいわれている気がしてならない…。誰かに攻略本通りにそれしかないというルートを進ませられてるって気分だ…。

「考えすぎか…」

 僕は再度ベッドに横になった。

 でも、そうなると…。僕の能力を知ってる人間ってことになる…。裏切りものがいるってことか? もしくは洗脳されて…。いや、違うか…。いや、選択性なんて考えは僕も今、思ったんだから…。

「わかんねぇ…。全く、なにもわかんねぇ…。こんなに悩んだのは、ここにきて以来だな…。まるで……」

 あるのか…。そんなバカげたことが…。この世界の時が…戻ったなんて…そんなことが…。

 僕はパッと起き上がり、考えを張り巡らせた。

「いや、もうひとつあるな…」

 未来を予知できる…。あの能力だ…。

「もし…」

 もし…そんなことができるのだとしたら、あの中に封じ込められてるやつぐらいか…。でも、なにか理由があるのか? 俺達にサーティスを倒させたい、なにかが…。

「会いにいくか…。あいつに…」

 僕は右手の鎖を解くと、辺りは闇に包まれた。ここにくるときのような暴走した感じてはなかったが、力が抑えきれてないのだろう。ステータスの言う通り、なにかがゆっくりと消えていくのを感じがした。僕は闇の中であの音を聞きながら落ちていった。

 

「ついたみたいだな…」

 しばらくすると、ピタッと音がとまった。すると、不思議な事に闇の中で足がついた。

「まさか、ここまでくるとはねぇ…」

「久しぶりだな…。シャドウ…。まさか、こんなところにいるとはな…」

 僕が声をかけると周りの景色は一瞬にして変わり、あの大理石でできた空間に立っていた。そして、目の前には大剣をもって立っている黒騎士…。いや、シャドウがいた。

「剣を構えているってことは、黙って俺の力を返してくれるってわけじゃないんだよな?」

「ふっ…。でも、流石だねぇ…。正直、君の事を侮っていたのかもしれないなぁ…」

「そんな話はいい。時間がないんだ…。どうすれば返してくれるんだ?」

「俺を倒したら…かな…。俺自体が君のスキルを封印している魔法みたいなものだからねぇ…。まぁ、三つは君とそのステータスに奪い返されてしまったけど…」

「頼む…。黙って奪われてくれないか?」

 僕はそんな無茶な提案をしてみた。だが、意外な言葉が返ってきた。

「いいよ…」

「…えっ?」

「まぁ、正直いうと…。本体がやられたというか、あんなものがいたなんて俺も発動した時は想定していなかったと思うしねぇ…」

「じゃっ、じゃあ…」

「でもね…。どうせだったら、奪い返してみなよ。あれ…倒すんだろ? 俺の本体ですら、倒せないあの化物を…。俺が倒せなきゃ…。まず、無理だ」

「……」

 確かにな…。

「この空間は少し面白い空間でね…。死んでも死なない空間なんだ…。時間も君がきてから、可能な限りは遅くしてある…。君の作戦開始の日までには起こしてあげるよ…。…あれ? それとも怖いかい? 僕に負けるのがさ?」

「…いいだろう。みせてやるよ…。俺のプレイをなっ!」

 そこから超一方的なバトルがはじまった。まぁ、予想以上のボロ負けだった。

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