第190話

 部屋に入るとノスクが駆け寄ってきた。そこは大きな机に椅子が並べられ作戦会議室のような感じだった。

「アル、無事だったんだね…」

「なんとかな…」

「戦艦は追いかえしたの?」

「いや…」

 僕が話そうとすると、オークはとんでもないことを言いだした。

「あれは俺たちが復活させた…。大いなる災厄…ヨルムンガンドだ…」

「復活させたって…。あの巨大な蛇のことか!?」

 オークはうなずくと、後ろにいた女の子は話しだした。

「それについては私が説明します…」

「…君が?」

「はい…。事情はそこのオークから聞きました。貴方達には知ってもらう必要があります…」

「…聞こう」

 僕達は椅子に座ると、彼女は説明を始めた。

「私の国にはある伝説が伝えられていました…」

「…伝説ね」

 とりあえず、やばいニオイがプンプンするな…。

「それは…」

 

 予想通り、とんでもない話だった。勇者がいたという時代に世界を滅ぼしかねない三体の魔物がいた。それぞれの名は、フェンリル、ヘル、ヨルムンガンド…。それぞれを倒す為、その時の魔王と勇者は協力して倒していった。

「…つまり、この下にある異空間はもともとヘルってやつが作ったっていうのか?」

「はい…。そして、先程の魔物…。ヨルムンガンドは凍結魔法で海中深くに沈んでいました」

「…で、それを復活させたってことか?」

「はい…。この島から近づくものすべて襲うようになっています…」

 近づくもの…。

「それってここからでれないってこと!?」

「はい…。私のように空間を移動できれば別ですが…」

「最悪だ…」

 僕は絶望していると、彼女は続けて話した。

「私もここにずっといれば、怪しまれます…。ですから、他の安全な地に貴方達を…」

「まっ、待ってくれ! なにか他の方法が…」

 僕が止めようとするとゼロがユキと名乗る女の子に話しかけた。

「待て…。お前はそもそも、なにをしにきた?」

「私は闘技場の様子をみにきただけです…。生き残りを連れて帰るために…」

「なるほどな…」

「ですが、そんなにはここにいられません…。私もすぐに帰らねば…」

 そんなことをいうと、キツネとタヌキのような魔物はユキに抱きついた。

「ダメだポン!」

「そうだコン! 姫様がいないと僕達は…」

「あなた達…」

 …姫様?

「姫様って…君もどこかの国のお姫様なの?」

「いえ、彼らがふざけて呼んでるだけです…」

「そっ、そうか…」

 

 しばらく無言が続く中、僕は考えを巡らせていた。

「……」

 時間がほしい…。もっと、考える時間が…。まてよ…。ステータス! 聞こえてるか? ラタトスクの説明をみせてくれ…。

「はい…」

 

〈雷撃の尾を纏いしもの、永劫の時が過ぎていく。我が名を叫べ。超越を望みし者よ。我を呼びおこせ〉


 まさか…。…ステータス、どう思う? …可能性はあると思うか?

「わかりませんが、試してみる価値はあるかもしれません…」

「なるほど…。試してみる価値はあるか…」

 僕はボソッとそんなことをいったあと、席を立つとユキは心配そうに僕の顔をみつめた。

「どこにいかれるのですか?」

「ちょっと、試したいことがあってね…。みんな離れてて…」

 ステータス、補助を頼む…。

「了解しました」

「試したいこと? ですが、時間がもう…」

 僕は自分の頭に触れて発動した。

「ないなら稼ぐさ…。ラタトスク…発動!」

 …みんながスローになっていく。あとはこれをもっとコントロールして…。いったっ! 危ない…。もっと、もっと、イメージしろ…。

 

「……」

 完全にとまったけど…。僕自身も体が動かせない…。この状態で体が動かせたら最高だったんだけど…。なんか…。ゲームのポーズ画面みたいな機能だ…。なぁ、ステータス…。聞こえてるか?

「はい…」

 すごいな…。音声として聞き取れてる…。

「高速で話しかけています」

 なるほどな…。いくつか質問したいんだけど、いいかな?

「了解しました」

 

 僕は体感で十数時間ステータスと話し合ったあと、ラタトスクを解除した。

「はぁ〜…。ねむっ…。ごっ、ごめん。アクビして…」

 なんか眠い…。精神的にはつかれるのかもしれないな…。

「いえ…」

「それじゃ…。オーク、お願いがあるんだけど、外にいる色んな種族の代表を急いで連れてきてもらえるかな?」

「…なぜだ?」

「君達に選択してもらわないといけないことがある…」

「…了解した」

 

 僕はオークがでていったのを確認すると、破れた地図を複製して一枚は元の形に戻した。そして、細長い丸い筒を用意していると、エリックが入ってきた。

「ここだったか…」

「…エリック、大丈夫か?」

「悪い…。お前に話さないといけないことがある…。すまん…。どうやら、この一件…。ドワーフが一枚噛んでいるかもしれねぇ」

「そっか…」

 まぁ、予想通りだな…。

「そっ、そっかーって、お前…」

 僕はオーク達がエリックの後ろに立っているのが見えた。

「まぁ、エリック…。その件は後でいいから、先に入ってくれ…」

「ああ…」

 エリックと魔物達が席につくと僕は話し始めた。

「じゃ、今から作戦を伝えるんだけど…。とんでもない作戦で、全員が協力してくれないと不可能だ…」

「…それで、どんな作戦なんだ?」

 エリックが尋ねてきたので、僕は単刀直入にいった。

「僕が魔王になって魔王国に戦争を仕掛ける」

「へぇー魔王に…。…はぁ!?」

 

 

 

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