第189話
二人がでていった後、僕はこれからの事を考えることにした。
「けど、俺になにができるんだ…」
いや、弱気になったらダメだ…。少しでも考えよう…。
「まず…」
…その時だった。
「…なっ!? 今の揺れは!?」
尋常ではない揺れが起き、僕は立ち上がりすぐに階段をあがって様子を見に行った。
「こっ、これは…」
なぜか城は崩れ天井から光がさしていた。幸い怪我人はいないようだが、異常な状況になっていることはすぐにわかった。
「アル、こっちだにゃ!」
ノスクは城の入口で外の様子を見ていた。
「ノスク! これは、一体…」
「あれを見てにゃ!」
「あれって…。…戦艦? …エッ、エリック? どっ、どうしたんだ!? その怪我!?」
エリックはヨロヨロと城の中に入ると、バタッと倒れ込んだ。全身が傷だらけになっていた。
「わりぃ…。回復してくれ…」
「ああ…。…リカバリー!」
「うっ…。これぐらいですんだか…。流石、精霊の力だな…」
「おい、エリック! なにがあったんだ!」
「まずい状況になった…。どっかの国の戦艦だ…。あいつらとんでもないもの、つんでやがる…。魔導弾には気をつけろ…。うっ…」
「おっ、おい…。…エリック!」
「……」
エリックは気を失ってしまったようだった。
「くそっ…。ノスク、エリックのこと頼む!」
「アルはどこに!?」
「俺がなんとか止めてくる!」
僕が外にでてフレースヴェルグを発動して移動すると、ルアとゼロは空中で猛攻を防いでいた。ルアは岩石を生成して迫りくる砲弾を撃ち落とし、ゼロは手のひらから火の魔法でガトリングガンのようにルアの砕いた砲弾を粉々にしていた。
「相棒、無事だったか…。…ふんっ!」
「これは…一体…」
「ここが…あいつらっ! 魔王城だとっ! 思ってるから…。攻撃してるんだよっ! はぁ、はぁ…。疲れた…」
「そっ、そんなっ…」
僕が混乱していると、ゼロはとんでもない提案をしてきた。
「…あの船を沈めるか?」
「…そっ、それは!」
「他に…なにが手がある…。いやなら、お前が決めろ!」
「…くっ!」
確かにゼロのいうとおりだ…。このままじゃ…。
「おっ、おい…。…相棒! やべえ…。さっきのより、とんでもないデカさのやつ撃ってくる気だ…。相棒! あれを撃ち落としてくれ!」
「なっ! なんだ、あれ!? あんなものくらったら…。…くそっ!」
それはとんでもない大きさの砲弾だった。まるで太陽が二つあるかと思うくらい、あかあかと燃えるそれはとてつもない高温を放っていた。僕は考えられる魔法をすべて試して打ち込んだが、ビクともせずそれは段々と近づいてきた。
「相棒! やべえぞ!」
「わっ、わかってる! ステータス! なんとか、鎖を解除できるようにしてくれ!」
「了解…。実行開始…。解除可能までしばらくかかります…」
「しっ、しばらく!? …くっ!」
僕は水の巨大な弾丸をそれに打ち込んだ。すると、不思議な現象が起きた。海から、巨大な水柱があがったのだ。そして、それは太陽のような魔導弾を簡単に消し去ってしまった。
「相棒、すげぇな…」
「できるなら最初からやれ…」
「ちっ、ちがう…。俺じゃない…」
「じゃあ、誰か…」
「…増援でもきたのか?」
…増援? いや、様子がおかしい…。
「なんだ…あれ?」
僕はそれを見たとき信じられなかった。水柱かと思っていたものは、目を疑うような巨大な蛇の魔物だった。それは突然現れて何十隻もある軍艦を一口で飲み込むと海中に消えていった。
「……」
「……」
「……」
僕はなにもできず、そのまま海を見ていた。辺りは静けさだけが残っていた。
「二人とも…戻ろう…」
「…ああ」
「…そうだな」
僕達は城の中に戻るとエリックが倒れていたところに、さっき気絶したオークがそこに立っていた。
「…エリックは?」
「今は寝かせている…。お前たちに話がある…。ついてきてくれ…」
「ああ…」
「こっちだ…」
僕はオークのあとについていきながら、尋ねてみた。
「ところで、あそこに猫みたいなやついなかったか? ノスクっていうんだけど…」
「先に連れて行った。ユキと名乗る魔族達もな」
「そうか…。あの子達も無事だったのか…」
「みんなが無事だったのは、お前達のおかけだ…。本当に感謝する…」
「俺は…」
「…ついた。さあ、入ってくれ…」
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