第175話

「どっと疲れた…。ステータス…。…いいか? 今度からデメリットがあるときは先にいってくれ…」

「了解しました…」

 …でも、なんでだ? ドゥラスロールは使えないはずじゃ…。というか…そもそもスキルは封印されたんじゃ…。

 僕がステータス画面を覗きながら考え込んでいるとゼロが話しかけてきた。

「全く、不思議な能力だ…」

 僕はゼロのコピーに触れてみた。体温は感じなかったのでタダの人形のようだったが、本当によくできていた。

「俺もそう思う…。こんなに精密なものができるなんて…。まるで、生きてるみたいだ…」

 僕が触りながら答えると、頭を思いっきり殴られた。

「人の体を触るな…」

「いった…。ひっ、人の体っていってもコピーだよ? あっ、いやっ…。その…。そういう意味でいったんじゃないけど…。ごめん…。確かにいい気はしないね…」

「わかればいい…。それで、どうする気だ?」

「どうする気か…」

 そう…。また、振りだしに戻っていた。僕は試しにステータスに聞いてみた。

「牢屋を破壊すると、もしかしてチョーカーも爆発するの?」

「…そういう機能はついていませんが、牢屋を破壊すると管理者に通知される機能がついています」

「なるほど…。困ったな…。ステータス、なにかいい方法ないかな?」

「指定のカギを使用して開ければ問題ありません」

「…だから、その指定のカギがどこにあるんだよ。…もしかして、さっきみたいに作れるの?」

「作成は可能です…」

「まじで!?」

 予想外の答えに僕は驚いたが、ステータスは淡々と続きを話した。

「ですが、デメリットもあります。開けることは可能ですが、どうやらカギの材質の違いによってセンサーが反応するようです。オリジナルがあればより精度の高いものを作成できますが…」

 つまり、オリジナルじゃなきゃダメってことか…。

「ゼロ、カギの材質ってわかる?」

「材質か…。わからんな…。壊せばいいんじゃないか?」

「どうやら壊したり、カギと違う材質のものを鍵穴に入れたりするとセンサーが反応するらしい…」

「なるほどな…。だが…ここからでれなければ、どうしようもできないぞ?」

 もう一度、ステータスに聞いてみるか? 質問の仕方が悪かったのかもしれない。

「なあ、ステータス? この牢屋からでる方法はないのか?」

「…あります」

「…えっ!?」

 なんでこいつは情報を小出しにするんだろう…。早くいえよ…。

「ただし、でれるのは貴方だけです」

「…俺だけ? …ゼロは?」

「でれません…」

「どういう事?」

「ドゥラスロールツーを使用すればでれます…」

 そうか…。その手があったか…。とりあえず、僕が先にでてオリジナルのカギを手に入れるか…。っと、その前に気になってる事を聞くか…。

「なあ、ステータス…。封印されてたのに、なんでスキルが使えるんだ? それにルアを呼んだ時にドゥラスロールシリーズは使えなくなったはずじゃ…」

「ですから、性質の異なるもの…。今までのものとは似て非なるものなのです…。これ以上は適切な言葉が見つかりません…」

 …似て非なるもの? うーん…。まぁ、いいか…。これ以上聞いてもわからなそうだし…。

「ゼロはここで待っててくれ…。僕はカギを探してくる」

「お留守番か…。まぁいい…」

「じゃあ、いってくる」

「…待て!」

 僕が牢屋からでようとするとゼロは急に声をかけてきた。

「…どうしたの?」

「忠告だ…。もし、お前が大多数を救いたいなら闘技場の奴らは見捨てろ…。どうせもう少しで終わる…。…いいな?」

「……」

 仮に今、助けても…。…仕方ないのか?

「…おい、聞いてるのか!?」

「……」

 それでも…。なにか…。…なにかないのか?

「くだらない事を考えるな…。お前は一人しかいないんだ…。誰も責めはしない…。できる事をやるんだ…」

 確かにゼロの言うとおりだ…。そう…だよな…。

 僕がゼロに向かって答えようとすると背後から声がした。振り向くと見知った顔があった。

「なら、二人いればいいんだろ? なっ? 相棒?」

「…ルッ、ルア!? お前っ!?」

「だっ、誰だ、そいつ!? どこから現れた!?」

「大変そうだな〜相棒…。ちょっと、寝てる間にとんでもない事になってるな…」

 どうしてルアが…。それより、本物なのか?

「…勇者じゃないよな?」

「…勇者? 相棒、ふざけてる場合じゃないと思うんだけどな…」

「別にふざけてるわけじゃ…。そっ、それより、なんで出てきたんだ!? というか、出れたのか!?」

「なんで出れたのかはわかんねえけどさ…。相棒の代わりに俺が闘技場で奴らをボコボコにして戦闘不能にしてきてやるよ…。当然、チョーカーも解除して…な?」

「そっ、そうじゃなくて! そんな危ない事させられるか!」

「相棒…。気持ちは嬉しいけどな…。そんな事、言ってる場合じゃないだろ? なにが最善かを考えろよ。今はこの俺がついてるんだぜ? じゃっ、いってくる!」

 それはそうかもしれないけど…。いってくる?

 ルアは右手を上げながら、牢屋をすり抜けてでていった。

「おっ、おい! まっ、待てって! くそっ! どうやって発動するんだ!? ステータス!」

 僕が手間取っていると、牢屋の小窓から悲鳴が聞こえてきた。

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