第160話
僕は会話を続けながらリカバリーをかけた。
「…なんの話だ? そんな事するわけないだろ!」
「リアヌスがいっていたんだ。悪魔の力を使う為に魔族と組んで人体実験してたって…」
「…あの竜人のいう事を信じるのか?」
「…ああ」
シオンさんは、僕の右腕を狙って攻撃してきた。僕は最初の攻撃だけは木刀で防ぐことができたが、次の攻撃で折れはしないものの右腕に巻いた鎖が腕にめり込んでいった。
「…アル、お前は人間じゃない」
「ぐぅあぁあああ…。うっぐぅ…。はぁ…はぁ…」
回復が痛みのせいで追いつかない…。
「あいつの言葉を信じるなんて…。そんなの嘘に決まってるだろ!?」
「…っ! リアヌスは…きっと…後悔してる…。僕が…神族の生き残りだって…。嘘をついたのは…知ってる…よね?」
「…ああ」
「そしたら、あいつは…自分の首に剣を当てて…僕にその柄を持たせたんだ」
「…それが嘘だっていってるんだ! そんなのパフォーマンスに決まってるだろ!? 君ができないことを知っててやったんだ!」
「…確かにそうかもしれない。それでも、僕は人間だから…。この世界の人間達を救いたいんだ…」
「……」
「邪魔するならシオンさんを倒す!」
木刀で全身を支えながらゆっくりと立ち上がり再び構えた。
「…やれるものならやってみろぉおお!」
がむしゃらにシオンさんは何度も何度も打ち込んできた。たださっきと違い明らかに剣が乱れている。それでも受けるので精一杯たが…。
「…ぐっ」
「…私がっ! …どんな思いでっ!」
くそっ! 下手に攻撃にでればやられる! かといってさっきみたいにダメージ覚悟でリカバリーを使いまくる作戦はダメだ。…魔法も少し下手になってるし痛みでリカバリーは連続してうまく使えない。今までの経験を思い出せ…。考えろ…考えるんだ!
僕はとっさに後ろに下がりシオンさんとの間隔を一定にするように逃げた。
「はぁ…はぁ…」
まずい…。息がもう切れてきた…。俺、弱すぎるだろ…。
「…逃げるなっ!」
「…っ!」
なにかいい手は…。…そうだ! あの時みたいにポーションを全身にかけて回復しよう…。
「…逃げるなといってるだろうがぁあああ!」
シオンさんは思いっきり突進して僕にぶつかってきた。僕はそのまま壁に激突してダメージを受けた。
「…くっ!」
…そんなひまがどこにあるんだ。あの時はまだ時間が稼げたからあんな方法が使えたんだ…。それに戦闘中ずっとかけ続けないと絶対に勝てない。最初からやってるならまだしも…。待てよ…。そうか…。その手が! イチかバチかやってみるしかない!
「次で終わりだ…。なっ、なんだ、それは!?」
シオンさんはサッと離れ、僕の様子をみていた。
「…回復していく……。いい感じだ…」
僕は全身にポーションが纏うイメージをした。できるかどうかわからなかったが、液体ではなく青白く輝くオーラとして…。
「…なにをしているのかわからないが、苦し紛れだな」
「…それでも勝てれば十分だよ」
「…なら試してみろ。…私の剣でな!」
シオンさんは僕の背後に周り脇腹めがけて振るような仕草をみせたので、とっさに防御しようとしたが、それはただのフェイントで真正面から壁まで吹き飛ぶほど叩き斬られた。
「…ぐはぁっ!」
「さっきの威勢はどうしたんだ? 私に勝つんじゃなかったのか?」
そうだ…。シオンさんに勝たないと…。勝って…。…いや、勝ってどうなるんだ? …僕はバカなのか? これはゲームじゃないんだ…。シオンさんを倒しても別になにかが変わるわけじゃない…。シオンさんに気付いてもらわないといけないんだ…。
僕は意識が朦朧としながらも壁に手をつき、なんとか寄りかかりながら起き上がった。
「…っ!」
これはアバラ何本かいっているな。って、よくあるセリフを思いだすだけでもまだ少しは余裕があるな…。まずは回復だ…。
「また、回復か...」
僕は胸の辺りを押さえてリカバリーを発動すると、目を疑うような異変が起きた。
「…なんだ…これ?」
神様にもらった腕輪が突如、黄金に光り輝きだし、体に張り巡らせた青白く輝くオーラと溶け合い、僕を信じられない速度で癒やしていった。
…まさか、神様が!? …いや、誰もいない。
「…戦いの最中によそ見か? 随分、余裕だな…。…それとも回復すれば私に勝てると思っているのか?」
「……」
「だが、回復されればキリがないのも事実だ…。撤回するなら、許してやる…。間違っていたといえ」
「……」
「そして、誓うんだ。私の邪魔はしないと…。今の私なら…精霊の力があればきっとできる…。竜族と魔族は世界の為に滅ぼすべきなんだ。誓え…。誓えないなら更に酷いことになるぞ…」
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