第150話

 避けるので精一杯だ。やつのHPは…。…くそっ、みえない!

「…くっ!」

 僕は飛びわまり、伸びてくる枝のような物体の攻撃を紙一重でかわしながら上空へ逃げた。

 危ない…。もう少しで突き刺さるところだった。…ん? 攻撃がやんだぞ?

 その物体を見ると今度は伸ばした枝を自身に収束させて巻きつけてまるで卵のような姿に変化していった。

「なっ、なんだ、あれ!?」

 どうする? 今がチャンスなのか?

「…ぐっあああああ!」

 後ろを見るとどこかで見たことのあるような無数の線状の物体が突然現れ僕へ巻き付き攻撃していた。僕は瞬時にそれを理解するとすぐに体から無理やり剥がしてその場から離れた。

 …まるであいつの尻尾じゃないか!?

「…なっ!?」

 目の前のゆらゆらと漂う無数の線を見ると今度はお互いを巻き付け合いながら更に巨大化していった。そして、先端に不気味な数字が現れカウントダウンを始めた。僕はそれを見た瞬間、限界まで闇の力を発動しそれを灰にした。

「はぁ…はぁ…」

 今のはきっと危なかった。でも、どこかで見たことのある攻撃ばかりだ…。くそっ! HPも低い今の状態で長期戦になれば勝てない!

 僕は更に闇の力を発動しようとすると右腕だけに留まらず、全身に力が逆流していき黒いオーラが僕を侵食していった。だが、そんな異常な事態になっているにもかかわず何故か心地良い高揚感が湧いてきた。

 今なら行ける気がする…。

 僕は中心をめがけて無数の攻撃を避けながら突撃した。なんとか貫く事に成功したが寒気のするような恐ろしさを感じた。

「…なんだ?」

 卵のような球体を注視すると表情もないのに妙な感情を感じた。まるで怒りを僕にぶつけてくるようなそんな感じだった。

「アトヒトツアレバ…ユニオンノブンザイデ……。グッ…! マダ…イキテイルノカ…」

 どこからともなくその声が聞こえると、球体は全身を炎で纏い高熱を放ちながら燃え続けた。

 …なんだ? …人の姿?

 それは段々と小さくなりやがて人の姿になっていった。

「早く…貫け…。抑えてる間に…。…早く!」

「その声、シャドウか!?」

「ぐっ…」

「でも…」

「どっちみちダメだ。手遅れになる前に…。頼む…」

 目の前の物体は羽が一枚ずつ生えていき、それと同時にとてつもないほどの力が増えていくのを感じた。

 助けたいが方法がない! クソッ! 

 僕はもう一度人の姿をした物体をめがけて貫くと、声にもならないほど甲高い機械のような叫び声が聞こえた。

「グッ…。…ギャアアアア!」

「…なっ!? 空間が歪んでいく!?」

 …ん? …なんだあの光! …あいつは!?

 僕から遠く離れた空間が歪むと、青い光と共にそれはその物体に突き刺さり閃光が走った。


「ぐっ…。ここは…」

 僕は元の火山のある場所に戻っていた。だが、戻る瞬間に僕は見た。あの青い光の中にあの黒い魔物がいたことを…。

 解除されたってことは倒したのか? でも、敵の姿がない。…というか、あれは一体……。

「……」

 …ん? …なんだ、この音?  なにかにヒビが入るような…。…まさか!?

 急いで振り返ると、目の前の空間は割れたガラスのように亀裂が入り、そこにはあるはずのない右手が宙に浮かんでいた。つかめるはずのない空間をその手は掴み、なにかがそこから這いでようとしていた。

「…おりゃーー!」

「…かっ、神様!?」

 横を向くと神様が必死な顔をして穴に向かって光線を打ち込んで攻撃していた。

「あっ、あなたも早く穴に向かって攻撃してください!」

「こっ、攻撃って!?」

「なんでもいいから早くしてください! 私だけじゃ押し返せません!」

「わっ、わかった!」

 僕は闇の力を発動し神様と同じようにレーザーのように穴に向かって放出し続けた。

「…もっ、もう少しです!」

「…ぐっ! …おらぁああああ!」

「…おりゃぁああああーー!」

 神様が叫ぶと詰まったものが取れたように、それは押し込まれ戻っていった。神様が穴の空いた箇所に瞬時に移動してリカバリーをかけると、かけた空間のカケラがもとに戻っていった。


「…もっ、もう、大丈夫です。こっ、これでしばらくはでてこれません」

「…だっ、大丈夫ってなにがだよ! ふざけるのもいい加減にしろよ! 神様、説明してくれよ! もう、なにがなんだかわかんねぇよ!」

 僕が取り乱すと神様は下を向いて悲しそうな顔をして謝った。

「…本当にすいません。説明します…。あれはきっと私より上位の存在です…」

「…上位? 黒い魔物がいたってことは、悪魔の本体って事か? いや、でも…」

「いえ、違います…。この世界の創造主です!」

「そっ、創造主? 勇者が倒したはずだろ!?」

 神様は唇を噛みしめて泣きそうな顔をして僕の問いかけに答えた。

「これから説明することは私の全て予想です…。なんの確証はありません…。でも、これしかっ…!」

 僕は少し冷静になり、剣を鞘に戻した。

「ごっ、ごめん…。神様が悪いわけじゃないのに…。…でも、どういう事なんだ?」

「…私が全て悪いんです」

 神様はひどい顔をして、そうつぶやいた。

「全てって…」

「初めから仕組まれていたんです…。あれはあなたを呼ぶためにこの星を滅ぼそうとしていたんです。それに気づかず私は…」

「おっ、俺!? 俺を呼ぶ為にこの星を滅ぼそうとしてたってのか!?」

「そうです…。あなたは復活に欠かせないピースだったんです!」

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