第145話

 赤髪の男は再度焼き払ったが、またポケットの中にカードが戻っていた。

「どうしても…だめかい?」

「お前を殺せるなら考えてやってもいい…」

「ゲヒヒヒヒ…。それは無理だよ〜…。…なら、君はどうする?」

 簡単な答えた。答えなんて当然決まってる…。

「…同じく断る」

「断られたか…。うーん、どうしようかなー。…そうだ! いい事思いついたぞー。僕ちゃん天才! 一週間後に魔族の国にきてほしいんだ…。七人くらい揃えてね…」

 赤髪の男は不敵な笑みを浮かべながら、死神のような男にいった。

「…それは一週間以内にきてほしくないという意味か?」

「……リアヌスのそういうところ好きだよ。…でもね、そういうこといわれると今から竜の国にいきたくなっちゃうだろ?」

 死神のような男は大きなカマをぶらんと揺らしたあと、狂気じみた笑みを浮かべていた。

「……いいだろう。一週間後に全ての決着をつけてやる」

「……よし、決まりだ! 楽しみに準備して待ってるよ…。…グヒッ、グヒヒャッハハハハハ…」

 死神のような男は高笑いをあげながら黒いマントで身を隠すとあっという間に消えてしまった。

「全く次から次へと…」

 確かにそれには同感だ…。これじゃきりがない…。あいつを倒してもまた別のやつが魔王になるだけだ…。まあ、閉じ込められた魔王が規格外って可能性もあるけど…。

「……」

 …だとしたら世界が崩壊する原因って一体なんなんだ? 神様は最初にわからないっていってたけど…。この前は僕が世界を崩壊させるのはわかってた…。…なんでそれは最初にわからなかったんだ?

「さて…そろそろきこうか…。黒い魔物達を一刻も早く倒さなければならなくなったようだ」

「……」

 黒い魔物…。そういえば、あいつを倒すたびに見えなくなった未来が少しずつみえはじめた…。でも、いい未来じゃなかった…。だから、黒騎士が…。一体なにが原因なんだ…。なにか…なにかが…あるはずなんだ…。

「…というか君は飛べたんだね。まさか、飛べる人間がいたとは驚いたよ…」

「……」

 僕がろくに返事もせず考え込んでいると、赤髪の男は羽をパサパサと広げて話しかけてきた。

「なあ、返事ぐらいしてくれよ…。…どうしたんだい? …明日、世界が終わってしまうような顔して?」

「…えっ?」

「そうか…。君も恐いんだね…。安心したまえ…。君一人に戦わせはしないさ…」

「まっ、待ってくれ! 今、なんていった!?」

「だから、君一人には…」

「違う! その前だ!」

「明日、世界が終わってしまうような顔をしてっていったんだけど…」

 そっ、そうか…。 神様でもわからないってことはそれが答えなんだ。逃れられない絶対的な死の運命…。この星の寿命なんだ…。だから、その過程なんていくら考えても、わからないのか…。

「……」

 いや、それだけじゃない…。黒い魔物を倒した事で未来が書き換わり、僕が世界を滅ぼすルートが新しくできたのだとしたら…。魔王や黒い魔物に黒騎士に僕…。それ自体が世界を滅ぼす可能性もあるんじゃないのか?

「どうしたんだね?」

「いっ、いえ…早くいきましょう…」

 全てのバッドエンドを潰さなければいけないって事か…。でも、星の寿命だとしたら救いようがないんじゃないのか…。いや、待てよ…。…なんで、僕がいた世界は大丈夫なんだ? もしかして、あるのか? このルートにこの星を救うなにかが…。

「では、私に捕まってくれ」

「…えっ?」

「いくぞ!」

 赤髪の男は僕を抱きかかえると、とんでもないスピードで飛行を開始した。まるでジェットコースターのように…。

「えっ? ちょっ…ちょっと…。待って…。…うぁあああ!」


「…ん?」

 …なんだここ?

 月明かりの照らす中、僕は立ち上がりあたりを見渡すと、とんでもない光景が目に入ってきた。

「…僕の家?」

 どっ、どういう事なんだ…。まさか、今まで僕は夢を見ていたのか? あんな長い夢…。いや、でもこの姿は…。

「確かスイッチはこの辺だったよな」

 灯りをつけると目の前には見慣れた光景が広がっていた。窓ガラスに映った僕を除いて…。

「…高校生の僕が部屋の中で一人でひどいコスプレをしているみたいだな……」

 ふざけてる場合じゃないか…。確か僕はあまりの速さに気絶したんだ…。…だとしたらここはどこなんだ? …まさか、この姿のまま戻ってきたのか?

「…ん? …携帯がなってる。しかも、誰だこいつ?」

 携帯の着信番号を見ると妙な記号が表示されていた。

「……」

 いつもの僕なら普段は知らない番号には絶対にでないが、このときばかりはすぐに通話ボタンを押してしまった。

「…もしもし?」

「…やあ?」

「…その声!? 黒騎士か!」

「いや、黒騎士じゃないっていってるだろ? …テレビをつけてくれないか? …そっちの方が話しやすいんだが?」

 僕は急いでリビングのソファに座りテレビをつけると黒騎士の姿が写っていた。その姿はまるで最新ゲームのキャラクターのようだった。

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