第141話
「最初に疑問を持ったのはドワーフの国に突如現れたあの光り輝く大剣だった…」
「…俺が作った大剣のことか?」
「ああ…」
僕が返答するとドワーフ王がしわがれた声で質問をしてきた。
「…一体、あの剣はなんなのだ?」
「この計画は魔族の国の四天王の一人…キメラが貴方の国に潜入して行っていました。最近、ドワーフの国にある異変が起きたと思います。あの剣はそれを制御するための装置です」
「…なぜそうだと言い切れる」
「…まず、俺はついこの前までドワーフの国にいました。まあ、不法入国ってやつですかね」
僕の不法入国という言葉にすぐに竜族の王子は反応した。
「不法入国? それは立派な犯罪じゃないか。まさか、そのドワーフもこの会談の為に誘拐してきたのかね?」
その言葉に激しくエリックは怒っていた。
「誘拐なんてされてねぇ! 俺は自分の意思で、ふ…」
「エリック!」
僕が名前を大きく呼ぶと勘付いたようだった。
あぶねえ…。船っていう気だったな…。こいつ…。まっ、まあ、船じゃわからないか…。
「ふっ、ふっ…ふざけるなー」
エリックは急に棒読みで怒りだした。きっと、誤魔化したつもりだろう。
こいつ、ごまかすの下手だなー。まあ、話を続けよう…。
僕はひれ伏してドワーフ王に向かって話しかけた。
「ドワーフ王、不法入国に関しては謝罪します…。後でどんな罰を受けていい…。でも、結果的に貴方の国を救ったということは考慮してもらえたら嬉しいです…。ドワーフ王、話を続けてもよろしいですか?」
「…うむ。話が真実であれば不問にしよう…」
僕はコツンコツンと靴をならし、指を一本立ててエリックの周りを回りながら話しだした。
「最初に話した時、俺はあの剣のうち一つをエリックが作ったんだと思っていた。…でも、ウィンディーネと話していたこと覚えてるかい?」
「ああ、覚えてるけど…」
「俺は剣の雰囲気が似てたから、間違ってエリックが作った剣だといってしまった。よく見たら風景が違ったのに…。でも、エリックは否定しなかった」
「そうだよ…。俺が全部作ったんだ…。カジノの借金のせいでさ…。…でも、それがどうしたんだよ?」
僕はエリックの真正面に立ち言葉を放った。
「やっぱりそれはおかしいんだよ…。今の時代の技術が初代ドワーフ王の技術を遥かに越してるのだとしたらエリックが全部作る必要性なんてないんだ」
「いやだからさ…。借金がなければ俺だって全部作ってないって…。それにあれぐらいの剣なら、ちょっとやればみんな作れるし、でっかい剣ならなんでもよかったんじゃないか?」
エリックは困惑した顔で頭を抱えたあと両手を広げて答えた。
「…いや、そうじゃない。どんな剣でもいいならカジノのオーナーとしての地位と金を使ってそのへんの誰かに依頼すればいい」
「まっ、まあ、そうだけどよ…」
「でもさ…エリック…。そもそも、あのキメラがいってたんだけど三十年もかけた計画にそんな適当なもの使うかな?」
「…一体なにがいいたいんだよ」
「エリック…逆なんだ…。全ての剣を君に作らせる為に借金を背負わしたんだよ…」
僕がそういうと手を横に振って激しくエリックは答えた。
「そんなわけないだろ! 俺がカジノに行ったのだって初代ドワーフ王の剣があったって知ったからだ…。ただの予想だろ!?」
「そう…。予想だった…。さっき部屋で話すまでは…」
「なっ、なんだよ! おっ、俺、変な事いったか?」
これをいってしまうとエリックは傷ついてしまうかもしれない。でも、これを知らないと彼も前に進めない気がする…。
「君の生活は異常なんだ…。家に外から鍵をかけられて、小さいころから食料と水と本が届く生活なんて…」
「そっ、そんなの育てられない事情があったんだろ!」
エリックは手を震わせて激怒して答えた。
「でもさ、届く本も専門書ばかり…。大人になるにつれて更に高度になっていった…。君にそれ以外の興味を持たせない為にね…」
「そっ、それは勉強させる為に…」
「でも、毎週作成した剣を小窓にださなければ食料が届かなかった。そうもいってたよね」
「…そっ、そんなの普通だろ!? それが仕事だって…。…ちっ、違うのか?」
エリックがそういうとドワーフ王は涙を浮かべていた。
「あの家は小さすぎて君を隠すのにはちょうどよかったが、あの大剣を作るには小さすぎた。きっと君がカジノへいこうと思ったのもそう仕組まれていたんだよ…」
「…じゃっ、じゃあ、アルは俺が誘拐されたっていいたいのか!? あの剣を作らせる為に!」
「…そうだ」
…きっと彼は気づいていない。
「そんな馬鹿な話あるかよ! 俺だったらそんな面倒臭いことせずに魔族の国に連れていって作らせるぞ! それになんで俺なんだよ。攫われたの赤ん坊の頃だぞ!」
僕は言葉を選んで口を開いた。
「…連れてけなかったんだ。きっと、四天王や魔王にも秘密にしていた。バレたくなかったんだ君の存在と計画を…」
君は比較するものがなかった。君以外と…。
「なにがいいたいんだよ! …頼む! 教えてくれよ、アル!」
エリックは僕のズボンをギュッと握りしめて叫んだ。
「さっきみたんだ君のスキル…。そこにはおびただしいほどのスキルが表示されていた…。君は天才なんだ…。生まれ持っての天才…。まるで剣を作る為に生まれてきたような存在なんだ」
僕は君が羨ましい…。僕にはなかったから…。そんな才能が…。
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