第140話
「…証明ですか? それは難しいですね…。というか証明に意味はないのではないですか? このでたくもない会談に俺が参加した理由は神族の国を独立させる為です。それ以上の説明になんの意味があるんですか?」
僕の目をじっと見た後で王子は腕を組み、なにかを考えた後に口を開いた。
「……証明に意味ならある。それは…」
僕は男がなにかを言おうとしたが、すぐに遮りこう発言した。
「証明に意味があると言うなら、貴方も皆さんに説明しなくてはいけないんじゃないんですか? …貴方は嘘をついている」
「…私が嘘をついている?」
そう…彼等は嘘をついている。まあ、元はといえば僕のせいかもしれないが…。
「四天王を三体倒したのはこの俺だ…。貴方はなにもしていない…。貴方が倒したという事で竜族の国は非常に有利な状況で交渉を進めている。これをそもそも証明する方法があるのですか?」
「…実際に他の国もそういう情報が伝わってきているから、有利な状況で交渉出来ているのだよ。私が必死に戦ったおかげでね…。平和が守られているんだ」
「そんなはずは…」
僕が発言しようとすると、今度は反対に遮られた。
「だが、君の言うとおり誰も見てない以上は証明する方法がないのかもしれないな…」
まあ、ここはこんなところか…。
「…で、あればその二体を倒した後に神族の国を独立させて私を王と認めてもらえますね?」
「…それはできない」
「なっ!?」
くそっ…。いける流れだと思ったのに! 何故だ!?
「そもそもだ…。国というのは他の国が認めて初めて国となるのだ。仮に私達の国が認めても、君がもしかしたら魔族の手先かもしれないという懸念…。最低でもこの会談の過半数を納得させるな証拠がほしいのだよ。それを払拭させるような証拠がね…」
王子はみんなに問いかけるように言うと、会場中から拍手が沸き起こった。
なるほど…。そうきたか…。まあ、そうだろうな…。
「……」
「…ないだろう。ただ、君がもし倒してくれるのなら、私達の庇護の元に君に王座を渡してもいい…。…これでどうだろうか?」
それじゃあ意味がない…。完全な独立でないと…。
「…あります。中立な立場で最低でも魔王の手先である四天王を一人倒したという証人が…」
「…なに?」
もう最後のカードか…。だす気はなかったんだけど…。全く…これじゃあギャンブルだな…。
「…エリック、入ってきてくれ!」
僕が扉に向かって大声をだすとゆっくりと、ぎこちない動きでエリックは僕の隣に立った。
「ドワーフ族か…。確かに彼らの立場は中立だな…。だが、意味のないパフォーマンスだ…。彼自身の信頼性がない」
「いえ、ありますよ。彼はドワーフの王族です」
僕の言葉にエリックは驚いて目を丸くし、なにか言いたそうに目で訴えかけてきた。
「はははっ…。なるほどな…。王族なら確かに信頼性はある…。だが、偶然とはあるものだな…。知らなかったのかもしれないが、私達の国も連れてきているのだよ。王族…ドワーフ王をね…。彼にみてもらおう」
王子が右手をあげると後ろの方からエルフの王様が急に話しだした。
「そろそろ、次の議題に入りたい。この話は…」
「エルフ王、助け舟のつもりですか? ここは邪魔をしないでもらおう…。皆さんもこれでは納得できないのではないですか?」
彼が周りに目配せをすると拍手が起きて、もう後には引けない状態になってしまった。
「うっ、うむ…」
エルフ王はそれを見ると黙って席についた。しばらくすると扉の方からお供を連れたドワーフがやって来て竜族の隣に座った。
「…ドワーフ王よ。確認します。彼をご存知ですかな?」
「…知らんな。ドワーフのようだが見たこともない…」
年老いたドワーフが一言呟やくと勝ち誇ったように王子は話しかけてきた。
「だそうだが…。なにか言いたいことがあるかね? …君は嘘をついた。本来許されないところだが、私達の国に来て魔物を倒してくれるのなら許そう…。しかも、神族の王としての地位を約束…」
「…ちょっと黙れよ。…許してくれなくていい…。…ドワーフ王、貴方に質問があります」
僕はその王子に睨みを聞かせて黙らせたあと、ドワーフ王に話しかけた。
「…なんじゃ?」
「…貴方の息子は三十年くらい前に、さらわれたのではないですか?」
僕が質問するとドワーフ王は目を見開いた。
「…それがどうしたというのだ?」
「剣の心を読むスキル…。…聞き覚えはありませんか?」
…確証はない。でも、エリックは恐らく…。
「バッ、バカなっ!? なぜ、貴様がそれを知っているのだ!?」
…よし、当たりだ!
「理由は簡単です。エリックがそのスキルを持っている。つまり、貴方の息子だからです」
僕がエリックの方を向いてそう言うと、エリックとドワーフ王は口をパクパクとさせていた。
…っていうか、よく見たらそっくりだな。この二人…。
「アッ、アル、こいつは一体どういう事なんだ!?」
エリックは足を震わせながら僕に近寄り尋ねてきた。
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