第142話
「おっ、俺が天才!? なにいってるんだ! 冗談はよせよ…」
「エリック、君にとっては普通かもしれない…。でもね、いくら技術が向上したっていってもそれを全て覚えて更にアレンジするなんて普通はできない。…信じられないのなら、頭の中に本を何冊暗記してるのか皆に教えてあげなよ?」
「十万冊ぐらいだけど…。それがどうしたんだっていうんだ! みんなだって普通にできるだろ!」
エリックが叫ぶとどよめきが起き、誰も返事をしなかった。
「…エリック、俺は少なくともできない。ドワーフ王、これはドワーフという種族にとっては普通なんですか?」
ドワーフ王は僕の方を見た後、エリックの方に向かって答えた。
「…普通ではない。真実ならば我が息子と同じ非凡な才能だ。エリックよ…。…ドワーフ国の法を全ていえるか?」
「まあ、いえるけど…」
「いってみなさい…」
それからエリックは十分程度ずっと高速呪文のように法律を言い続けていた。
「…って感じかな……。結構、法律って長いからあと数時間かかりますけど、まだいったほうがいいですか?」
「いや、もうよい…。十分だ…」
僕はドワーフ王の前に立ち今の正答について尋ねた。
「…どうでしたか? あってましたか?」
「…わしもわからん」
なっ、なぜ聞いたんだ…。沈黙はまずい…。なにかいわないと…。
「えーと…」
「ただ、なんとなくの流れはわしも覚えている…。この子はきっと本物だろう。本物の…」
ドワーフ王が声を震わせながら言葉を発しようとすると、赤髪の王子が机をバンッと叩き立ち上がった。そして、そのまま宙に浮かび、僕の後ろにすっと降りて話しだした。
「まずは拍手をしよう…。皆さんもこのドワーフの才能に拍手を…」
男はゆっくりと拍手をしながらエリックの方に歩いていった。
「…これで信じてもらえたか?」
「いやー素晴らしいかった…。もう少しで私も泣きそうになってしまったよ。この素晴らしいショーに…」
「ショーだと!?」
僕がそう答えると王子はニヤリと笑い、そのまま話し続けた。
「君の言う通り彼は間違いなく本物の天才だろう。…だが、本物の息子かはわからない。…違うかな?」
「…どういう意味だ?」
…こいつ、まさか。
「つまり、オリジナルではなくコピーだ…。私の国の情報によると魔族の中にはそういった事を研究しているものがいる。ちなみに君がさっきいっていた四天王のキメラはまさにその人物だ」
「エリックは本物だ!」
「なぜそういい切れる? 証拠はなにかあるのかね? 彼がオリジナルであると!」
「俺にはそれを確かめる方法がある」
僕もエリックが本物ではない可能性がある。それは一瞬頭をよぎった。だから、部屋の中でエリックにリカバリーをかけて確認してみると、ゼロ…シオンさんのコピーのような歪さは感じられなかった。彼は間違いなく本物だった。まさか、そこを追求してくるとは思わなかったが…。
「まあ、仮にそうだとしてもだ。普通のドワーフにスキルを渡すスキルで大量に付与しただけではないのかな? そして、君がそれを利用して打ち合わせをしたんじゃないのか?」
「……」
こいつは…。
「なにかいいたいことがあるかね?」
「……」
なんで…。
赤髪の王子は僕に近寄り笑いながら尋ねてきた。
「証拠がないなら君の予想にしかすぎない。…違うかな?」
……もう、いいか。…もう限界だ。
「…最後に一つだけあります」
「…ほう、なんだね?」
「貴方が三体の四天王を倒したんですよね?」
「…ああ、死闘だったよ」
「…俺は一方的にあいつらを倒しました」
男は丸い机に腰掛けて顎のあたりをさすりながら問いかけてきた。
「…なにがいいたいんだ? 君の方が強いとでもいいたいのかね?」
「ええ…。まあ、そんなところです…。でも、どっちかが嘘をついているのなら…。俺にはもうこれくらいしか、貴方が納得するような方法は浮かびません」
「…方法とは?」
僕は最高の笑顔のあとに冷たい目をしてこういった。
「決まってるじゃないですか…。…貴方以外の竜族を一方的に皆殺しにします。それでも信じられないなら、貴方を最後に殺します」
僕のその言葉に竜族は全員席を立ち飛びでてきた。僕は襲ってくるのかと思い剣に手を当てたが、なぜか王子の体を抑え調理室で出会った赤髪の女が僕の目の前に立った。
「…ミリア…なんのマネだ?」
「もう我慢の限界です…。お前達、そのバカ王子を抑えていろ…。私がアイツを…」
その言葉の後に強烈な赤い焼きつくようなオーラが目の前の男から放たれた。それは真っ赤な火のような綺麗な色をしていた。
「お前達、手を離せ…。二度はいわんぞ…」
男はさっきまでの雰囲気とは違い恐ろしい目をして配下を睨みつけると、彼らは震えながら手を離した。そして、彼は起き上がり赤毛の女に話しかけた。
「もう一度聞く…。ミリア…。これはなんのマネだ? …お前は私と彼との戦いに水を差すつもりなのか?」
彼女は先程までの威勢は消え震えながら声をだしていた。
「あっ、あいつは私達を侮辱したんだから、痛い目にあわせねえとわからねぇだろうが!」
「…つまり、この私の邪魔をするというのかな?」
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