第135話
赤髪の男は目を細めて、なんだかとてもまずそうな顔をしていた。
「どうしたんですか?」
「まずいやつがきたみたいだ…。私はこの棚の奥に隠れているから秘密にしておいてくれ」
「まあ、いいですけど…」
「…男と男の約束だぞ!」
目の前の大人はしゃがみ込み、棚の奥にすっと隠れた。
「おっ、そろそろださないと!」
僕が焦って鍋からだしていると、勢いよく扉が開き赤髪の綺麗な女性が現れた。黒いメガネがよく似合っている。
「ここでもないか…。…君、金色の帯をつけた私と似たような赤い髪の男を見なかったかな?」
「いっ、いえ、みてませんけど…」
…よし。全部、取りだせた…。おいしそうだな…。
「くそっ…。こんなところを誰かにみられたら…。あんっのバカ王子! 会談前に一体、どこにいったんだぁあああ!」
「えっ、あの人、王子なんですか!? あっ…」
まずい…。
僕は驚いてつい言ってしまうと彼女は目を細めて冷たい目をしながら詰め寄ってきた。
「…あの人? 君は知らないといったのにあの人…だと? あいつはとこだ! 隠すと外交問題になるぞ!」
僕は悩みもせずにすぐに指を差した。
「あそこです」
僕が指を指すと棚がガタッと揺れた。
「…そんな所に隠れていたのか、こっんのバカ王子がぁあああ!」
女の人は棚の奥から子供のように嫌がる赤髪の男を引っ張り出していた。
「みっ、みつかってしまった…。きっ、きみ、ひどいじゃないか…。男と男の約束はどうなったんだ?」
「…すいません。あまりに怖かったので…」
赤髪の男は僕の言葉に深く納得していたようだった。
「確かに恐ろしい…。もう少しおとなしければ嫁の貰い手もあるというのに…」
赤髪の男がそうつぶやくと、女の人は恐ろしい目をして優しく微笑み口調が変わった。
「王子様、後でお話があります。とってもとっても…大事なお話です…」
すごい怖い…。
「はっ、早く帰ろうか! 皆に迷惑をかけてしまってるからね」
「全くわかればいいんですよ。…おい! そこのコック!」
「はっ、はい!」
彼女は懐から小さな袋を取りだすと僕に手渡した。小さな袋は想像よりも重く、僕の手にぎっしりとのった。
「受け取れ…」
「…えっ?」
「いいか、よく聞け…。その中にはお前がこの先一生働いても稼げない大金が入っている。受け取ったからには今日のことは絶対に口外すっ…。…いったぁあああ! なにするんだ! このクソ王子!」
「君、そんな大声をだすんじゃない…。皆が起きてしまうだろ」
「あんたが頭殴るからだろうがぁああ…。…ってなにするんですか!? せっかく渡したのに!」
王子は僕の手のひらにあった小袋を手に取ると自分の懐に入れた。
「無粋なことをするもんじゃない。さあ、帰るぞ…」
「いや、しかしですね…。口止めをしておかないと…」
「さて、次はどこに遊びにいこうかな…」
「わっ、わかりましたよ」
彼女は説得するのを諦めたようだった。それを見ると赤髪の男はニッコリと笑い僕に近づき小声で言った。
「それではまた会おう…。帯剣した変わったコックよ…」
僕はサッと腰の辺りを見ると確かに剣がはみだしていた。
まっ、まずい…。剣が見えていたのか…。
「おい…また会おうって…。…あっ、あれ? …いっ、いない?」
寝ぼけてるわけじゃないよな…。
僕は自分の頬を軽くつねるとやはり痛かった。夢ではないようだ。
「まっ、まあいいか…。早く片付けして、ポテチ食べよう…」
僕はポテトチップスを冷ましている間、使った食器をテキパキと洗っていった。
「…よし、これで終わり! …それでは、いただきます!」
最初の一口目を食べると至福の時間が始まった。
…うまい。…うますぎる。コーラも飲もう…。
「はぁー…。生きかえった…。うますぎるよ…。これ…手が止まらない…」
もう、最後の一枚だ…。もう少し作ればよかったな…。
「…アル様、一体なにを食べてるんですか?」
声のするほうをむくとアナスタシアさんが大量の食器を持って入ってきた。
「ああ、ちょっとお菓子を作ってたんだ…。全部食べちゃったけど…」
「私も食べたかったですー。あっ、そうでした…。皆さんがお待ちしていますので、先程の部屋に帰りましょう」
僕はアナスタシアさんと共に部屋に帰るとアリスがすごい剣幕で王様に怒っていた。
「…なんでアルを巻き込むのよ!」
「いっ、いや、これには深いわけがあってだな」
「そんなの知らないわよ! …お父様なんて大ッキライ!」
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