第130話
僕が否定しようとするとシオンさんは言葉を遮り僕の手を強く握った。
「どんなことがあったかはわからないけどね…。私は生きてる…。皆もね…。なにも起きてないなら、それは悪夢なんだよ」
「それは…そうなのかもしれないけど…。残ってるんだ…。忘れたくても忘れなれない嫌なものが…」
「…じゃあ、忘れさせてあげようか?」
シオンさんはそういった後、ゆっくりと顔を近づけてきた。
「…シッ、シオンさん! …なっ、なにを!?」
「目を閉じて…」
僕はドキドキしながら、いわれた通り目を閉じた。すると、思いっきりデコピンされた。
「…いっ! 痛ってー…。なっ、なにするんですか!?」
僕がオデコを押さえていると、シオンさんは僕の目をトッーと見て一言いった。
「君って…ムッツリだよね…」
「なっ、なに、いってるんですか!? ムッツリじゃないですよ!」
「なんかそうやって、すぐ否定するとこなんて特にさ…」
「シッ、シオンさんだって、コビットの国で勝手にベッドの中に入ってきたじゃないですか! シオンさんこそムッツリですよ!」
「にゃっ、にゃれは違う!」
シオンさんは動揺してノスクみたいな口調になっていた。
「ほらっ! シオンさんだって否定してるじゃないですか!」
「ほっ、ほんとに違う! あっ、あれは君を守ろうとしてだにゃ! 決して私はニャッツリなのではにゃい!」
「どっ、動揺しすぎですよ…。ニャッツリってなんですか? ニャッツリって…。プッ、ハッハッハ…」
「たっ、確かにニャッツリってなんなんだろうな…。プッ、ハッハッハ…」
僕達二人はバカみたいに笑っていた。なんだか少しだけ気が楽になった。
「はぁー笑い疲れた…」
「…君は笑った顔がよく似合うよ」
「…そうですかね?」
「ああ…。もしも、君が忘れられないほど辛い事があるんならさ、皆で忘れるくらい楽しい思い出を作って上書きしていけばいい…。まあ、それでもダメならニャッツリなことしてやるからな!」
シオンさんは僕のほっぺを握ってニヤッと笑っていた。
「みっ、認めましたね…」
「ニャッツリはな…。ムッツリではない」
「なっ、なんですか。それっ…。もう笑かさないでくださいよ…」
「そうだ…。この前聞いた面白い話があってな…。実は…」
僕達はその後もバカみたいな笑い話をしてゲラゲラ笑ったあと、ベッドの上に背中合わせに寝ころんだ。不思議な事に背中から伝わるシオンさんの鼓動に落ち着いてしまい、あれだけ寝てるのにまたぐっすり眠ってしまった。
「…ん?」
眩しい…。朝か…。.寝過ぎで頭が痛いな…。
僕は目覚めたあとゴトゴトと揺れる馬車の音を聞いていた…。
昨日とは少し音が違うな…。人の声も聞こえる…。王国に入っているみたいだな…。
「よし、起き…」
おっと…。シオンさん、まだ寝てるみたいだな…。起こしちゃ悪いし、もう少し横になっておくか…。
「むにゃむにゃ…」
……可愛いな。
「……」
そっ、そうだ…。考えないといけない事があったんだ。少し考えよう…。
僕はスキルと裏スキルの違いについて考えた。
裏スキル…。確か神様はセンスなしみたいなものだっていってたな…。あいつも確か似たような事をいってた…。
「……」
だとしたら、基本的には悪いスキルって事でいいんだろう…。じゃあ、普通のスキルって…一体?
「ステータス…」
僕は小声でステータス画面を開くとスキル画面が点滅していることに気付いた。
スキルポイントがあまってます…か…。そういえば、あの時も点滅してたけど 見てなかったな…。えーと、振り分け画面っと…。
僕は振り分け画面をタッチすると、振り分け可能なリストにはステータスとメランコリーライフが表示されていた。
「……」
そうだよな…。ステータスもスキルの一つだ…。…じゃあ、なんでスキル画面には表示されてないんだ? まぁ、このタグ自体の仕様と考えるべきか…。いや、もっと製作者の意図を考えるんだ…。
「うーん…。難しいな…」
「んっ…。おはよ…。…って、君は朝からなにを悩んでるんだ?」
「ごっ、ごめん…。起こしちゃったかな?」
シオンさんは薄っすらと目を開けてアクビをしながら答えた。
「いや、そろそろ起きようと思ってたからいいよ…。…悪いんだけど、 少し布団をかぶっててくれないか?」
「…えっ?」
「…着替えたいんだ」
「…わっ、わかりました」
「…君の事、信じてるからな」
「…わっ、わかってますって!」
僕は後ろを向いて、てるてる坊主のように厚手の布団をかぶった。
なんだろう…。見えないとすごく見たくなるな…。いかん、いかん…。さっきの続きを考えよう…。そもそも、僕はこんなステータス画面をイメージしていない…。つまり、これはこの世界の製作者がルールに乗っ取ってスキルを分けて表示させているって事になる…のか?
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