第62話

「早く…助けに…」

 僕は助けに行こうとするお姫様の手を強く引っ張った。

「嫌な予感がする…。近づかない方がいい…。それより僕の上半身を支えててくれ。中の様子をみてくる」

「……」

 お姫様は震えていて、全く僕の話を聞いてないようだった。

 …まあ、無理もないか……。

 僕はしゃがみこんで、お姫様と視線を合わせた。

「時間がないんだ。協力してくれ。助けたいんだろ?」

「…ええ……」

「…いいかい? 僕は城の中を確認する為にスキルを使って、しばらく気絶したみたいな状態になる。もし、異変が起きたらなんとか時間を稼いでくれ」

「なんとかって…」

「なんとかだ。話している時間がもったいない。最悪、君の命が危険になったら逃げでもいい。いいね?」

「うっ、うん」

 僕はステータス画面を開きプレイデットを発動した。発動時間は一分にしたので急いで移動して城の中に入った。どうやら城の中の人は無事なようだ。話を聞くと城の周りのキノコは魔法で破壊しても、すぐに元の状態に戻ってしまうらしい。


「そろそろ一分か…」

 数秒後に僕は本体に戻っていた。お姫様は、僕が意識を取り戻した事を確認すると恐る恐る尋ねてきた。

「…どうだった?」

「中の人は無事だ。ただ、城からでれないみたいだ。あのキノコに見覚えはない?」

 僕が無事だと伝えると少し震えが収まったようだった。

「あれは魔力吸いダケみたい…。でも、あんな大きなもの見たことない」

「魔力吸いダケ?」

「魔石みたいな感じで魔力を貯める事ができるの…。でも、貯めるというよりは、魔力を吸収するって感じで…。このままじゃあ、中にいる皆が危ない…」

「なら、さっさとキノコの本体を倒そう」

 僕は立ち上がった。

「そんなの無理よ!」

「やってみなくちゃわかんないだろ?」

「だって、あなた…レベル5の雑魚じゃない!」

「なっ!? レッ、レベル、みれるのか!?」

 僕は素直に驚くと、再び泣きそうな顔をした。

「みれるわよ…。鑑定眼のスキル持ってるんだから…」

「ちなみに相手のスキルとかもみれるのか?」

「そうよ…。…なに…これ? あなたのスキル…レベルが上がり辛いって…。うわあああん…。もう、だめだよぉおお!」

 僕のスキルを見ると、お姫様は崩れ落ちて再び泣きだしてしまった。

 まあ、確かにこのスキルを初めて見たときはそんな気持ちになったけど…。

 ただ、少し希望が見えた。僕と違い相手のHPやMPだけではなく、このお姫様はスキルの詳細まで見れるのだ。もしかすると裏スキルも確認できるのかもしれない。確認しておこう。

「ちなみに裏スキルもみれる?」

「ひっぐっ…。裏スキルは効果は見えないけど名前だけならみれる…。うわっ…。でも凄い悪そうな名前の裏スキルが沢山ついてる…。うわあああん…。やっぱりだめだよぉおお!」

 シャルは大粒の涙を流して泣いていた。

 なるほど、名前だけか…。それでも十分だ。

「…まあ、否定はしない。でも、君が協力してくれれば、皆をすぐに助けられるかも知れない」

「ひっぐっ…。ほんとに?」

「ああ。その前に自己紹介しよう。俺の名前はアルだ。お姫様は、なんて呼べばいい?」

「ひっぐっ…。シャルでいい…」

 シャルはまだ少し泣いていたが、涙を拭いて僕の方を見つめてきた。僕はとりあえず、涙目のシャルを安心させる事にした。

「よし、シャル…。俺は確かにステータスは低いが、攻撃力や防御力には自信ある」

「…そうなの? …勘違いじゃなくて?」

「かっ、勘違いじゃないさ…。多分…。まあ、いざって時は、裏技もあるからさ。それにシオンさんのパーティーなんだから本当に弱いやつを連れてくる訳ないだろ?」

「確かに…。ひっぐっ…。私、頑張る!」

 やっと、泣き止んでくれた…。流石、シオンさんだ。ここにいなくても名前だけで十分相手を納得させることができる。

「よし、作戦はこうだ。今から君を乗せて本体がいそうな怪しそうな場所にいく。…で、君のスキルで全部の敵のステータスを見てほしい」

「ぜっ、全部!?」

「ああ…。訳があって俺は効果が悪いスキル持ちのモンスターは倒したくない。あと見てほしいのは、飛び抜けたステータスを持ったキノコだ。そいつが本体の可能性が高い…。いいね?」

「…うん、わかった」

「よし、作戦開始だ」

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