第63話

 僕はシャルを背に乗せて敵に見つからないように大きく上空へ移動し、マリシアウルネクストを確認しながら数百メートルの大きな円を書くように飛びまわった。これで簡易レーダーの完成だ。


「…こっちの方が反応強いな」

 僕は円の中心点をずらし、少しずつ狭めていった。

「なにしてるの?」

「これはレーダーだよ。悪い事してる奴がわかるんだ。ただ、なにがくるかはわかんないけど近い方から探ってけば、キノコの本体に当たる可能性が高い」

 僕は円の中心点を再度ずらした。

「すごい…。…シオンさんのパーティーだけあるのね」

「そりゃ、どうも…。そういえば、君が使える魔法を知っときたいんだけど…。教えてくれないかな?」

「私は土属性の魔法が使えて、ゴーレムを作って戦わせたり、土の槍を作ったり…。そんな事ができるの…」

「なるほど…土魔法か…」

 土魔法はあんまり練習できなかったな…。少し…飛びながら練習しておくか…。同時発動の練習にもなるし…。

 僕は飛びながら小さなダイヤをいろんな形に変えていくつも作っていった。とりあえず、シャープペンシルの芯が出てこなかったので一安心といったところだ。

「…後は魔法じゃないけど、薬を飲めばしばらく大きくなって戦える」

「大きくなるって…どういう意味?」

「う〜ん…。あなたぐらいの大きさにはなれて、単純な攻撃力や防御力も上がるの…。だから、伸縮性のあるこの服を着てるのよ。お城の兵士もブカブカの鎧を着てたでしょ?」

 そういえばそうだったな。あれには、そういう意味があったのか…。

 僕はそんな事を思いながら円の中心点を再度ずらした。だんだんと点滅が速くなってきていた。

「例えばさ…。自動操縦のゴーレムを何万体と作って相手を倒すって作戦は?」

「それは無理ね。オートタイプは作るのが…。いえ、望み通りの動きをさせるのが凄く難しいの…」

「ふーん…」

「例えば普通にキノコのモンスターだけを倒せって書いただけじゃだめなの。命令文に本当に精密に書かないと普通の大きな植物のキノコを倒すかもしれない。まあ、いきなり実践は無理ね」

「なるほど…。プログラミングみたいだな…」

 僕は元の世界で、悪戦苦闘した日々を少し思いだした。

「プログラ? …まあ、よくわからないけど、どちらかというとマニュアルタイプの方が使えると思う。見える範囲で指示をだせば必ずやってくれるから…」

「マニュアルタイプは格ゲーか…。苦手なんだよな…。格ゲーは…」

「…カクゲー?」

 僕は思っていたことが、声に出ていたことに焦った。

「あっ、いやっ、なんでもないよ。…おっ、どうやらこの辺みたいだ。端っこに降りよう…」

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