第50話
「…どうだった?」
「実は…」
僕はベッドから起きあがり、シオンさんにシルフィとの会話を説明した。
「…ってことで、どうやらその宝具を探さないといけないみたいなんですけど、祭壇なんて聞いたことあります?」
「…聞いたことないな。シルフィ様を一刻も早く助けたいのに…。私は、ギルドを当たってみる。君はアリス姫に聞いてきてもらえないか?」
「…了解です。…ところで、ふと思ったんですけど、なんでお世話係なのに様付けなんですか?」
そう…。これは今までシオンさんが勇者だと思いもしなかった理由の一つである。むしろ、さっきまでシルフィこそ実は勇者じゃないのかと思っていた。
「なんで…君がそれを…。いや…シルフィ様に聞いたのか!?」
シオンさんは驚きと喜びに満ちたような顔をしていた。僕は頷いて答えた。
「そうです」
「…シルフィ様は命の恩人でもあり…姉のような存在でもあり…武芸の師匠でもあるんだ。君の事は信じているが…今、確信に変わったよ。本当にいるんだね…。ここに…」
「はい…。さっきシオンさんの事に気付いて、シオンさんの頬を触って喜んでいましたよ。生きててよかったって…」
シオンさんは自分の頬を触った後、ポロポロと泣いていた。
「私を…私を…恨んでいなかったんだ。…本当にすみません。シルフィ様…」
「…恨んでなんてないと思います。…でも、一刻も早く生き返らせてあげましょう」
シオンさんは涙を拭った後、僕の方を見て答えた。
「ああ…。君のおかげで光が見えた。…本当にありがとう」
「じゃ、作戦開始です」
僕達は二手に別れ情報収集を始めた。僕は城にいるアリスに会いにいくと城の中から飛びだしてきたアリスが土煙をあげながら猛ダッシュで走ってきて僕の目の前に止まった。
「今、何時だと思ってるのー! 十四時よ! 十四時! お腹ペコペコよ!」
「ごめん。実はさ…」
僕は今までの経緯を説明する事にした。ただし、シオンさんが勇者ということは黙ってある。
「…ぐすっ。そんな…ひっぐ…ひどい事って…」
アリスは鼻水をたらしながら、ボロボロと泣いていた。
「…ってことで祭壇を探してるんだけど、それらしい場所…この辺にないかな?」
「ちょっと…待って…。落ち着くから…。ふー…ふー…。祭壇…祭壇ね…。うーん…。…エルフの王国にそんな場所あるなんて聞いた事ないけど、もしかしたら大臣ならなにか知ってるかもしれないわね。ちょっと待ってて…」
「ああ。わかった…」
アリスは城に戻り、しばらくしてまたでてきた。
「結論からいうとそんな話…おとぎ話くらいしか聞いた事ないって…。私もおとぎ話くらいしか知らないしどうしよう…」
「ちょっと待って…。おとぎ話ってなに?」
「おとぎ話だから、気にしないで…。どうせ役にたたないから…。お城の文献で過去の地理を探してみよ?」
「ちょっと待って…。アリス、おとぎ話の話を聞かせてくれない?」
「えっ!? …別にいいけど本当に有り得ない話だよ」
「聞きたいんだ」
僕がしつこく言うと、アリスは渋々話してくれた。
「じゃあ…。…むかし、むかし、あるところに勇者様がいました。勇者様は世界を平和にした後、世界を見守る為に自らの武器と魂を祭壇に封印する事にしました」
「…それで?」
「勇者様はそこに通じる扉をまずエルフの王国へ作りました。そして、扉を開く為の鍵をある国に渡し、扉を見つける為の道標をまた別のある国に渡しました」
「…ある国ってどこなの?」
アリスは両手を広げ、わからないって感じのポーズをした。
「それはわかんない。続きいくね? …勇者様は眠りにつくときにいいました。この世界が平和に保たれれば私の存在は必要ないだろうと…。そして、平和を願わなければ私は現れないだろうと…」
「…それで?」
「そうして、勇者様は深い眠りにつき、最後の地…神族の国に魂と武器を封印し、今でも世界の平和を願っているのです。…って、いうお話なの。まあ、よくある話よね…」
…もし、それが本当なら調べる価値はありそうだな。
「だけど、問題は道標と鍵をどうやって探すかだな…」
そんな事をいうとアリスは驚いていた。
「ちょっと、おとぎ話っていったでしょ! そんな扉なんて聞いた事ないわよ!」
まあ、確かにアリスの言いたいこともわかる。ただ、この世界が魔法が使えない世界なら僕もそんな事はいわない。…例えばデスマッチのように空間を作成する魔法を勇者が使えれば十分可能だろう。
「……」
「ねえ、聞いてるの?」
…いや、待てよ。…空間切断魔法や空間移動魔法が使えればそもそもそんなことしなくてもいけるのか。…もしかすると、そういった魔法でもいけるのかもしれない。
「……」
「もしも〜し…」
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