第51話
僕はステータスを発動してスペルデータを全て確認した。
…デスマッチやマジックコンバートはない。ない…か…。…だが、フルスキルフルになった今なら試す価値はあるだろう。
僕は目をつむり力を抜いた。そして、雑念を捨て集中し、ある魔法を想像した。
「俺を…勇者の祭壇へ! …テレポ!」
「……」
「……」
ひゅーっと風が吹いた。…どうやら、なにもおきてないようだ。
やだこれ…。凄く恥ずかしい…。宴会芸が滑ったくらい恥ずかしい。
「…ねえ、ふざけてるの?」
アリスの方を見ると冷たい目で僕を見ていた。
「ちっ、ちがう! 俺は本気だ!」
「本気でやってるんなら…。私…距離置こうかな…」
そういいながらアリスは一歩下がった。
「いっ、色々実験したいことがあるんだよ! …なあ、ところでアリスはどうやってファイアーボールを覚えたんだ?」
魔法の使えるアリスに聞けば、なにかヒントがつかめるかもしれない。
「…どうって? …普通に覚えたのよ。生まれた時に決まるでしょ? そんなの…」
「…生まれたときに決まる? どういうこと?」
「本当になにも知らないのね。…つまりね、生まれた時から使える属性って決まっているの。大抵は一個か二個の属性しか使えないわ」
「全然、発動できないのか?」
「うーん。…全く発動できない人もいるし、私はどっちかっていうと…うまく発動できないって感じかな…。まあ、補助魔法器具があれば他の魔法は使えるし、別に困らないんだけど…」
「じゃあ、補助魔法器具なしで八属性使えたら?」
「魔法の天才ね。でも、エルフの王国にいる一番凄い特級魔導師でも六属性だよ。…って、もしかして、アル使えるの!?」
「まぁ…」
アリスの方を見ると口が開きっぱなしになっていた。僕の発言に驚いているのだろう。
…なるほど。つまりいくら想像したとしても、魔法の素質がなければ使えないって事なのか…。もしくは生まれた時に裏スキルでやっかいなものがつかなければって事かな…。…ってことは、スネークロードスネークスは相手の魔法の素質も吸収しているのか!? …恐ろしいスキルだ。
「…ねぇ、アル? どうしたの? 急にボッーとして?」
「ごめん。ちょっと考え事…」
「ふーん…」
…じゃあ、スネークイーターを解除してやれば…。でも、待てよ…。おかしい…。そういえば、あの黒騎士を倒しても空間属性強化のスキルはなかった…。まあ、単純に考えれば黒騎士に素質はあっても、そこまでのセンスがなかったと考えるべきか…。もしくは…神様のように…。
「…なあ、アリス?」
「なに?」
「スキルやスペル…。…っていうか素質みたいなものを相手に渡す方法ってあるのか?」
「うーん。…聞いた事ないけど、あってもおかしくはないのかもね」
…もし魔王が自分の配下たちに神族のスキルやスペルを渡していたら恐ろしい事になるな。…まあ、とりあえずそれは置いといて、空間属性の魔法が黒騎士本来のスキルでないならあまり応用は効かない可能性もある。…下手に試して異空間に閉じこめられるのは嫌だ。
「…仕方ない。裏技じゃなく、正攻法でいくか…」
さて、そうと決まればからやることはもう決まっている。やることは二つ…。まず一つ目は…。
「アリス、お願いがある。同盟を結んでいる国にそういったおとぎ話がないか…。もしくは鍵や道標がないか聞いてみてくれないか? あと、資料室にそういった話がないかもね」
「まあ、いいけど…。そんなものないと思うけどな〜」
「一つの可能性だよ。聞いた事なくても無いとはいいきれないだろ?」
「いや、まあそれはそうだけど…」
「じゃあ、宜しく頼む…」
「りょうかいー。…って、えっ!? アルはどこに行くの?」
「ちょっと教会に行ってくる。聞きたいことがあるんだ」
「ふーん。ご飯食べたかったけど。まあ、仕方ないか…」
…確かにアリスの言う通り、お腹が減ってきた。
僕はお腹の辺りを触った。
「…じゃあ、ご飯食べてからにしようか。腹が減っては戦ができぬっていうしな」
「そうしましょう! でも、ちょっと待ってて…。調べるの時間かかるし、大臣に今の話を伝えてくる」
「りょうかい。まってるよ」
その後、要件を伝えてきたアリスが帰ってきた後、アリスのオススメのランチを食べにいった。
「やっとついた。ここよ、ここ!」
「…なるほど。なかなかいいとこだな」
「でしょ!」
そこは広場の噴水がよく見えるお洒落なお店でお昼過ぎだというのに店内は満席で、店員さんに尋ねると外の白い丸テーブルの席だけ空いているらしくなんとか座ることができた。お昼は青魚のムニエルとパンにコンポタージュのような味のスープだった。
「…って、ちょっと待てよ。アリス連れてきたら、お城に連れて帰らないといけないじゃないか!」
「大丈夫よ! ついて行くからっ!」
「じゃあ、誰が調べるんだよ」
「大臣がお詫びに調べるって…」
「アリス、お前…最初からくる気だったな?」
「へへっ、バレた?」
「…まあ、いいか。調べてくれるんだし…。さて、そろそろ行くか…」
僕達はそこから歩いていき、シルフィのいる教会についた。教会につくとシスターと子供達がちょうどどこかに行こうとしていた。
「あの…。教会入れないんですか?」
「ああ。シオン様の知りあいね。えーと名前は…」
「アルです。こっちはアリス…」
「アルさんとアリスさんね。あら、お姫様と同じ名前なんていいわね。でも、本物はおてんば過ぎて城中を困らせてるみたいだけどね。そろそろ落ち着いてくれればいいんだけど…」
アリスの方を見ると苦笑いしていた。
「そっ、そうですねー。そっ、そろそろ落ち着くと思いますよ…」
「…ですよね。あら、子供達が変な所にちょっと待っててね。連れ戻してくるから…」
シスターは細い路地に入り迷子になりそうになっている子供を連れ戻しにいった。
「くっ、ぷっ、はははは…。そっ、そろそろ落ち着くと思いますって…。アリス、なかなか面白いジョークだな。シスターも目の前のやつが本人だって知ったら…。…って痛っぁあああああ!」
アリスのやつが思いっきり僕の右足を踏みつけてきた。
「どうかした?」
「どうって…。…今、踏んだだろ!」
僕は右足をあげて足の状態を確認した。まあ、そこまでは装備のおかげで痛くなかったが…。
「私、落ち着いた子なんでそんな事するわけないじゃないですか? …それとも落ち着いてないと思いますか?」
こいつ、しれっとした顔しやがって…。まあ、挑発した僕も悪いか…。今回は素直に誤っておこう。
「…悪かったよ。…落ち着いたいい子だと思います」
「わかればよろしいと思いますわよ。あとわかってると思いますが、シスターにいったら…」
「…姫様、わかっております。トップシークレットですね」
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