第19話R

「ああ、ありがとう。いいもの貰って…」

「感謝の気持ちと…。まあ、プリンセスへのちょっとしたワイロだよ」

「しってたのか!?」

 白猫は少し不適な笑みを浮かべた。ふと隣を見るとプリンセスはフードを深くかぶり直し気付かないふりをしていたようだった。

「ごほんっ…。お気遣いありがとうございます。プリンセスというのは、私にはよくわかりませんが…。さあ…アル、早く次の街へ行きましょう」

 アリスは僕の手を強く握り宿屋を飛び出し、そのまま村をでると僕達は北にあるギルドがあるという街…ダイオンへ向かった。



「なあ、アリス…。疑問がいくつかあるんだけど?」

「…なに?」

「魔力を持ってないやつってのはいないのか?」

 僕は地面の小石を蹴り立ち止まった。一週間近く過ごしたが、この世界は魔法に依存しすぎている。魔力無しではとても生きられないんじゃないかと思っていた。

「うーん…。いるかもしれないわね…。でも、魔石があるから大丈夫なんじゃない?」

「…魔石?」

「今、あなたが蹴飛ばした石とってきて…」

 僕は草むらで止まっていた青色にキラキラ光っている石を拾った。僕は太陽の光に照らして何度もみたが、至って普通の石だ。

「…これ?」

「うん…。見せて…」

「はい」

「…純度は低いけど、これも魔石ね。これくらいだと少しくらいなら魔力をこめれるわね。…これもあなたが住んでた所にはなかったの?」

 魔力が込めれる? なるほど…。つまり…電池みたいなものってことか…。

「少し種類が違うものならあったかも…」

「ふーん…。まあ、みてて…」

 小さな小石を手のひらに乗せてアリスは目をつむると少しづつ青色の光が強くなっていった。アリスがゆっくりと手を開くと、青い耀きを放って魔力のようなものをその石から感じ取れた。確かにこれは魔石のようだ。

「…すごいな」

「まあ、こんなもんでしょう。…はいっ!」

 僕は光り輝く青色の魔石を手渡された後、ステータスを開きアイテム画面の魔石の項目を探した。そこにはこう書かれていあった。

 …あったぞ! なになに…。


 〈魔石〉自分のMPの代用として使用できる。使用できるMP180 価値1800ギル。


「…ん? これ…売れるのか?」

「ええ、売れるわよ。魔力が少なくても強力な魔法を使えるし…。あんまりよく知らないけど…」

 なん…だと。たしか魔人化したときのMPは…。

「…ちなみにMPが十五万くらいだったら?」

「あんまり相場がよくわからいけど、百五十万ギルじゃない? …でも、それだけいれれる魔石も高いわよ」

「ちなみにMPってどうやったら回復するの?」

「…寝れば回復するんじゃない?」

「…しまったああああぁ! 早すぎたぁああああ!」

 …RPGには超重要な点がある。いや、むしろリアルの方が一番重要かもしれない。そう、金だ! まだ、腕輪をつけるんじゃなかったぁああああ!

「…きゅ、急にどうしたの!?」

「……なっ、なんでもない!」

「…ならいいけど……」

 …だが待てよ……。そう…。つまりだ…。悪用しなければいい…。つまり…この世界を救うためアイテムを買うのはオッケーじゃないか?

「……」

 …いや、これ全然楽しくないな。自分の為には使えないけど、それ以外ならオッケーってまるで会社の経費じゃないか…。たまにニュースで見るけど悪い奴が大金を横領したくなる気持ちも少しはわかるな。

「…はぁー」

「さっきからどうしたのよ? 今度は急にため息ついて…」

「いや…」

 …いや、でも待てよ。これは以外に使えるんじゃないか? 最初の四天王のHPはかなり高い。それを二十発程度の魔法を弱点とはいえぶち込んで倒した。

つまり、一発が相当なダメージだ…。はっきりいって本来の僕のレベルでだせるダメージじゃない。

「……」

「…ねぇ、聞いてる?」

 これは神の装備によって魔法攻撃力が上乗せされてる裏ステータスって訳だ。予想出来ることは、HPとMPはレベル通りだが攻撃力や防御力については上乗せされているんじゃないのか?

…もし、MPに余裕ができればあの恐ろしいスキルも使わなくてもすむかもしれない。

「…なあ、一番小さくて相当MPを貯めれる魔石ってどのくらいするんだ?」

「うーん…。一千万ギルってとこじゃない?」

「高いな……」

「そりゃそうよ…」

 僕はアリスに魔石を返した後、カエルの人形のような財布を取り出した。中を見るとそこまでは入ってはなさそうだ。

「うーん…。…多分ない」

 それにしても…あいつ…一体いくら取りやがったんだ…。

 僕は勝ち誇った顔で旅してるであろう女魔人の顔を思い出した。今思い出しても腹が立つ。いつか…絶対…やり返す……。

「でも、そんな魔石この辺じゃ売ってないかもね。…さあ、もういいでしょ。早くいきましょう」

「…そういえば、なんで歩きなんだ? 飛んだ方が早くないか?」

「…また、変なこといって。飛べる訳ないでしょ!」

 僕は思いっきりジャンプすると、一定の高さまであがりふわふわと浮かんだ。僕は辺りをスイスイと飛んだあと、アリスの元に帰ってきた。

「…ほら、飛べるだろ?」

「なななっ、なんでそんなことできるの!? もしかして特級魔導士なの!?」

 アリスはあまりに驚きすぎて腰を抜かしていた。てっきり誰でも出来るのかと思っていたんだが、どうやら違うようだ…。

「…特級かはよくわからないけど、その魔石貸してくれたらすぐにギルドのある街に行けるよ」

「…私はどうすればいいの?」

 うーん…。手でも触って見るか?

「…その魔石持ったまま、俺の手掴んでみて?」

 アリスは不安そうな顔をして僕の手をゆっくりと掴んだ。なんとなくだが、僕の魔力がアリスに伝わるのを感じた後にふわふわとアリスが浮かびだした。

「すごい! 私、飛んでる!」

「じゃあ、ちゃっちゃとダイオンヘいくよ」

「いけーー!」

 のりのりだな…こいつ…。ジェットコースターとかあんまり怖くないタイプなんだろうな…。

 そんな事を思いながら周りの景色を置き去りにして、超スピードで僕達はあっという間にダイオンヘついた。

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