第18話R
「ただいま…」
「お帰りー…。…って、なにしたの!?」
「いや、まあ色々とひどい目にあって…」
「…大丈夫?」
アリスが心配そうな表情で僕に近寄ってきた。僕は装備を外して、ソファーの近くに置いて上着を脱いだ。どこからどう見ても泥だらけだ。
「大丈夫なんだけど、せっかく買ってきてもらった服汚しちゃって…。服はまだ乾いてないよね?」
「いえ、乾いてるわよ。…というか、あの服すごいわね。魔法で水かけた後すぐに乾いたわよ。なにかの魔法かしら?」
「…そうなのか?」
もしかしたら魔法防御に耐水性がついているとか? …まあ、どうでもいいか。
「もう一回シャワー浴びてきなよ。服洗っといてあげるから…」
「じゃ、お言葉に甘えて…。あと、パンとコーラ買ってきたから食べてもいいよ」
「…なんだっけ? 炭酸は入ってるの?」
「入れてないけど、汚れてるから入れたいんなら、風呂からあがるまで待ってて…」
「うん。服、洗ってまっとくからね…!」
僕はもう一度シャワーを浴びて髪を乾かして、神様からもらった装備に着替えた。部屋に入ると物干し竿に服がかけてあった。
「アリス、ありがと…」
「いえ、気にしないで…。それはいいんだけど早く炭酸入りコーラ作ってよ!」
「わかったよ」
「はやくー」
僕は袋からボトルをだして氷魔法でやや液温を下げ風魔法で炭酸を入れた。まさか…自分がコーラ製造機になるなんて夢にも思わなかった。でも…魔法って便利だな……。
「はい…。今度は気をつけてね…」
「わかってるわよ。…いただきます!」
アリスは顔をそらして少しづつコーラを飲みパンをつまんでいた。僕も自分のをちゃっちゃと作って食べよう。
「…どう? おいしいかい?」
「ええ、確かにこれを飲んだら普通のコーラは飲めないわね。この補助魔法器具を作ったら売れるんじゃない?」
「…補助魔法器具?」
「笑かさないで…。冗談やめてよ。また吹いちゃうでしょ。さっきドライヤーの音が聞こえてきたの知ってるだから…」
「…つまり、魔法が発動しやすくなる器具ってこと?」
「もう、そうよ! からかってる?」
「いや、ごめん。本当に知らないんだ」
つまり、魔法を使いやすくする器具ってことか…。なるほど、みんな使えるんなら機械なんていらないわけだ。
「それもあなたの住んでるとこにはなかったの?」
「いや、まあ魔法で大抵なんとかなったし…」
「…嘘ついてない?」
…なかなか鋭いな。
「まあ、なんというかこれとは違った代替品みたいなのがあって、生活には困らなかったよ」
「そうなんだ。私も知らない事たくさんあるのね」
僕とアリスは遅めのご飯を食べた。僕は食べながらお金の事も聞いた。結局印字されいる数字通りでいいみたいだ。
次に世界のことについて聞いたけど、国とのいざこざとかそんな話だった。まあ、そんなこんなで色々アリスから情報を聞きつつ滞在していたが何事もなく一週間過ぎた。
「…今日も天気がいいな」
僕は、ふと空をみた。窓から空を見上げると暖かな日差しが照らしていた。のほほんと僕はベッドに横になりながらステータス画面を開きマリシアウルネクストを確認した。
「今日もこない…」
あれからいくら待ってもこの周辺を探索してもマリシアウルネクストは反応しなかった…。考えられる理由は三つ…。
その一、悪意はゆっくり近づいている。そうゆっくり…非常にゆっくりすぎるというか超スローすぎる可能性はある。
そのニは、僕が強くなりすぎて悪意を悪意としてスキルが判定できていない。
その三、この村でのイベントは現状ない。実際、悪意自体もイベントのようなものなのかもしれない。なにもしなければなにも起きない。そんな可能性もある。
「まあ、いずれにしてもここからそろそろ次にいくか…」
さて、次に向かうのはエルフ王都…ではなくギルドがあるという町だ。
…ほんといわなきゃよかった。
なぜ、エルフの王都ではないのかというと、アリスを連れて行った後に僕はギルドに行くとアリスに伝えると私も行くと駄々をこねだしたので仕方なく連れて行くことになったのである。
「…どうしたの? ボッーとして…」
「いや、なんでもない…。はぁ…」
全くこいつは…。
「ねえ、アル? 今から出発するのよね?」
「ああ、そのつもりだ。準備はいいかい?」
「ええ、オッケーよ」
僕達は階段をおりカウンターの上で丸くなっている白猫に挨拶をした。白猫は僕たちに気づくとスッと起き上がった。
「そろそろ俺達は行くよ」
「そうかい? じゃあ、これを持ってきな」
白猫は、尻尾で鍋の中にある小さな鈴をつかみ僕の手のひらにのせた。綺麗な白い猫型の鈴だ。鳴らしてみると、不思議なことに猫のような声が聞こえる。
「…これは?」
「次の町に行ったら赤猫亭って書いてあるとこに泊まりな。これを見せたら多少安くしてくれるよ」
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