第16話R
「なにか…こう…。異変とかないかな?」
「うーん…。ジュースが飲みたいなー。飲んだら思い出せそうな気がする」
「…なんのジュースがいるんだ?」
「じゃ、コーラで!」
「コーラ?」
「うん」
…コーラ? …コーラがこの世界にあるのか!? 異世界でしばらく飲めないとあきらめていたが、まさか存在しているなんて…。
「どこに売ってるんだ!」
「…えっ? 町の雑貨屋とか普通に売ってるわよ。宿の目の前にあるわ」
「ありがとう! すぐ買ってくる!」
「ありがとう? …変な人ね」
僕は足早になり部屋を出て階段を降りた。雑貨屋は宿を出て本当にすぐ目の前にあった。そこには薬品だけでなくスコップ、バケツに釣り竿までなんでもあった。カウンターにはおじさんが座っている。
「…あのコーラってありますか?」
「ああ、コーラね…。何本いるんだい?」
「にっ、いえ、三本下さい」
僕がそう言うとおじさんは金属製のボトルをカウンターの下から三本だした。
「はい。三百ギルだよ」
三百ギル…。しまった…。神様からお金をもらったけど、お金の価値がわからない。
僕はダサい緑色のがま口財布をあけると中には無数のコインと紙幣が入っていた。この財布、重さは感じないが相当入っているようだった。僕は財布の中からコインをいくつか手に取ると銀色のコインに100という数字が書いてあったので、試しにそのコインを三枚出しカウンターに置いた。
「…これでいいですか?」
「はい、ちょうどね…。袋はいるかい?」
「いえ、いりません」
僕はキンキンに冷えたコーラを手にとり光の早さで宿に持って帰った。
「ただいま!」
「はっ、早いわね!?」
「はい、コーラ!」
「ありがと…。じゃあ、いただきます」
「ああ、俺もいただこう…」
僕は、金属製のボトルを手にとりコーラを飲んだ。久しぶりのオアシスだ。
…ん? こっ、これは…。
「おいしいわね。やっぱりコーラ最高!」
「……まずい…」
だが、それは僕が待ち望んでいるものではなかった。これは例えるなら炭酸の抜けた甘ったるい砂糖水だった…。
僕は一口飲むと、ステータスからアイテム画面を開きコーラを探した。簡易的な素材レシピを見るとやはりというべきだった。
…あった。なるほど変なものは入っていないけど、入っていなければいけないものが入ってない。
「まずいって、あんなに飲みたそうだったのに?」
「いや、まあそうなんだけど…。そういえば、アリス…質問があるんだが?」
「世界で困ってることだよね?」
「いや、先に教えてほしいのは炭酸をだす方法だ」
「…はい?」
僕は炭酸の入ってないコーラをドンッとテーブルに置いて、指を指した。
「二酸化炭素を液体の中に…。いや、コーラの中に溶け込ませる魔法はないのか?」
「ごめん。なにいってるのかわかんない」
「じゃあ、風魔法を密閉した瓶の中で発動する事はできるのか?」
「わかんないわよ。やってみれば?」
僕はあけてない冷えたボトルを手に取り、風魔法を発動させた。ゆっくりとゆっくりと思いを込めて呪文を唱える。
「にさんかたんそ~…。にさんかたんそ~…。はいれ〜はいれ~…」
「…変な呪文……」
変とはなんだ…。…ん? ボトルが膨れてきてる。一旦、このぐらいで止めておこう…。
僕はテーブルにボトルを置き、急いで宿に備えつけのコップを用意した。
「さあ…開けるぞ…」
僕が栓を開けると馴染みのあるシュワシュワとした泡が弾けていた。僕はゆっくりとコップに注ぎ、味わいながら飲み干した。
「…ぷっはー……。…うまい! これ、これだよ!」
「え~私にも飲ませて!」
「…断る! 一本コーラはあげただろ。それ飲んでろよ」
「けち! もう教えてあげない!」
ぐっ…。痛いところをついてくる。
「…わかった。コップ持ってこいよ。少しだけだぞ」
「うん!」
「…はい」
アリスは小さなバッグからピンク色のコップを取り出して持ってきた。底までしか入れず一回渡すのは王道だろう。すぐに少なすぎると文句を言われて跳ねされてしまったが…。
「…ありが……。…少なっ! …このくらいしか教えなくていいんだね」
「…冗談だよ。でも、ほんとに少しだけだからな」
まあ、少しとはいったけど…。一応、コップ一杯はついでやろう…。
「…今度はちゃんと入ってる」
「…さあ、飲んでみろ! これが真のコーラだ!」
「…うん!」
アリスは口に含んだ次の瞬間、一気に僕の顔面に吹き出した。僕の顔がコーラまみれになり、ベチャベチャしている。
「……」
なんだこのプレイは…。
「けほっ、口の中で爆発した。なによこれ…。…あれ? でも、なれると美味しいかも…」
僕は手で目を拭うと、アリスは美味しそうにコップの中の残りのコーラを全て飲み干していた。
「おい…。まずはいうことあるだろ…」
「…ご馳走様?」
こいつ…笑ってごまかす気か…。
「……」
「ごめんって…。冗談だよ。タオル持ってくるね」
アリスは青色のタオルで僕の顔を拭いたあと、タオルを頭に乗せた。僕はガシガシと頭や身体を吹いたが、あの独特の匂いが身体中からプンプンする。
「……コーラくさい…」
「洗濯する? 着替えもってる?」
「いや…ないな…」
「じゃ、私が雑貨屋で着替え買ってくるから、シャワー浴びてきなよ」
「そうだな…。じゃあ、頼むよ…」
僕は脱衣所に入ると、パパッと服を脱いで、コーラでしみる目をなんとか開けて浴室に入った。そして、シャワーのヘッドを手に取りシャワーを浴びようとした。
…ん? 蛇口がない…。ホースがついてない…。これ…シャワーじゃないのか? どうやって…こんなもんで…シャワーを浴びろと…。クソっ…魔法でも使えってのかよ……。いや…そうか…魔法か…。
僕は水魔法をシャワーヘッドの中で発動した。すると、とんでもない勢いで水がでてきた。
「なるほど…」
シャワーがでてきた…。だけど冷たいな…。暖かくならないのかな?
「…あれ? なんか暖かくなってきた…。気持ちいい…」
「すごいな…」
一つ分かった事がある。この世界の機械の文明が遅れてると思っていたが、魔法でなんとでもなるから育たないのだ。むしろ、魔法文明が優れすぎている。
「…ん? …なんだこれは?」
ふと、下を見るとピカピカとなにかが輝いていた。何かの灯りかと思っていたが、どうやら違う。
まさか…まさか…これは…光の輪が…光の輪が…僕の大事な…大事なとこに…。
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