第10話R

 僕は振分け画面を確認するとスキルポイントが10ポイントほどたまっていた。その後に振り分ける事が出来るリストを見ていくと嬉しい予想通りの文字が浮かんでいた。

「…よし!」

 まずはこれに振ろう…。…ステータスだ!

 上限いっぱいまで振り完ストさせた後にステータスのメイン画面を再度開くとレベル、HP、MPの他に耐性、体重、身長、血圧、脈拍、年齢そういったデータが追加されていた。タグはアイテムデータとモンスターデータ、スペルデータ、MAP等が追加されていた。


「…なかなか優秀だな……」

 まずはアイテムデータ…。これは所持しているアイテムの効果、価格、個数そういった情報が書かれている。サーチ機能もあるようだ。

「さて、スキル画面の説明は…」

 変わってない…。裏スキルの説明…。これも変わったところはない。

「…どうするかな……。新スキルはランダムみたいだし…。悩ましい…。残りのポイントなにに使おう…」

 僕は悩みながら振分け画面を見ていった。すると、ある画面で手が止まった。

「うーん…。これも微妙だな…。…あれ?」

 …妙だな。…スキルリストと振分け画面に表示されているリストが微妙に違うみたいだ。…なにか理由があるのか? …まぁ、困るわけでもないし別にいいか……。

 しばらく考えた結果、残りのポイントの振り分け先はアンスキルフルとパーバスセットのコンボで魔法の強化をするという手もあるが、あえて新スキル習得に使った。何よりそのほうが面白そうだったからだ。


「よしっと…。…これでよさそうだな」

 画面にはどこからともなく二つ宝箱が現れ、ドキドキしながら開くを押すと僕は新しいスキルを覚えたようだった。

「…さーて、一体どんな効果なんだ?」

 僕はゲームをするようにワクワクしながらスキルの説明画面を覗き込んだ。一つ目のスキルは、ドクターペイン。聴診器をぶら下げだ骸骨が注射器を持っている。

これは任意発動型であらゆる状態異常に好きな時間なれるみたいだ。

「うーん…」

 …これはハズレだな。

 そして二つ目のスキル。名前はスネークロードスネークス、このアイコンは曲がりくねった道を蛇が歩いているみたいだ。説明を見ると、この効果は…。

「大地を汚した許されざる者よ。囚われの星よ。地を這う生命よ。哀れな羊たちよ。怯えるがいい。今一度、根源たるその力を一つにし贖罪とする…か…。ふーん…。…どういう意味なんだろう……。…なんか…これだけなんか文面が凝ってるな……」

「…きゃあああ! 魔物よぉお!!」

「…どっ、どこだ!」

 ピンクのドレスを着た貴婦人が涙を流して腰を抜かしている。僕はすぐさま剣を抜き、目線の先を追ったが、特に魔物の姿は見えない。

「……」

 いない…。…勘違いか?

 貴婦人の様子を見ると、髪は乱れて、キレイなドレスは土の汚れでダメになっている。腰の抜けた彼女はそんなこともお構いなしにどこかにいる魔物からこの場を去ろうと必死だった。

「…たっ、助けて!」

「……」

 …やっぱり…いないよな。…聞いてみるか……。

 何度確かめてもいない。上を見ても横を見てもこの辺には僕と彼女しかいない。僕は彼女に近づいて、事情を聞くことにした。

「…ひぃいい!」

 彼女はなぜか更に取り乱し、羽をもがれた蝶のように暴れ回っていた。

「…あっ……」

 そうか…。流石に剣を仕舞わないと物騒だな…。これじゃあ、僕が襲ってるみたいに…。

「ちっ、近…な……」

「…ん?」

 剣が黒いぞ…。こんな色だったか…。違うよな…。これじゃ…まるで黒騎士が持ってた剣みたいだ………。はっはっは…まさか……。

「近づくなぁー! この化け物ぉおお!!」

 そう…。そのまさかだった…。これは常時発動型だったのだ。

「違う! 俺は…」

 言い訳をしようと思ったが、彼女は泡を吹いて気絶してしまった。僕は即座にステータスをメインに切り変えると、化物じみたステータスに確かになっていた。

「えっ、HP十万!? MPも五万って…」

 それにこのスキル…。火属性無効化に水属性無効化、風属性無効化、土属性吸収、氷属性吸収、雷属性吸収、弱点特攻、オールヒールって…。

「よっ、よく倒したな…。裏スキルは…。なるほど裏スキルに雷属性吸収無効ってのがあるのか…。それで倒せたんだな……。…って、冷静に分析している場合じゃない……!」

 ……兵隊達が来る前にアリスには悪いが逃げよう…。



 僕は村から逃げて気付けば例の場所にきていた。黒騎士を倒した場所だ。僕の気持ちとは裏腹に辺りはとても静かだった。

「…まずいな……」

 このスキル一番ヤバいスキルかもしれない…。

 確かに戦った敵の技や魔法を盗むある意味勇者スキルかもしれない。でも、ひどいデメリットもある。まずは外見の変化だ。おそらくゴブリンと黒騎士を混ぜ合わせた酷い外見になっているのだろう。自分ではよくわからないが、あの悲鳴だ。相当ヤバい外見なのだろう。

「…あれ? この兜、顔隠せるのか…。まぁ…今更だけど、隠しとこう…。はぁ…。どうするかな…。これから……」

 そして、もう一つのデメリット…。達の悪い裏スキルも吸収してしまう。

もし、モンスターを無造作に倒してしまい、裏スキルに全属性弱点なんてクソスキルがついてしまったら…。この状態…強いが今後、下手に雑魚モンスターが倒せない……。


「裏スキルのない敵…。あとは四天王…。魔王ぐらいか…」

「……貴方、生きていたのね」

「……」

 …ん? こいつはあの時の女魔人か…。アーデルとかいってたな…。

「……ほんとに心配したわ」

「……」

 こいつ…黒騎士が死んで喜んでたろ…。

「…何しに来たのかって感じね? 私は魔王様の命令で死んだ貴方の体を取りに来たのよ…。ワザワザね…。…聞いてるの?」

「……」

 …何か話したほうが良さそうだな。とりあえず、お礼でもいっておくか…。 

「ふんっ…ダンマリね…。一回も話した姿を見たこともない」

「っ……!」

 …あぶねえー……。もう少しで話すとこだった。沈黙キャラなのね、こいつ…。

「なんで貴方みたいなのが…気に入られて…。いえ、なんでもないわ。さっさと魔王城に帰りましょう…」

「……」

 …魔王城か……。……魔王城だと!?

 アーデルが指をパチッとならして背を向けると、赤い魔法陣が地面に現れて光が僕たちを包んだ。僕が心の中で頭を抱えていると、彼女はもう一度指を鳴らした。

終わった……と思ったが、どうも様子がおかしい。さっきまでの赤い光は徐々に薄暗く消えていっているものの、魔法が発動している感じがない。

「……やっぱりやめた…。…魔王様の命令通りにしましょう。…死んだ貴方を持ち帰ればいいのよね」

 振り向いた彼女は、邪悪に満ちた笑顔でそういった後、遥か上空に飛んだ。見えないはずの強烈な冷たいはずの殺意は、灼熱のような熱さを感じる。

「……」

  …なるほどこういう展開か……。…面白くなってきた。

 僕は剣を抜き戦闘態勢に入ると同時にスペルデータを開いた。数々の魔法がズラリと並んでいる。彼女はあたり一面に魔方陣を描きながら、旋回していた。

「さぁ、どう料理してあげようかしら…」

「……」

 武器も出さず距離をとったということは相手は明らかな遠距離魔法タイプ…。こういう相手には得意な魔法を封じてやればいいが…。

「…まずはこれね!」

「…っ!」

 まさか…今度は俺がやられる番になるなんてな…!

 僕は雨のように降り注ぐ雷をかわしながら、スペルデータを確認すると黒騎士が持っていたと思われるスペルが予想通り表示されていた。

「…はははっ! 雷が弱点だったのは本当だった見たいね!」

「…ぐっ!」

 危なっ…! ちょっとかすった…。でも、ステータスを上限まで上げたのは正解だった。戦略を大幅に広げる事が出来る。特に使えそうなのはこの三つ!


〈マジックイーター〉相手の魔力を吸収し、自分のMPに変換する。

〈デスマッチ〉どちらかが勝つまで異空間から逃げられない。

〈マジックコンバート〉魔力をパワーに変換し攻撃力に上乗せすることが出来る。


 ネーミングセンスは昔のゲームみたいだけど、なかなかシンプルで強い魔法だな。これなら…。…というかこれは楽勝じゃないか?

「さて…遊びはそろそろ終わりにしようかしら?」

「…同感だ! …デスマッチ…発動!」

「…なにっ! これは!?」

 辺りは燃えるような真っ赤な炎に包まれていき、空をも飲み込んだ。だが、不思議と熱くはない。気付けば傷だらけの大理石のようなフィールドに僕は立っていた。不思議と昼のように大理石の周りは明るい。


 

 

 

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