第70話 渋谷から一駅

 夢のなかに実在する地名や場所が出てくるとき、夢見ている間は「そういうもの」と受け止めているが現実の当地とは違うことがよくある。

 今回の夢はそんな夢あるあるが強く出ている。地名と、一応の物理的法則しか共通点のない風景が広がっていたのだった。


 私は何かの習い事のために出先にいた。

 電車で帰ろうとして、駅にいて、どの路線を利用しようか迷っているところだ。


 自宅の最寄駅までのルートを事前にPCで検索し、リストにしてメモ帳に打ち込みプリントしたA4用紙を見ている。

 

 それによるとルートは5、6パターンもあり、最寄駅はいくつかの路線それぞれにある。

 現実の自宅とは違う場所に住んでいるらしい。

 知っている地名から矢印が出て、見たこともない風変わりな地名に向かっている。


 リストのなかに「渋谷から一駅」というルートがあった。これにしよう。

 まずは渋谷行きの改札へ向かおうとして顔を上げた。


 視界の隅に、駅まで歩きながら眺めたのと同じ大草原が広がっていた。

 明るすぎない爽やかな空模様だった。




 


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