第61話 豪邸とゲーム
豪邸に招かれた。
大きな窓から広々とした庭の木々が見える。床にはワインレッドの地に花束模様の絨毯。
こんな上品な環境に暮らしたことなど全くないのに、なぜか懐かしい。
住人一家と庭に出ると、巨大な庭掃除ロボットが稼動していた。ゴミを収容する部分を大きくしたルンバみたいなもので、これは上からゴミを投げ込むこともできる。
大きな植木の剪定をしている庭師がいらない枝を切り落とすと、待ち構えていた掃除ロボットのゴミ入れが受け止めている。
とんでもない事が起こった。
奥さんは前からこの庭師を何故か嫌っていたらしいが、庭師はまた奥さんの気に入らない言動をしたようだ。
奥さんは苛立たしげな表情で、すぐそばにいたべつの使用人の手首を衝動的に掴むと、彼が手首につけていた腕時計のような形の機械のボタンを押した。
するとどういう仕組みか、庭師は木から落ちてロボットのゴミ入れに……!
奥さんは自分のしたことを後悔し、ボタンを押した自分の右手をめちゃくちゃに痛めつけた。右手の甲がボコっと腫れ上がった。
……という海外ドラマだった。
何だこの「物質文明を風刺する!」をド下手にやったような話は。
平和な庭とお屋敷を返せ!!
しかし庭師や奥さん以上に風景の心配をしている時点で私も風刺される側なのだろう。
私は金持ちでも何でもないけれど……。
それに、屋敷を訪れてすぐの場面のときは私の足が分厚く柔らかな絨毯を踏んでいた。画面越してはなく。
嫌なことが起きたら「ドラマの中のこと」になるのも、いかにもダメ人間の見る夢という感じがする。
次にゲームをやった。
学園もののアドベンチャーゲームらしい。
マルチエンディングだが、終わり方が気に入らない場合は選択肢を遡って修正して続きを再開できるシステムらしい。
その筈だが、なぜか始めからやり直すことしか出来ず、物語の全貌がほとんど分からないうちに目が覚めてしまった。
※ゲームは実在の性格診断ゲーム"Refind Self"に進め方が似ている。学園モノでないことと再開の仕方以外は。
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