第41話 そんなはずはない

 大学生でサークルに入っており、学園祭の準備中だ。

 サークルの名前と活動内容と一部のメンバーだけは現実の学生時代と同じだったが、学園祭でやることが、現実と夢とで全く違った。

「そんなはずはない」と言いたくなることばかり起こる夢だった。

 今は夢の話だけをしよう。


 *  *  *


 私たちのサークルが学園祭でやる事は、なぜか源氏物語の劇だった。

 音楽や演劇の小規模なサークルがライブハウス代わりに利用する、学内では比較的小さな建物内のホールで舞台に立つことになる。

 ちなみに大規模なサークルが使うホールは他にある。


 当サークルに割り当てられた出演時間は何時で、私は誰の役なのか、それどころか誰も台本を配られないまま、「とにかく着物を着て集合」と言われた。

 

 現実の私は学生のころ自分で着物を着られなかった。この点はいまのほうが進歩している。しかし源氏物語の衣装に相応しい品などあるはずもない。でもそれはサークルの皆もおなじだという。


 私は何故か、集合時間は午後3時だと思い込んで荷物の整理をしていた。途中でわけがわからなくなった。

 そこに話しかけてきた女子学生がいた。

 当サークルのふだんの活動に興味があるという、前途洋々たる一年生。

 入部すれば陶芸部と掛け持ちになる、落ち着いた雰囲気の美人だ。おしゃべりしているうちに集合時間が迫ってきた。


 小人数の当サークルにとって新メンバーほど有難いものはない。この人を勧誘できれば遅刻も忘れ物も、最悪、舞台の欠員も許してもらってお釣りがくるかもしれない。

 虫のいい願望だが、そうなるといいな。


 そんなことを思いながらざっと荷物をまとめ、彼女を連れて集合場所のライブハウス代わりの校舎へ向かった。


 その校舎に着いて利用者受付にいる男子学生におそるおそる声をかけ、

「もしかしたら遅刻しすぎてもう入れないかもしれませんが……」

と付け加えると、彼は

「そういうのはないので、ひとまず楽屋へ」

と言ってくれた。

 むしろ不安が増した。


 先輩は私の大遅刻を怒っているだろうし入部希望者が入部するとは限らない。

 でも私は諦めて逃げるわけにいかないんだな、と思った。


 目が覚めた。



(了)


 


 

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