第27話 懐かしい親戚の家

 日が伸びてきたこの時季の夕方に、何かの用事で親戚の家に行った。車に乗せて連れてきてもらった。


 その親戚は私たち家族と仲が良く、来てくれることは多いが、こちらからその人の家に訪ねたことはほとんどなかった。


 その人の自宅は高台にあり、長屋を連想させる平屋の集合住宅で、3世帯分の部屋が並んでくっついている。各部屋はさほど広くないが、どこかモダンで洒落ている。

 自宅兼事務所として仕事しているスーツ姿の年配の男性が、丁度その時いた。

 親戚は、この集合住宅の一室で一人暮らししている女性だ。


 車をしまうとき、駐車場も建物の延長のような細長い屋根の下で3台分に区切られているのが見えた。


 そこで私は思い出した。幼い頃、遊びに来たことがある。とても楽しかった。

 建物は改装されているし親戚の家族構成も違ったかもしれないが、場所も、だいたいの構造も同じだ。

 懐かしいような、伏線がキレイに回収されて嬉しいような良い気分だ。

 このときの訪問も和気藹々と過ごせた。


 数日後、私はこの親戚に恋人を紹介するため、二人で訪ねて行こうとしていた。

 不安がるかと予想した恋人も機嫌良く、楽しいデートの雰囲気だった。


 高台の敷地に入って見晴らしのよい景色を眺めながら、親戚の女性が玄関に出てくるのを待つ。

 その間に恋人に「長いこと忘れていたけれど、子供の頃ここに遊びに来たことがあるんだよ」というような話をした。


 目が覚めた。


 親戚の女性は誰かに似ている気がする。

 懐かしい高台の親戚の家はなかった。




(了)

(2022年5月)


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