第23話 気になる人形
手の中に入るくらいの小さな人形が二つあった。
一つは整った顔のふつうの人形、もう一つは頭部に仕掛けがある。
夢の中ではどちらも可愛いと思っていたが、いま覚えているのは風変わりな仕掛けのあるほうだ。
それは私がTwitterでよくRTいいねするような綺麗な球体関節人形ではない。萌えフィギュアでもない。
子供向けの玩具然とした、プラスチックの人形だ。
風変わりな仕掛けというのは、人形の顔が半透明で、内側に入っている小さな飾りがうっすらと見えるのだ。
小さな人形や、生活道具、木立ち、車など。
ままごとセットやジオラマのパーツが、手のひらサイズの人形の頭部に幾つも入る小ささになっていると思ってほしい。
それは固定されていない。万華鏡のなかのビーズのように(そんなに綺麗ではないが)傾けると重力に従って動く。
半透明の顔はやわらかい素材で出来ている。後頭部は固く、透けない。
頭部の内側には、顔と後頭部を仕切るような板と、先述の小さな飾りが入っている。
仕切り板には、飾りが出入りするための隙間がある。
仕切り板から顔面側や、ちょうど隙間のところにある飾りが透けて見えて、後頭部側のは隠れていることになる。
顔の形じたいはふつうのマスコットと同じように、小さな鼻の形や頬のふくらみが成形されている。そして透けて見えるものとはべつに、顔の表面に目と口が塗料で描いてある。
しかし、さほど可愛い造作ではない。もしかしたら日本的な萌えとは異なる文化から生まれた品かもしれない。
私はこれを、見た目云々とはべつの意味で可愛く思っていた。
人形の頭部の中にあるものは、その子(人形)の関心事。
顔面側にあって外からボンヤリと見えるのは、今とくに気になっていることや伝えたいこと……という設定だ。
そういうコンセプトの商品なのか、私がそう思ったのかよく分からない。
私が見ている夢なのだから、どちらでも同じかもしれない。
人形を傾けるたびに頭の中のパーツが動くのに、右のこめかみ辺りだけは、お父さん風の眼鏡をかけたキャラクターの胸像がいつまでもあるのだった。
(了)
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